これまでの2つの作品を楽しく見たこともあって、酷く遅くなってしまいましたが『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』を、吉祥の映画館で見てきました。
(1)こうした鳴り物入りの映画は、宣伝ばかりすごくて中身がなく、結局のところ面白くないというのが通り相場で、正直言って、私も見る前はそう思っていました。
ですが、随分と楽しめたのには驚きました。
まずは、湾岸署の引越しというまたとない出来事に乗じて、テロリストが所内に仕掛けを施すという発想が面白いと思いました。
一般に、企業が新しいビルに引っ越す場合には、一斉に行動するのではなく、移動する部署を分けて取りかかるのが普通でしょう。また、社員は事前に書類などを整理しておいて、引越そのものは、社員のいない休日に引越業者の手で行われることでしょう。
ただ、警察署の場合は、休日といっても署員がカラになることはありませんし、普段でも人の出入りが相当激しいでしょうから、事前に準備するといっても、限られたことしかできないものと思われます。
従って、この映画のような光景もそれほど不自然でないのではと思われます。
そして、最新のセキュリティシステムで防護されているはずの新しい湾岸署が、逆にその装置によって、外から完全に遮断されてしまう、という展開も実にユニークだと思いました。
さらに、テロリストの要求が、織田裕二扮する青島刑事が過去に逮捕した犯人を解放せよ、というのも面白いと思います。
TVドラマシリーズについては、実際にはこれまでそんなにいい視聴者ではなかったので、顔写真が画面に出てきても、それぞれがどんな罪を犯して逮捕されたのかピンときませんでしたが、それでもそれぞれを演じる俳優たちはよく知られているので、随分ととっつき良くなります。
なかでは、岡村隆史や伊集院光の印象が良かったように思います(いずれも外には出られませんでしたが)。
ここで問題となるのが小泉今日子の演じる日向真奈美。
この女性は、映画版『踊る大捜査線』の第1回目に登場します(念のため、DVDを借りてきて見てみました)。
彼女は、隣接署の管轄区域との境界に流れる川で発見された死体を巡る捜査で浮かび上がった容疑者なのです。ですが、捜査員が彼女のそばまで近づきながらも、取り逃がしてしまったところ、今度は自分で湾岸署に現れ、自分を死刑にしろと騒ぎたてます(ナント彼女は、現在の司法制度について、何の知識も持っていないのです)。
実際に彼女の捜査に当たったのは、ユースケサンタマリアと水野美紀のペアながら、彼女を取り押さえたのが青島刑事ということで、今回テロリストからの解放要求リストに挙がったのでしょう。
それはさておき、前回の映画では、彼女がこれまでの凶悪事件を詳細に調べ上げているところから、警視庁副総監誘拐事件の犯人の目星をつけるべく、青島刑事が彼女にお伺いを立てたところ、犯人は本部のプロファイリングが示しているものではなく、単なる子供だと言い当てます。
そういうこともあって、今回の映画でも、彼女の説得に青島刑事が当てられることになったのでしょう。
ただ、彼女は、初めから一貫して死にたいと言っていて、今回も旧湾岸署の中に仕掛けられた装置の爆発で死のうとします。
それをどうやって説得したのでしょうか、大爆発の粉塵の中から、彼女を両手に抱えて青島刑事が無事に現れてくるのです!その点は今一納得できませんでした。
なお、こうした映画に対して、たとえば、いくら引越し最中だからといって、「拳銃が三丁も盗まれるなんてあり得ない」などと批判する輩がいるようですが、そんなことは「あり得ない」などと言ってしまったら、この映画が成立しないのは明らかで、そう言いたい人は元からこの映画など見なければいいのでしょう(なにしろ、「スリーアミーゴス」が署の幹部なのですから。それを認めるのであれば、あとは推して知るべしでしょう!)。
(2)この映画に対して映画評論家の前田有一氏は、次のように批判して45点しか与えていません。
「本作製作スタッフ」は、「青島刑事が過去に逮捕した大物ゲストタレントたちを含む、オールスター総登場のシナリオを作る」という、「なりふりかまわぬ手法で観客をかき集める行動に出た」が、「こんな小技に頼るとは世も末。スクリーンの前で、私はただただ唖然とするばかりであった」。
それに、「大勢を集めるこういう映画だからこそ、「映画」のもつ原始的な面白さを味あわせてほしいものだ」が、実際のところ「引越しが最大のスペクタクルでは、「踊る」の名が泣く。そんなものは、本編前に流すオマケのお笑い短編程度のアイデアに過ぎない」。
要すれば、前田氏の見るところ、次の2点が問題のようです。
・オールスター総登場のシナリオ
・引越しが最大のスペクタクル
さて、本作品を見ると、新しい湾岸署の署長は、「交渉人」だった真下正義(ユースケサンタマリア)がラストで就任し、その結果「スリーアミーゴス」はお役御免となるようですし、現場と本部との調整役の管理補佐官・鳥飼誠一(小栗旬)の登場で、官房審議官の室井慎次(柳葉敏郎)の影は薄くなり、中心的な存在の一人であった和久さん(故いかりや長介)が姿を消し、その甥っ子(伊藤淳史)が登場するなど、登場人物が大きく様変わりしつつあることがわかります。
おそらくこの背景には、本シリーズの根本的な見直しがなされたのではないでしょうか?そして、次からは新しく出直すという意味での「湾岸署の引越し」ではないでしょうか?
