映画的・絵画的・音楽的

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アナと雪の女王

2014年03月28日 | 洋画(14年)
 『アナと雪の女王』を吉祥寺プラザで見てきました。

(1)本作(注1)が今度のアカデミー賞の長編アニメ映画賞(注2)を獲得したというので映画館に行ってみたのですが、上映されているのが吹替版ということもあり、館内は小さな子供連れが目立ちました。でも、歌が多く挿入され、また雪だるま(オラフ)とか、トナカイ(スヴェン)、氷の怪物(マシュマロウ)などが登場することもあるのでしょう(注3)、子供たちも概しておとなしく画面に見入っていました。

 本作の冒頭では、空にオーロラがかかる中、男たちが川で氷を切り出してソリに積み込んで運ぶ様子が描かれます(注4)。
 そして場面が変わり、アレンデール王国の国王一家が暮らす城の中。
 長女のエルサと次女のアナの姉妹がふざけあって遊んでいます。
 エルサは、触れるものを凍らせたり雪を降らせたりする魔法の力を持っているので、床を凍らせたり、雪だるまや滑り台を作ったりしています。
 でも、ある時、その魔法の力を誤ってアナの頭に向けてしまい、アナは空中から落ちて意識を失ってしまいます。
 さあ、この事態にエルサはどう対処するでしょうか、アナは助かるのでしょうか、そして王国は、………?

 本作は、他愛のないラブストーリー物ながら(注5)、中で歌われる歌がどれも素晴らしく、また冒頭の雪の結晶が空を舞うシーンとか、氷の城や様々の雪景色など、どの映像を取ってもファンタジックで見応えがあります。

(2)それにしても、エルサが歌う主題歌「Let It Go」はいつまでも耳に残ります。



 クマネズミが見たのは吹替版で、そこでは松たか子が歌いますが(注6)、素人判断ながら、決して字幕版のイディナ・メンゼルに劣るものではないように感じたところです。

 ただ、松たか子が歌う日本語歌詞は、英語歌詞(取り敢えずここでは、PV動画に掲載の訳詞を記載します)と比べると、かなりソフトになっているのではと思いました。
 例えば、英語歌詞の「風がうなる 心の嵐のように/私の苦しみを 天だけが知っている」が、日本語歌詞では「風が心にささやくの/このままじゃだめなんだと」となっています。
 また、英語歌詞ではエルサが雪山にやってきた理由に触れていますが(注7)、日本語歌詞では略されています。
 総じて言えば、英語歌詞の方がよりドラマチックな感じがします(注8)。

 ここには、英語歌詞を日本語歌詞に移すことの難しさが現れているのでしょう(注9)。
 本作の全曲の訳詞を担当した高橋知伽江氏は、この記事によれば、「とりわけ難しいのは、英語をそのまま日本語に訳してしまうと文字数が多くなり、歌に入りきらない点」とし、さらには「映画の吹き替えでは役者(キャラクター)の口の動きに訳詞を合わせるという作業も加わる」ので難しさが増すようです。

 もっといえば、日本的なものの捉え方と西欧的なそれとの違いといったようなことにまで話を発展させることができるかもしれません(注10)。でも、風呂敷をあまり広げすぎない方が身のためでしょう!

(3)渡まち子氏は、「主題歌賞、長編アニメーション賞のオスカー2冠も納得のドラマチックな秀作ファンタジーだ」として75点をつけています。
 渡辺祥子氏は、「それが普通、という女性監督らしい率直な心情が出る話の展開は、白馬の王子の夢の代わりに誠実な若者と全8曲の歌が補い、ミュージカル形式の魅力が十分に発揮される」と述べて★4つ(「見逃せない」)をつけています。
 読売新聞編集委員の福永聖二氏は、「メンゼルらブロードウェイの実力者を集めた、ディズニーのミュージカル・アニメの金字塔だ」と述べています。



(注1)原題は『Frozen』。
 なお、同時上映されるアニメ『ミッキーのミニー救出大作戦』は、わずか6分間の短編ながら、製作者の才気がビンビン伝わってきて大層楽しめました。

(注2)合わせてアカデミー賞の主題歌賞も獲得しています。

(注3)雪だるまの「オラフ」が登場するところから、本作の原案作品としてアンデルセンの「雪だるま」をも挙げる向きがあるようです。



 なお、クリストフが普段から仲良しにしているのが「トロール」だということで、クマネズミは『トロールハンター』を思い出してしまいましたが、同作のトロールと本作のそれとは似ても似つきません!

