孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナの犠牲者100人超  イスラエル核施設を狙った攻撃も “過剰攻撃”自制が求められるイスラエル

2014-07-11 22:25:30 | パレスチナ

(空爆を受けるガザ “flickr”より By Islamic News Daily https://www.flickr.com/photos/islamicnewsdaily/14622802555/in/photolist-ohaFKr-oguez4-nZGnii-oiVSFD-nZFfnN-nZF4YJ-nZFfeb-nZmwEq-oh59kQ-oj3PJn-og1XXE-nYHgfT-ogQeKV-nZh2ch-oio4op-oiBW3z-nYJcYD-nYGXXY-nYJd1T-ofUYJZ-nZgEB7-ofUYCB-nZgsn9-oeS9jN-og9Myq-ohY3E8-oeaAUU-nZhNjD-nYHgmp-ofUYHr-og9MqQ-nYJd9Z-nYJd9i-nZiEx4-og9Mq9-oeaAX9-ohY3Fv-nYJd6T-ofUYP8-nYGY6o-oeaAWY-nYGY8C-ogzthh-oeaARh-ogoEgp-ogvGpt-ofu7pJ-og2PKf-ofu7rC-o12UFa)

地上侵攻もありうる
イスラエル・パレスチナ双方の若者・少年が殺害されるという事態で“憎しみと報復の連鎖”が止まらないパレスチナ情勢については、7月2日ブログ「行方不明のイスラエル人少年、遺体で発見 今度はパレスチナ人少年が拉致・殺害」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140702)でも取り上げたところですが、事態は悪化・エスカレートするばかりです。

ガザ地区からのハマス等によるイスラエルに向けたロケット弾攻撃、イスラエルのガザ空爆が繰り返されるなかで、イスラエル軍による「地上戦」の可能性も強くなっていることを各紙が伝えています。

****パレスチナ:イスラエル軍「地上戦準備」 ガザ住民に退避促す****
イスラエル軍は10日、イスラエルとの境界に近いパレスチナ自治区ガザ地区中部東側の住民数千人に別の地域へ退避するよう警告を出した。イスラエルメディアが伝えた。

また、イスラエル軍は10日までに予備役2万人を招集。軍広報官は同日、ロイター通信の取材に「地上戦に備えての招集だ」と話しており、空爆を継続してもガザからの砲撃が止まらない場合、地上侵攻もありうるとの見解を示した。(中略)

また、イスラエルのテレビ局「チャンネル2」はイスラエルが退避警告を出した狙いについて、地上戦でガザ中部の東側から侵攻する可能性があると指摘。
一方で、地上戦が近いと印象付ける狙いもあるのではないかと伝えた。

同局が最近行った世論調査によると、地上戦を支持しないと答えたイスラエル市民は47%で、支持すると答えた市民(42%)をわずかに上回った。

また、イスラエル軍広報官は10日、ロイター通信の取材に「現状では最大限の空爆を行うことに集中している」としたうえで、予備役を新たに6000人追加し2万人に増員した理由について「地上戦が必要となる可能性」も踏まえたうえでの判断だと述べた。

一方、パレスチナのアッバス議長は10日夜、演説し「どちらが戦闘を始めたかではなく、流血の事態をいかに防ぐかだ」と語り、双方に停戦を呼びかけた。また、ケリー米国務長官やトルコのエルドアン首相と対応について協議したと明らかにした。【7月11日 毎日】
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地上戦となると、これまでの空爆を大きく上回る犠牲者が出ることが懸念されます。
国際社会はこぞって双方に自制をよびかけてはいますが、停戦の糸口は見つかっていません。

2012年の衝突時に仲介に立ったハマスと近いムスリム同胞団出身のエジプト・モルシ政権は今はなく、現在のシシ政権はムスリム同胞団敵視政策を進め、ハマスが実効支配するガザ地区への物資供給を遮断していますので、仲介も難しい情勢です。

****イスラエルのガザ空爆、攻撃の連鎖 国際社会が休戦呼び掛け****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区に対する空爆を続行し、パレスチナ側の武装勢力、イスラム原理主義組織ハマスもロケット弾による応戦を継続する中、国際社会は10日、一斉に休戦を呼び掛けた。

双方の攻撃は強まる一方で、パレスチナ側の死者は10日だけで30人を超えた国連(UN)の潘基文事務総長は、国連安全保障理事会の緊急会合で即時停戦を訴えた。

同様にロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話をかけ、流血の事態を終結させるよう促し、また民間人の犠牲者が出ていることに懸念を表明した。

米国のジョン・ケリー国務長官は、ネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長と個別に会談した後で、同地域が「危険な時」に直面していると警告した。

さらにフランスのフランソワ・オランド大統領も、双方に対し「自制」と「譲歩」を呼び掛けた。

しかしイスラエルは、ガザ地区を実効支配しているハマスに致命的な一撃を加えようと躍起になっている様子で、ネタニヤフ首相は停戦協議など「今後の検討課題にすら入っていない」と発言したと報じられている。

対するハマスも攻撃の手を緩める意思はないとみられ、過去48時間にイスラエルの深部へ向けた攻撃を続けている。ハマスが発射したロケット弾は、エルサレムやテルアビブ付近の他、ガザから北へ116キロも離れているハデラでも着弾が確認されている。【7月11日 AFP】
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ハマスとイスラエルが衝突するとき、本来であればパレスチナ自治政府が前面で出て事態解決をはかるべきところですが、アッバス議長の存在感がほとんどないのが現実です。

核施設を狙い、ロケット弾3発を発射
ハマスのロケット弾攻撃で気になったのは、イスラエルの原子力施設を目標とした攻撃を行っていることです。

****イスラエルの核施設を狙い、ハマスがロケット弾****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスは9日、イスラエル南部ディモナにある核施設を狙い、ロケット弾3発を発射した。