さらには、「過去に逮捕した大物ゲストタレントたちを含む、オールスター総登場」も、その観点からすれば当然のことのように考えられます。すなわち、過去の逮捕劇を総括し、これからの新しい犯罪に備える、そのための「オールスター総登場」ではないでしょうか?
こう考えれば、前田氏が挙げる批判点は、むしろ、新しいシリーズのための跳躍点ともみなされると思われます。
こうなると、次の『踊る大捜査線4』が心待ちになってしまいます!
(3)その他の評論家は次のようです。
福本次郎氏は、「2時間余りの上映時間に収まりきれないほどの雑多な要素を凝縮する反面、主人公の思いは独白で、感情は音楽で丁寧に解説し、普段バラエティ番組しか見ない観客層をもてなすかのようなかゆい所に手が届くサービス精神を見せる。ただ、あらゆる表現が過剰で、その押しつけがましさは織田祐二の熱演以上に暑苦しい」として50点を、
渡まち子氏は、「本作の目玉であるキャラで、小栗旬が演じる、本店(警視庁)と支店(所轄)を結ぶ管理補佐官という役どころは興味深い。上層部と現場の思惑の違いがこのシリーズの面白いところ。両方の顔を立てながら事を思うように運ぶ、この頭脳派の役をもっと掘り下げれば、警察ものとして新しいスタンスが生まれたかもしれない」などとして55点を、
それぞれ与えています。
★★★☆☆
象のロケット:踊る大捜査線3
(1)こうした鳴り物入りの映画は、宣伝ばかりすごくて中身がなく、結局のところ面白くないというのが通り相場で、正直言って、私も見る前はそう思っていました。
ですが、随分と楽しめたのには驚きました。
まずは、湾岸署の引越しというまたとない出来事に乗じて、テロリストが所内に仕掛けを施すという発想が面白いと思いました。
一般に、企業が新しいビルに引っ越す場合には、一斉に行動するのではなく、移動する部署を分けて取りかかるのが普通でしょう。また、社員は事前に書類などを整理しておいて、引越そのものは、社員のいない休日に引越業者の手で行われることでしょう。
ただ、警察署の場合は、休日といっても署員がカラになることはありませんし、普段でも人の出入りが相当激しいでしょうから、事前に準備するといっても、限られたことしかできないものと思われます。
従って、この映画のような光景もそれほど不自然でないのではと思われます。
そして、最新のセキュリティシステムで防護されているはずの新しい湾岸署が、逆にその装置によって、外から完全に遮断されてしまう、という展開も実にユニークだと思いました。
さらに、テロリストの要求が、織田裕二扮する青島刑事が過去に逮捕した犯人を解放せよ、というのも面白いと思います。
TVドラマシリーズについては、実際にはこれまでそんなにいい視聴者ではなかったので、顔写真が画面に出てきても、それぞれがどんな罪を犯して逮捕されたのかピンときませんでしたが、それでもそれぞれを演じる俳優たちはよく知られているので、随分ととっつき良くなります。
なかでは、岡村隆史や伊集院光の印象が良かったように思います(いずれも外には出られませんでしたが)。
ここで問題となるのが小泉今日子の演じる日向真奈美。
この女性は、映画版『踊る大捜査線』の第1回目に登場します(念のため、DVDを借りてきて見てみました)。
彼女は、隣接署の管轄区域との境界に流れる川で発見された死体を巡る捜査で浮かび上がった容疑者なのです。ですが、捜査員が彼女のそばまで近づきながらも、取り逃がしてしまったところ、今度は自分で湾岸署に現れ、自分を死刑にしろと騒ぎたてます(ナント彼女は、現在の司法制度について、何の知識も持っていないのです)。
実際に彼女の捜査に当たったのは、ユースケサンタマリアと水野美紀のペアながら、彼女を取り押さえたのが青島刑事ということで、今回テロリストからの解放要求リストに挙がったのでしょう。
それはさておき、前回の映画では、彼女がこれまでの凶悪事件を詳細に調べ上げているところから、警視庁副総監誘拐事件の犯人の目星をつけるべく、青島刑事が彼女にお伺いを立てたところ、犯人は本部のプロファイリングが示しているものではなく、単なる子供だと言い当てます。
そういうこともあって、今回の映画でも、彼女の説得に青島刑事が当てられることになったのでしょう。
ただ、彼女は、初めから一貫して死にたいと言っていて、今回も旧湾岸署の中に仕掛けられた装置の爆発で死のうとします。
