5月23日歯科医院で上の前歯2本を抜歯した。抜かれた2本を見せられた。それらは氷山が水上にほんの一部姿を出し、ほとんどの部分が水中にあるように上の部分と下の部分に分かれていた。感傷的になった。永久歯である。親知らず以外の永久歯は、人にもよるがだいたい12歳ぐらいまでに乳歯から生え変わり、それ以後生涯使われる。私の抜かれた歯も単純計算で58年間私の体の一部だった。反面、久坂部羊の小説『廃用身』の中に、病気に侵された部分を切断して治療してしまうことが書かれていた。ずっと歯痛で苦しんでいた妻が、4月に抜歯してその後ケロっとしていたことも頭にあった。80-20が挫折したわけではない。可能性は残っている。上顎の歯の病気は、脳に近いため化膿した場合、膿が脳に達する危険性もあるそうな。それは死につながるという。抜くしかない。私は優柔不断。歯科医とは体調、服用している薬との兼ね合いをみながら抜歯すると話し合っていた。23日歯科医院に出かける前、私は「25日から大阪へ行くので帰ってきてから抜歯してください」と言うと決めていた。診療台に座った。「体調も良さそうですね。今日抜いてしまいましょう。仮の入れ歯もできています」 私は意に反して、一言、「お願いします」。麻酔をしたが、あっと言う間に終わった。前歯が2本抜けた手鏡の中の私は、志村けんのバカ殿のような間抜けた風貌になっていた。
家を出る時、もしかしたらと思い、バッグにマスクを入れておいた。そのマスクをして電車に乗って帰宅した。ため息をいつもより多めに吐きながらソファに座って庭を眺めていた。季節外れなのにウグイスが上手に鳴いていた。竹林には今年生えたタケノコがもうすっかり大きくなって周りの竹に同化していた。ふとベランダに目をやると、何やら小さな塊が動いていた。スズメだった。それも小さな2羽が身を寄せ合っていた。
スズメを見ていて思い出した。鳥に歯がないのは、ふ化の期間を短縮するためだとドイツのボン大学のヤン氏とサンダー氏が発表したニュースだ。論文の中に「胚の成長の高速化とそれによるふ化までの期間の短縮を選択した副次的影響として(鳥の)歯の喪失という(進化的)選択が起きたと考えられる」とある。私は勇気づけられた。私が今日2本の歯を失ったのは、進化の一つと考えよう。その代わりに口が鳥のクチバシのようになるのはごめんこうむりたい。
歯が2本減った私は、歯のない鳥たちの姿、鳴き声に元気づけられている。
① スズメ 2羽寄り添うところを撮ろうと急いだが、カメラを用意していて間に合わなかった残念な写真:
② ミソサザイ 私が一番好きな鳴き声、最近裏山に到着。やっと朝聴ける。姿を見たことがない。
③ ウグイス 季節外れだが見事な鳴きっぷりに魅了されている
23日午後8時から開かれた日大のアメフト部の内田監督と井上コーチの会見を聞いた。内田監督の「正直」「本当」「申し訳ないんですが」の不愉快な繰り返しが、ただうるさいだけのしゃべり下手な九官鳥のようだった。22日の日大元アメフト部選手で危険なタックルを仕掛けた宮川さんの謝罪会見での態度話し方は、闘鶏で敗れて持ち主に捨てられた元チャンピオン鶏のような風格があった。誰が何をどう弁解しようが、スポーツはルールあってのもの、ルール遵守なくしてスポーツマンシップは語れない。