団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

ネット詐欺と音声合成

2019年06月04日 | Weblog

  6月1日土曜日の夕方、ネットでニュースを見ようとパソコンの電源を入れた。ヤフーの見出しから選んで読みたいニュースをクリックした。いつもパソコンから音声が出ることはほとんどない。私のパソコンから女性の声が流れた。動揺してよく聞き取れない。音声は、と途切れることなく、同じことを繰り返す。電車や駅の放送のように繰り返す。だんだん聞き取れた。「あなたのパソコンはウイルスに感染しました。こちらはマイクロソフト社のセキュリティです。すぐにフリーダイヤルで次の番号に電話してください。操作の仕方をお教えします。なお30秒以内であなたのパソコンは使えなくなります……データは全て消滅します」と繰り返す。私の心臓は、小さい。困った。パソコンに記憶させてきた私の資料や文章が全て消える。それは大変なことだ。30秒ってもう時間がない。電話で話すのは、大の苦手。妻を呼ぶ。妻はダイニングテーブルで図書館から借りてきた本を読んでいた。妻がやってきて、私の背中越しにパソコンを覗き込み、聞き耳をたてる。いつもだと「こういう時はとにかく電源を落とすの」と言うのだが、意外にも「パソコン110番、すぐに呼んだら。でも土曜日は来ないの?」「パソコン119だよ。電話してみる」 パソコンは途切れなく同じことを繰り返していた。パソコン119に電話。10分以内に来た。運よく、彼は私の家のすぐ近くに仕事で来ていた。「詐欺です。新手の詐欺」と言いながら、パソコンを操作してウイルスに犯されているかどうかなどを入念に調べてくれた。私のパソコンは、被害を受けていなかった。次に同じことが起ったら、しなければならないことを教えてもらった。新手か!数か月前、画面に今回の音声と同じような文言を文章で表示してきた。今回は更に進化させて音声を急に割り込ませて、私をビビらせた。

 パソコン119が帰った後、怒りがムラムラと沸き上がった。あの音声を録音した女性は、自分がこんな詐欺に関わっていることを恥じないのか。よくもまあ、しゃあしゃあと話せるものだ。それにしてもこの手の詐欺は相手が見えないので恐ろしい。ネット社会は、便利だが悪用されると私のような素人には歯が立たない。ブラックボックスでしかない。私は2台パソコンを使っている。1台はブログや本の執筆用。もう一台は、以前猛暑でパソコンがダウンして中の記憶がすべて消えたのと、ブログ掲載ができなくなったことを踏まえて、もしもに備えている。実際は1台の方を多用していて、そのパソコンでヤフーニュースを見たり、グーグルで検索したりもする。これからはデスクトップを書き物専用にして、ヤフーやメールは、ノート型のパソコンでやることにした。

 日曜日の朝、毎週楽しみに観ている『がっちりマンデー』がエーアイという会社を紹介した。この会社は、音声合成できるソフトを開発しているという。そのソフトは駅や電車、店内放送などにひろく使われているという。私はピーンと来た。これだ。昨日のあのネット詐欺の音声は、合成されたものに違いない。私が聞いても文言に違和感があった。合成された女性の声に怒っていた自分が情けなかった。それにしても詐欺を仕掛けている連中のずる賢さには恐れ入る。それを人間社会に役立てることに使えばいいものをと残念に思う。

 マイクロソフト社に問い合わせして見ようと思った。しかしネット関係の会社は、みな直接の電話では相談できない。ネットを通しての連絡しかできない。直接、顔を合わせなくてもせめて声でだけでも話を聞いてもらいたいとコキイチは考える。何か軽くあしらわれているようで不愉快になる。ネットでこの手の詐欺を検索してみた。どうも、いかがわしいページを開くとこの手の詐欺の音声が入るらしい。私はただヤフーのニュースをクリックしただけである。ますますネット社会が恐くなった。

 農林水産省の元事務次官が44歳の長男を包丁で刺して殺した。殺された長男は、パソコンも携帯電話も持っていなかった川崎の岩崎隆一と違って引きこもり傾向であっても、ネットでゲームやチャットにのめり込んでいたようだ。書き込まれていた内容に闇を感じた。ネットに飲み込まれてしまった人間。どんな争いもじっとお互いの目を覗き込んで和解にいたるゴリラの生き方に戻れるものなら戻したい。


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