団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

暑さのしのぎ方

2011年07月19日 | Weblog

 暑さが続く。今年は6月から暑い。7月生まれで、ずっと暑さに強いと自負していたが、この数年の暑さに参っている。アフリカのセネガルとチュニジアで6年近く暮らした。暑い所だった。気温が40度を超える日もあった。でも日本の暑さは、別である。湿気が高いからだろう。日本ではこの湿気対策として、家の中の風通しを重視する。湿気が低いセネガルもチュニジアも日陰に入ると、暑さをしのぐことは出来た。扇風機をあまり使わないのは、湿気のない空気は攪拌しないほうが涼しく感じるからだろう。熱中症対策として日本では①水分のこまめな補給②直射日光に当たらない③エアコンなどで体温を下げる、と言われるが、②以外、暑さしのぎの環境が入手困難な国は幾らでもある。そこでは人々は、ただじっと日陰で気温が下がる夜が来るのを待つのである。昼寝も対策のひとつである。日本でアフリカの暑さを話したら、「プールで泳いでいればいいのに」と言う人がいた。残念ながら私の住んだセネガルもチュニジアも水が不足している国である。海外から来る観光客のためのリゾートホテルならプールがあったが、地元の人のためのプールは、なかった。また打ち水のような、水を撒いて、涼感を演出する方法も見たことがない。水をふんだん使えるのは、よほどの金持ちである。そう考えると、風鈴、打ち水、浴衣、冷やしスイカ、そうめん、麦茶、かき氷など日本の暑い夏のしのぎかたは、豊か、かつ風流である。

 住めば都という。どこの国でも長い人々の暮らしの知恵がある。セネガル、チュニジアにも工夫がある。まず家の南側にできるだけ窓や開口部を極力開けない。南向きであることが良い住宅の条件である日本とは違う。とにかく強烈な太陽の光を生活に入り込まないように工夫している。金持ちは、家の床に大理石を使う。大理石が好まれるのは、肌への感触だろう。外がどんなに暑くても、南に開口部がなければ、家の中に直接陽の光が入ってこない。湿度が低いので、家の中は過しやすい。それに床が大理石ならば、素足で歩き回ればひんやりとして気持ちがよい。私は、借家の大理石に日本から持参したゴザを敷いて、その上で昼寝するのを日課とした。気持よく休息できた。しかし顔にゴザの跡やよだれの痕がしっかり残り、妻に三食昼寝つきのぶざまさを見破られた。



 日本の暑い夏をしのぐのは、水の効果的利用だ。水不足の国々の人々には、申し訳ない話だ。その水の豊かさに感謝して、水風呂、シャワー、打ち水、水草やハスを植えた水鉢を大いに活用しよう。私は、汗をかくとまずぬるい湯を浴び、そして石鹸で体を洗った後、思い切り冷たい水をシャワーで浴びる。すかっとする。この繰り返しである。寝る前、熱帯夜を汗だくですごし起きた後の朝、出かけた後、水シャワーで爽快である。女子ワールドサッカーで大活躍した澤穂希選手が優勝インタビューの中で「早く日本に帰って、おいしい鮨を食べて、温泉に入りたい」と言った。その気持がよくわかる。温泉に入った後の水シャワーもいいものだ。

 この数年日本の気候帯が、温帯から亜熱帯に変わってきたという。確かに太陽の紫外線は確実に熱帯並みに強くなっている。熱中症で多くの日本人が命をおとすようになってきた。東日本大震災と東京電力福島原子力発電所事故の影響で、電力不足が起き、エアコンなどの節電対策で熱中症がさらに増えると予想されている。私たち日本人は、熱帯に住む人々から暑さのしのぎ方を学ぶことができる。「それは、暑い日は動き回らないで、直射日光を避けて、涼しい場所で家族や友人たちと甘いミント茶でも飲んで楽しく過すことだ」と熱帯の人々は言うに違いない。日本人は果たして日本が亜熱帯に気候帯が変わっても、今までどおりに働き中毒でいられるだろうか。無駄な残業、会議を減らすだけでも時間は浮いてくる。気候変化も計算にいれて、生活全般の改革を長期的に練り直す時期にきている。日本の社会構造も文化も転換期に差し掛かった。私はすでに熱帯の人々の生活方法を取り入れ、じっと暑さが過ぎるのを家の中で待っている。

 

 


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