高校の同級生N君の呼びかけで私を含めて同級生4人で横浜の原鉄道模型博物館へ行ってきた。度肝を抜かれた。ただただ凄い。存在さえ知らなかった。まずもって博物館の名前さえ正しく読めなかった。私は原(ハラ)を(ゲン)と読み、なんじゃ(ゲンテツドウ)ってと思っていたほどだ。原(ハラ)とは、原信太郎(1919~2014)のこと。原信太郎の制作所蔵した鉄道模型や鉄道に関わる原の収集品が展示されている。原は95歳で亡くなったが、最後まで鉄道模型の製作を続けていた。私たちは71歳。おこがましいが原と比べたらヒヨッコ。
先日学会から帰宅した妻が私に読むようにと学会で配布された冊子を渡した。そこに慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターの『百寿者の身体的・性格的特徴』という表があった。
身体的特徴 (資料) 私の個人的特徴
●栄養状態が低下 ◎隠れ食いなどで常に栄養状態過剰
●糖尿病が少ない ◎40歳で発症 薬物療法・運動療法・食事療法中
●コレステロールが低い ◎高い 薬物療法中
●炎症反応亢進 ◎正常
●貧血傾向 ◎正常
●動脈硬化が少ない ◎全身 特に心臓冠動脈 右脚ふくらはぎ
●血栓ができやすい ◎できやすいが、薬物療法中
性格的特徴
●神経症:不安の強さ、細かいことに気が付く ◎小心で神経質
●外向性:社交的、活動的、派手好き ◎お節介でお人よし
●開放性:創造的、好奇心が旺盛 ◎妻は私を“歩く好奇心”と言う
●調和性:思いやりがある、周りに合わせる、依存心が強い ◎長い物には巻かれろ、の忠実な実践実績
●誠実性:意志が強い、几帳面、頑固 ◎しつこい、頑固。妻曰く“柳のような人”
百寿者の特徴にほとんど当てはまらない。原信太郎が95歳まで現役で偉業を成し遂げた。71歳でもう限界を感じている。凡人の極みである。でも私はそれでもかまわない。凡人がいるから偉人が生まれる。偉人が偉人として崇められるのは、凡人のおかげである。偉業を残せなくても、偉業を敬い称賛できる。高校の時ある教師が言った。「秀才が目立つのは、お前のような劣等生がいるからだ。だれでも何かの役に立っているんだぞ」
冊子の『百寿者になる百年の物語』に102歳の男性がこんな事を書いている。「年を取るまで健康でいることは本当に大変ですよ。でもね、長い人生のうち、できることなら周囲の人を喜ばせたい。そのためにも自分が健康でいないとね。自分自身も人生を楽しんで、ほかの人のことも助けられる。これが人間としての最高の世渡りだと思います」
先日、友人夫妻を食事に招いた。私はいつも“ご馳走”を心掛ける。まず食材を集め、手に入れた食材から自分の創造力を駆使して献立を決める。友人が「今度、ハムとチーズでいいから、気軽にやりましょう」と言った。どこまでも優しい。私は彼らの話を聞くのが大好きだ。とにかく私がお呼びする人たちの話は、とても勉強になる。私は、そんな素晴らしい話をただハムやチーズで聞かせてもらうわけにはいかない。素晴らしい話を聞かせてもらう代償として調理する。少しでも喜んで頂いて、その人の持てる知識経験心情を私に語ってもらいたいのである。私のお礼は料理することでしかできない。
原信太郎のような偉業は無理。でも凡人の私だからこそ、私より優れている人を、その偉業を素直に称賛できる。百寿者になれる可能性は、限りなく低い。でも私は身の程を知って、周りの人を喜ばせることに一所懸命になる。凡人として底辺に生きるのもよき事かな。