知り合いの家を訪ねると、その人は土間で金槌片手に思案中。その視線の先には机がひとつ。尋ねると「どうやって壊すか考えとった」との事。
「不要なれば」とすぐに貰い受ける。もう少し遅ければ無くなっていた。危なかった。壊そうとしていた当の本人の父上(大工さん)の作。子供の頃に使っていたとか。
埃まみれで、木の材質が見えない。持ち帰って拭いてみると、天板はマツ。側板や正面はケヤキ。引き出しの中はスギ、ヒノキという按配。蟻組こそしていないけれど、釘が見えないように作ってある。狂いも少なく傷みもほとんど無い。天板に目立つ輪染みや墨汚れなどがあり、迷ったけれどサンドペーパーで磨いた。いずれまた、落ち着いてくるだろう。
死に節があったのか埋木があり、扇面と扇の意匠にしてある。昭和レトロな取手もいい感じ。工芸品というよりも我が子への実用品で、おそらく余った材料で作ったのだろう。見栄えの悪い木も使いつつ、うまく隠している。
小生の祖父も大工で、やはりその娘(小生の母)に勉強机を作っていた。それを一時期、借り受けて使っていたが、いつの間にかベランダに出され、植木鉢を乗せられて、雨ざらしの挙句に傷んでしまった。今、思えば惜しい事。無垢の地マツだったように記憶している。難点はメチャクチャ重いという事か。でもしっかりしていたな。
天板を磨きながら、爺様の顔つきを思い出していた。職人気質で怖かったなぁ。
でも、机を作った時はどんな顔で作っていたのだろうか。
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