団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

止めてくださるな、行かねばならぬ

2013年12月18日 | Weblog

  横浜に住む姉から防寒チョッキをもらった。義兄がアメリカへ行った友人からおみやげにもらったものだが、義兄には大きすぎて着られないと送ってくれた。裏表どちらでも着られる。片方はツルツルで、もう一方はモヘヤでホカホカである。袖がないので動きやすい。部屋着として愛用している。

 トイレに入って用を終え、晴れ晴れとした気分で出ようとした。危うく倒れそうになった。それでなくても最近足元がおぼつかない。突然のめまいかと緊張した。前進しようとしても進めない。初めての症状である。また違う病気が私を襲ったのかと暗い気持ちになった。寝室に行ってベッドに横になろうと足を前に出そうとする。2歩進んだが、それ以上は何かに引っぱられるように戻される。その姿は時代劇の舞台で恋する男女が「行かないで」「止めてくださるな、行かねばならぬ」と問答しているかのようでもあった。

 ようやく気が付いた。姉が送ってくれた防寒チョッキの一部が私の前進を止めているのである。掲載写真の状態であった。チョッキの裾を絞って風の侵入を防ぐためなのか両脇に橙色の平ヒモがわっかになっている。このわっかが見事にドアの取っ手に輪投げゲームの的に命中したかのようにがっちり捕えられていた。わっかの高さ、ドアの取っ手の高さ、私の座高、私の脚の短さ、すべてがピッタシカンカンだったのである。すわ、体の変調かと心配した。

  最近ワイン会の準備のため真っ暗闇の中、ディロンギのオーブンを運んでいて座卓に蹴躓いて転倒した。青アザ3箇所と擦り傷2つを作ったばかりであった。大阪の同じ歳の友人も階段で転倒してケガをしたと電話で聞いた。朝、靴下を履くとき、ケンケンの歩数が多くなるばかり。筋肉の衰えだそうだ。鍛えればいいことはわかっている。練習が嫌い。特に運動の単調な繰り返し練習は苦手である。老人介護用具備品の専門店には靴下を履く補助器具が売っていると知人が教えてくれた。今度店に行ってみよう。

  「不幸は二人連れ」という。「一度あることは二度ある」ともいう。原因究明を果たし意気揚々と書斎に戻ろうとした。何ということか、再度書斎のドアにチョッキのわっかがひっかかった。今度は原因が最初からわかっていたので、動揺はなかった。ヒモはハサミで切り取った。不注意な自分に呆れた。「止めてくださるな、行かねばならぬ」と言ってみても、さて私はどこへ何しに行こうとしているのやら。

 


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