ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

いのち

2018-07-29 20:07:47 | 日記

                        いのち

             

                 生産するって
                 産み出すこと?
                 形あるものを
                 差し出すってこと?




                   病院でね
                   個室に10歳の男の子が
                   入院していた
                   その子はね
                   脳腫瘍でね
                   だんだん座ることも
                   ご飯を食べることもできなくなっていって




                   人工呼吸器で
                   生きていた
                   生きていたというのは
                   この子の手ひらから汗が出て
                   垢になって
                   手のひらを洗うと
                   ぽろぽろと
                   垢がとれるんだ



                  
                   その子のベッドの周りには
                   おかあさんとおとうさんがいて指を握ったり
                   妹や弟たちは駆け回っていた



                   クリスマスや誕生日にも
                   ケーキがあって




                   ある日
                   その子の部屋のドアを
                   あけたら
                   気配がないんだ
                   生きている気配
                   翌日
                   その子のベッドは空で
                   誰もいなかった



                その子は何も形あるものは生み出さなかったよ
                その子のお尻に傷ができないように
                時間ごとに
                横向きにしていた



                夜勤のお仕事といえばそうだけど
                この子がいるということが
                家族にとって大事だったし
                少なくとも
                看護師だった
                わたしには
                いろいろなことを教えてくれた
                先生だったんだ




                命あるものは
                それだけで
                価値ある奇跡だって思うんだ
                   

     

                


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