うち1発は、イスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」が撃墜したが、2発は空き地に着弾した。核施設への被害は確認されていない。

ハマスは、射程約80キロのロケット弾で核施設を狙ったことを認める声明を出した。ハマスは2008年にも核施設を狙った自爆テロを行ったことがある。(後略)【7月10日 読売】
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原子炉1基を擁するディモナの核施設はガザから約80キロの場所にあり、事実上の核保有国とされるイスラエルの核兵器開発にも関連があるとみられています。

“一連の戦闘でハマスはイスラエル側に事実上「実害」をもたらしていないため、致命的な損害を与えうる重要施設などを狙い始めている。”【7月10日 毎日】

ガザからのロケット弾の多くはイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」でブロックされており、10日時点ではけが人は1人にとどまっています。

11日には、南部の町アシュドッドのガソリンスタンドにロケット弾が命中して激しく炎え上がり、3人がけがをしたとのことでから、それを加えてもけが人が数人程度です。

一方、イスラエル軍の空爆は1000カ所以上に及び、パレスチナ人の死者は102人に達しています。
その中には民間人も多く含まれています。また、負傷者は670人以上に上るとされています。

このように「実害」と言う点では比較にならない状況で、“致命的な損害を与えうる重要施設”を狙った攻撃ということですが、どこまで本気でしょうか?

イスラム過激派が考えていることは知る由もありませんが、本気で核施設を狙うなら、もっとロケット弾攻撃を集中させて、「アイアン・ドーム」のブロックをかいくぐる試みがあってもよさそうです。
80km飛ばせるロケット弾がそう多くないのでしょうか。

イスラエルへの脅しであれば、危険な脅しです。“間違って”命中すれば、イスラエル側の激しい報復を誘発し、多大な犠牲者を出します。

ガザの武装勢力も組織だった攻撃というより、各人・各組織が勝手に攻撃を行っている・・・という状況でしょうか。

日本の原発再稼働で大規模自然災害を想定した議論もなされていますが、何万年後に起こるかどうかわからない大規模火山噴火などよりは、隣国と関係が悪化した結果、原発を狙ったミサイルが飛来するという危険性の方が大きいようにも思えます。

その場合はハマスの手製ロケット弾などではなく、命中精度も高い本格的ミサイルです。隣国が悪意を持ってそのような攻撃をおこなった場合、洋上のイージス艦からのSM-3や地上配備のパトリオットでは十分に防ぎきれないとも言われています。

空爆の直前に電話やチラシで避難を呼びかける・・・・
話をパレスチナ・イスラエルに戻すと、イスラエルは「民間人被害を回避するため」として空爆の直前に電話やチラシで避難を呼びかけるそうです。(全部のケースでやっているのかはわかりませんが)

“8日午前3時半ごろ、隣家に住むいとこが大声で叫んだ。「イスラエルから電話があった。5分後に空爆すると言っている」。アルザブトさんは4人の子供のうち幼い2人を抱えて家から飛び出し、全力疾走した。数百メートル離れたところで、耳をつんざく爆発音がし、振り返ると自宅が炎上していた。”【7月9日 毎日】

“南部ラファでは9日、軍がハマス幹部の自宅空爆の直前に電話で退避を促したが、いったん避難した家族が早く戻り過ぎたため8人が死亡した。”【7月10日 毎日】

事前の通告がないケースもあるようです。
“ここに住んでいたダウラト・ナワスラさん(49)によると、9日午後、イスラエル軍の空爆を受け、爆音とともに家が崩れた。
イスラム教の断食が明ける日没に備え、家族が午睡などでくつろいでいた時だった。息子とその妻、孫2人を含む5人が犠牲になった。「息子の妻は妊娠4カ月だった。皆で遺体の肉片を集めた」。ナワスラさんは泣きながら訴えた。
「みんな殺された。ユダヤ人に死を!」。武装勢力とは関係がないナワスラさんの家族の死に、集まった人たちは怒りをあらわにした。”【7月11日 朝日】

5分前に通告されても・・・という感もありますが、命だけは守れることもあります。守れないことも。
それにしても、電話通告するというのは、イスラエル側が圧倒的な情報量を有していることを示しています。

【“自衛”と言う名の“過剰な攻撃”】
国連安保理の緊急会合で、イスラエルのプロソル代表は、ガザ空爆はミサイル製造施設の破壊が目的だとして、「自衛」を主張しています。

“自衛”の定義は様々です。
イスラエルの場合、“自衛”とは、相手が攻撃の能力・意思をなくすまで徹底的に攻撃することを意味しています。

“ガザからのロケット弾飛来を知らせる警報サイレンの音を15秒間議場に流し、「(イスラエル市民も)逃げ惑っていることを想像してほしい」と訴えた。”【7月11日 毎日】とのことですが、パレスチナでは逃げる間もなく殺害される民間人も出ています。


必ずしも犠牲者の数でその痛みが測れる訳でもないでしょうが、先述のように犠牲者はイスラエル側のけが人数人に対し、パレスチナ側は民間人を含む死者102人、負傷者670人以上です。

潘基文(バンキムン)事務総長はパレスチナ人の死者が88人に上るとの報道があると指摘し、「衝突の代償は市民が払わされている」と主張。「ハマスの無差別なロケット弾攻撃を非難するが、イスラエルの過剰な攻撃も容認できない」と語っています。【7月11日 毎日】

圧倒的に有利な軍事力を有するイスラエル側が、“自衛”と言う名の“過剰な攻撃”を自制することを願います。

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