団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

甲子園高校野球ネット裏のラガーシャツ

2015年09月01日 | Weblog

 甲子園での高校野球は東海大相模の優勝で終わった。決勝戦の次の日から私は脱力感というか幽体離脱のようなもぬけの殻状況に陥った。25日になっても変わりがなかった。相模原の歯医者に治療のため出かけた。小田急相模原駅に降り立って歩いて歯科医院までの道のりは『東海大相模高校 全国制覇 おめでとう』のポスターとのぼりが街を埋め尽くしていた。待合室で週刊誌を読んでいた。ずっと高校野球を観戦していて気になっていたことが一気に解決される記事を見つけた。

 甲子園球場のバックネット裏の一等席の最前列に並ぶ男性たちが私の疑問となった。来る日も来る日も同じ顔ぶれ。着ている服が変わっているが同じ顔。とうとうある日私は画面に指をはわせて男性たちを特定して一緒にテレビを観ていた妻に言った。「この人達毎日ここで観ているけれど凄いね」「何が凄いの」「だってバックネット裏のこんないい席、凄く高いよ」「お金持ちはいくらでもいるでしょう」「でも毎日こんないい席を確保して観るのは並大抵のことじゃないよ」「あなたは野球を観ているだけじゃなくて、そんなことも観てるの」 彼らは朝日新聞社のお偉方か特別なコネがある人たちだろうと私のたわいない疑問に終止符を打った。

 疑問が解決されることは気持ちが良い。週刊誌もたまには読んでみるものだ。甲子園の高校野球の観戦料は外野席無料、ネット裏の『中央特別自由席』が当日券2千円、開催中全試合通し券が2万6千円だそうだ。通し券を購入すれば、毎日でもネット裏最前列に先着順にだれでも座れることができる。熱心なファンは前日の最終試合終了直後からネット裏の席を確保しようと並ぶという。『8号門クラブ』というメンバー数100人ほどの集まりがあり,前日の試合終了後ただちに8号門入り口前に大勢で並び席を確保している。

 ネット裏に毎試合同じ場所に同じ顔触れが揃うと嫌でも目に着く。特にラガーシャツに蛍光色の帽子をかぶった男性が目立っていた。高校野球好きが高じて熱心に観戦するのは個人の自由である。ましてや順番取りに前夜から並ぶという苦行のような努力までしている。高校野球全日程を見届けるには金もかかるし時間もかかる。それに何より夏の炎天下であれば、健康面での制限もある。相撲、オリンピックなどにも必ず目立つ服装をして応援する人々がいる。古今東西の人間の他人より目立ちたいという現象のひとつである。席の確保の仕方に批判があるらしい。私は自分でやろうとは思わないが法や常識を守る限り、個人の自由を尊重する。

 私は今回、自分の疑問が解けたことに喜んでいる。最近の報道は5W1H(いつwhenどこでwhereだれがwho何をwhyなぜhowどうやって)を完結させてくれない。それ以前に聖域があってまったく報道されないこともある。報道されても尻切れ記事が多く、その後の報道がパッタと途絶えることも多い。聖域に踏み込みこんだり、記事の顛末を丁寧に追い報道してくれる報道媒体ができればいいのだが。

 28日から日本でU‐18ベースボールワールドカップ2015が13か国の代表チームを集めて大阪で始まった。侍ジャパンチームは甲子園で活躍した高校生選手を多くが選出されている。まるでドリームチームだ。生活にポッカリ穴が空いて気が抜けてしまっていた私もこの試合が始まると元気を取り戻して観戦している。野球と言ってもプロ野球にはまったく関心がない。高校野球ほど熱が入らないが、敵味方で闘った選手が日本の国旗を背負って一丸となってプレイする姿に魅かれる。

 ネット裏にラガーシャツを探してみたがあの面々を見ることはない。彼らは甲子園だけのグループなのかもしれない。ある報道によるとアメリカの大リーグから依頼された30人くらいのスカウトがネット裏に来ているという。私はスカウトの誰ひとり判別できない。ラガーシャツでも着てくれていたらとしょうもないことを考える。隠密行動であっても多くの選手がスカウトの高評価を受け、今までの努力が報いられ、世界へ羽ばたけるチャンスを得られることを願う。


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