擬態ー蟷螂ー
白いはなが
風の中で
ゆれず
みじろぎもせず
じっと
じっと
待っている
目を凝らし
白は
もっと鮮やかに
そっとほのかに桃色に染めて
じっと待っている
期待の
落としやすい
まじめで素直な
少年を
じわりと
忍び寄り
その背中に腕をまわし
隠した爪を
つきたて
逃げられないように
追い詰めて
深く
牙を
その腹に
あて
ぼりぼりと
喰いはじめ
そして
柔らかな
肺を
喰いちぎり
べろりと
舌なめずり
わたしの
餌
誰にも渡さないわ
そうやって
赤い唇が
こっちを向いたとき
その雌蟷螂は
薄くなった白髪交じりの
老婆になっていた