団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

「日本のテレビっておかしいんじゃない」

2013年07月03日 | Weblog

  お昼に蕎麦を食べようと行きつけの店に入った。混んでいた。でもこの店の若主人は毎日一生懸命蕎麦を自分の手でこね、のしてつくっている。信頼できるし旨い。待つことはかまわない。店員が「相席でもよろしいですか」と私に尋ねた。「はい」と答えた。6人席に座っていた4人連れの女性客に「相席でお願いします」と言い、私の座るべき所にお茶と簡易手拭を置いた。4人にチラっと点検を受けたがベンチのすみっこに座った。どこの食堂でもひとり客は歓迎されない。身を縮めて目も耳も体も動かさないようにしていた。いつもの“かけ蕎麦”を注文した。

 「明日は大変だ。ダラスで乗り換えて家に着くのは・・・」 聴いてはいけないと思っていたが、“ダラス”に脳が反応してしまった。(ダラスってアメリカのテキサス州のあのダラス)「こんなおいしい蕎麦もしばらく食べられないわ」50歳ぐらいの女性が話し続ける。彼女は仕事か家族の関係でアメリカに住んでいるらしい。「でもアメリカに戻るのが嬉しい気もするの。とにかく日本のテレビっておかしいんじゃない。テレビを観るたびに腹が立ってしかたがない」 先日ラーメン屋に並んでいてジャガランタ事件を思い出した。でも私は彼女の“日本のテレビっておかしいんじゃない”に賛成である。黙ってご意見を拝聴させてもらうことにした。

 彼女の話を要約すると次のようになる。1.コマーシャルがおかしい:リーブ21とパチンコと生理ナプキンと紙オムツと子供のお遊戯みたいな踊りばかり。2.ニュース番組に出てくる若いだけでちゃんと喋ることができない女子アナウンサーとお天気お姉さん。3.どこのテレビを観ても同じような番組で出てくる人が同じでひな壇みたいなところに大勢並んでいる保育園や学校の学芸会みたいだ。出演者も変な人ばかり。4.コマーシャルの回数が多い。5.観ている人が馬鹿と決め付けているのか、コマーシャルで本番組を切って、コマーシャルが終わると観た部分をずいぶん戻って繰り返す。

 まだまだ彼女の独演会は続いた。値段の張る上天ぷら蕎麦を口にしながら、喋ることを中断することもない。喋りながら食べるのが上手い。私にはできないことだ。私は彼女の意見に大方賛成できる。普段、私と妻がテレビにたいして不満に思っていることと似ている。私たちはテレビでニュースと動物生態などのドキュメントや旅番組などしか観ない。ほとんどレンタルDVDで映画かドラマを観る。

  彼女のアメリカのテレビ番組の解説が終るとそれまで黙って聴いていた仲間の女性のひとりが「アメリカのテレビってつまらなそう。それに英語でしょう。私は毎日、朝から晩までテレビを楽しんでいるわ。韓国ドラマも大好き。テレビは私の体の一部みたい。たくさん好きな番組あるし、アメリカにそういう番組がないのならアメリカなんかに住みたくない」 他の2人も首を縦に振った。それに反応した明日アメリカに帰るという女性の顔に浮かんだ表情が印象的だった。おそらく同じテーブルの端っこで、いつもならあっという間に食べ終わる蕎麦を時間稼ぎに数本づつすすっていた私の顔もアメリカに帰る女性と変わらぬ表情だったと思う。


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