バドミントン男子世界ランク1位の桃田賢斗選手がマレーシアで1月13日未明に交通事故に遭った。前日のマレーシアオープンで優勝したばかりの出来事だった。桃田選手は、金メダル最有力候補である。東京オリンピック・パラリンピック開催まであと200日と迫った時期だけに日本中いや世界で大きなニュースとなった。低速で走っていた大型トラックに追突してマレーシア人の運転手が死亡、桃田選手、コーチ、理学療養士、競技関係者の4人が怪我をした。スポーツ選手の海外遠征は、今では当たり前の事のようになっている。世界のいろいろな国々地域を渡り歩く選手には、常に危険が伴う。選手の身を守るためには、選手を支えるまわりの協力が欠かせない。今回果たして空港までの順路、使う車、席順、運転手の技能や事故歴の事前調査、移動の時間帯などをしていたのか疑問である。選手が競技に集中できる環境を作り守るのが選手を支える者の勤めである。危険を回避するためには、何より金がかかる。「安全は相当程度金で買える」とある大富豪が本に書いていた。いくらオリンピック金メダル候補の桃田選手といっても予算には限りがあるであろう。ならばよけいにその移動に関わる危険回避のための方策は、慎重になされるべきである。
日本のそれぞれの競技にはバドミントン協会のように団体ができている。その協会は、ボクシング、レスリングや体操などのように役員や会長が問題を起こす。オリンピック・パラリンピックには、選手の数より同行役員の数の方が多いという珍現象が起こる。この辺の意識改革も進めなければならない。選手を支えることにもっと真剣に取り組んで欲しい。
私は海外で交通事故に4回遭っている。2回はカナダで、1回をネパールで、そしてもう1回をチュニジアで。カナダの一つ目の事故は、夏休みローッキー山脈の中で青少年キャンプのバイト中に起こった。キャンプ場には水道がないので、水は川へ汲みに行く。トラックにドラム缶を7,8本積んで、それを私が荷台で押さえて、トラックは坂を川へと下った。道路はガタガタだった。トラックが揺れた時、ドラム缶が私を挟み込み全身を強打した。私は気を失った。幸い内臓破裂はなく、病院で一夜過ごし、次の日から仕事に復帰した。もう1回はカナダからニューヨークへクリスマス休暇に車で行った帰り、3日かけて、あともう少しで学校に到着するという所で凍結した交差点で衝突。5人乗っていて、私は3人掛けの後部席真ん中にいたので助かったが、車は大破した。ネパールでは3人の日本からの客人をチトワンへサイを見に案内した途中、雇っていた運転手が峠の曲がり角で出会い頭に衝突。車は前部が破損。急遽客人をカトマンズ行きのバスに乗せ、私と運転手は残った。後でこの3人の客人がカトマンズで行方不明になり大使館は大騒ぎになった。数時間後無事3人は見つかった。交通事故より後の行方不明事件のほうが大変だった。
最後のチュニジアの事故は、やはり雇っていた運転手がランドアバウトの交差点でトラックと衝突した。シートベルトをしていなかった巨体の運転手が衝突のはずみで助手席の私に体当たりしてきた。私はあばら骨骨折の重傷を負った。これは私の運転手の管理指導が徹底していなかったのが原因だった。もし折れた骨が肺に刺さっていたら私は今ここにいない。海外での交通事故は、まず言葉が通じないので事故後の対応が難しい。今回桃田選手は最悪の事態は免れた。マレーシアの対応も良かった。運が良かった。桃田選手の回復を祈るとともに、選手を支えるまわりの人々、特に協会のリスク管理への反省を促したい。