(注4)後で本作において重要な働きをするクリストフがこの男たちの一員というところから、この場面に意味が与えられます。

(注5)劇場用パンフレットに掲載の「Production Notes」には、「本作の原案は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが1845年に発表した「雪の女王」」と述べられています。
 ただ、Wikipediaのあらすじや青空文庫の翻訳を読んでも、あまりピンときません。
 そんなこともあり、ネットでは、本作は『聖闘士星矢 アスガルド編』のパクリではないかとの意見が言われているようです。
 とはいえ、クマネズミは『聖闘士星矢』を見たことがないので深入りできませんが、この「1+1=2」さんの見解(「上っ面のストーリー、設定に共通点はありますが、出来上がった作品は全くの別物」)が妥当なところではないかと思っています。

(注6)エンドソングとしてはMay J.が歌っています。

(注7)英語歌詞では「秘密を 悟られないで/いつも 素直な娘で/感情を抑えて 隠さなければ/でも 知られてしまった(Well, now they know)」となっているところが、日本語歌詞では「戸惑い傷つき/誰にも打ち明けずに/それももう やめよう」とされています。すなわち、英語歌詞では、「これまで皆から隠し通してきた魔法を使うという秘密を、最早皆に知られてしまった」となっていますが、日本語歌詞では単に「秘密を隠すのはやめよう」とされています。

(注8)さらには、これから「氷の城」で暮らしていこうとするエルサについて、英語歌詞では「隔絶された王国 私はその女王」(A kingdom of isolation And it looks like I’m the Queen)とか「自分の道を行く ここは私の王国 嵐よ吹き荒れるがいい」(Here I stand And here I’ll stay Let the storm rage on)と歌われますが、日本語歌詞では、それぞれ「真っ白な世界に一人の私」、「ありのままで飛び出してみるわ」とされています。

(注9)クマネズミは、翻訳の適否を問題にするつもりはありません。

(注10)例えば、英語歌詞では「善悪やルールに縛られずに 私は自由よ」(No right, no wrong,/no rules for me/I’m free)とされているところが、日本語歌詞では「そうよ変わるのよ私」とされていますが、こんなところに西欧と日本の物事の捉え方の違いをみることができるのかもしれません。



★★★★☆☆



象のロケット:アナと雪の女王


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (クマネズミ)
2014-03-30 08:57:55
「映画好きパパ」さん、わざわざご連絡をありがとうございます。いただきましたTBは一つだけ残して、後は削除しておきますので、ご安心下さい。
トラックバック失敗 (映画好きパパ)
2014-03-30 06:54:54
こんにちは。トラックバックありがとうございます。
打ち返したところ、通信状態がよくなく、リターンを
繰り返したところ、複数回トラックバックされてしまいました。
まだ、ブログの使い方になれず、申し訳ありません。

Unknown (クマネズミ)
2014-03-29 21:06:58
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるとおり、外国語歌詞の翻訳は、「意味の上でベターにはなってもベストにする事が必ずできるとは言えない」ために、ほんとうに難しい作業だと思います。
Unknown (ふじき78)
2014-03-28 22:04:43
> ただ、松たか子が歌う日本語歌詞は、英語歌詞と比べると、かなりソフトになっているのではと思いました。

難しいですね。あまり恣意的に「こういう風にしてやろう」という気持ちはなくても、翻訳者の色も付いてしまうでしょうし。歌詞の場合は何より字幕以上に日本語の文字数と合わせなければならないという制約があるから意味の上でベターにはなってもベストにする事が必ずできるとは言えないのかもしれません。

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