ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

呼吸ひとつ

2013-04-10 20:10:44 | 日記
                                呼吸ひとつ

                           あした
                           きょうが闇に休んだ後の
                           夜明けの次にくる

                           苦しい息の中で
                           闇の中で黒い影をみたのに
                           「こわくなかった
                            あれはきっと親かもしれないし
                            自分に至る前の
                            先祖かもしれないから」と

                           最期の息の
                           父さんを看取ったとき
                           母さんは
                            「後悔はしないよ、いいね」と
                            その腕に頭を乗せていいきかせていたっけ
                           4月の朝の病室
                        
                           あれから
                           母さんはみんなに
                           お礼とお別れの
                           あいさつを
                           ひとつ
                           頷いて

                           大きな息を一つ

                           すすり泣きがとまらず

                           その部屋は
                           そよ風が鳥の鳴き声を運んできて
                           いつもの
                           朝の光がさしていた

                           そんなふうにして
                           あしたは
                           闇の中からやってきて
                           闇にかえり

                           また闇からうまれでてくる

                           ひとつ
                           空気を吸うと
   
                           泣き声
                           あかごの
                           すべてのいきの始まり

                           泣いているのに
                           笑顔の大人が取り囲んで
                           喜ぶ不思議

                           ヒトのいきしに