それをどうやって説得したのでしょうか、大爆発の粉塵の中から、彼女を両手に抱えて青島刑事が無事に現れてくるのです!その点は今一納得できませんでした。
なお、こうした映画に対して、たとえば、いくら引越し最中だからといって、「拳銃が三丁も盗まれるなんてあり得ない」などと批判する輩がいるようですが、そんなことは「あり得ない」などと言ってしまったら、この映画が成立しないのは明らかで、そう言いたい人は元からこの映画など見なければいいのでしょう(なにしろ、「スリーアミーゴス」が署の幹部なのですから。それを認めるのであれば、あとは推して知るべしでしょう!)。
(2)この映画に対して映画評論家の前田有一氏は、次のように批判して45点しか与えていません。
「本作製作スタッフ」は、「青島刑事が過去に逮捕した大物ゲストタレントたちを含む、オールスター総登場のシナリオを作る」という、「なりふりかまわぬ手法で観客をかき集める行動に出た」が、「こんな小技に頼るとは世も末。スクリーンの前で、私はただただ唖然とするばかりであった」。
それに、「大勢を集めるこういう映画だからこそ、「映画」のもつ原始的な面白さを味あわせてほしいものだ」が、実際のところ「引越しが最大のスペクタクルでは、「踊る」の名が泣く。そんなものは、本編前に流すオマケのお笑い短編程度のアイデアに過ぎない」。
要すれば、前田氏の見るところ、次の2点が問題のようです。
・オールスター総登場のシナリオ
・引越しが最大のスペクタクル
さて、本作品を見ると、新しい湾岸署の署長は、「交渉人」だった真下正義(ユースケサンタマリア)がラストで就任し、その結果「スリーアミーゴス」はお役御免となるようですし、現場と本部との調整役の管理補佐官・鳥飼誠一(小栗旬)の登場で、官房審議官の室井慎次(柳葉敏郎)の影は薄くなり、中心的な存在の一人であった和久さん(故いかりや長介)が姿を消し、その甥っ子(伊藤淳史)が登場するなど、登場人物が大きく様変わりしつつあることがわかります。
おそらくこの背景には、本シリーズの根本的な見直しがなされたのではないでしょうか?そして、次からは新しく出直すという意味での「湾岸署の引越し」ではないでしょうか?
さらには、「過去に逮捕した大物ゲストタレントたちを含む、オールスター総登場」も、その観点からすれば当然のことのように考えられます。すなわち、過去の逮捕劇を総括し、これからの新しい犯罪に備える、そのための「オールスター総登場」ではないでしょうか?
こう考えれば、前田氏が挙げる批判点は、むしろ、新しいシリーズのための跳躍点ともみなされると思われます。
こうなると、次の『踊る大捜査線4』が心待ちになってしまいます!
(3)その他の評論家は次のようです。
福本次郎氏は、「2時間余りの上映時間に収まりきれないほどの雑多な要素を凝縮する反面、主人公の思いは独白で、感情は音楽で丁寧に解説し、普段バラエティ番組しか見ない観客層をもてなすかのようなかゆい所に手が届くサービス精神を見せる。ただ、あらゆる表現が過剰で、その押しつけがましさは織田祐二の熱演以上に暑苦しい」として50点を、
渡まち子氏は、「本作の目玉であるキャラで、小栗旬が演じる、本店(警視庁)と支店(所轄)を結ぶ管理補佐官という役どころは興味深い。上層部と現場の思惑の違いがこのシリーズの面白いところ。両方の顔を立てながら事を思うように運ぶ、この頭脳派の役をもっと掘り下げれば、警察ものとして新しいスタンスが生まれたかもしれない」などとして55点を、
それぞれ与えています。
★★★☆☆
象のロケット:踊る大捜査線3
大好きな内田有紀が出てたので、内容はどうであっても許す事に決めました。けっこう許しました。
もう少し整理してエピを絞り込めば警察ものとして面白くなったのではないかと。
「踊る」を見続けてない者(私)にとって、冗長に思えるシーンがいくつかありました。
ただ、今まで「踊る」を愛してくれたファンの方々に送る総集編的な面を外すわけにはいかないと思いますので、
(と、いうかむしろそっちの方が大きい?)
次回作があるとすれば、その転換点としては妥当なところかもし取れません。
今までの総集編&新たな出発への布石の両方を楽しめた作品でした。
笑っていいとも!に「スリーアミーゴス」として、御三方が登場なさっていましたね。
できれば、これからも、さらにのんきなお偉方に昇進してユースケ新署長を困らせて(笑)欲しいなぁ…等と感じつつ。。。
管理補佐官・鳥飼と青島の攻防(?)を、次回作で観てみたいと思っています。