孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マレーシア  ナジブ新首相誕生へ 変わるのかブミプトラ政策

2009-03-28 21:06:06 | 国際情勢

(マレーシア次期首相のナジブ氏 公邸の書斎で。なかなかの読書家のようです。
昨年5月には、2006年に起きたモンゴル人女性殺害事件にナジブ氏が関与していたとブログに書き込んだブロガーが逮捕される事件もありましたが・・・。
“flickr”より By KamalSell
http://www.flickr.com/photos/kamalsell/424267887/)

【政治的混乱が続いたマレーシア】
マレーシアでは、昨年3月の総選挙で、04年選挙では議席の9割を占めた与党連合(国民戦線)が6割に留まり、安定多数の3分の2を確保できませんでした。
“政治的ツナミ”とも呼ばれた与党の歴史的大敗の背景としては、物価高や治安の悪化、汚職の蔓延に対する政権への失望感、多数派マレー系住民を優遇するブミプトラ政策への不満などが挙げられていました。

選挙後の5月には、アブドラ首相への批判を強めるマハティール前首相は、アブドラ首相が与党、統一マレー国民組織(UMNO)の総裁と首相の地位にとどまっていることに抗議してUMNOから離党。
6月には、総選挙で躍進した野党勢力の指導者のアンワル元副首相を異常性行為(同性愛)の容疑で警察が捜査、アンワル元副首相はクアラルンプールにあるトルコ大使館に一時避難。
アンワル氏は以前も同様の容疑をかけられ、マハティール前首相の後継者と思われていた副首相の地位から追放されています。

そのアンワル元副首相は、8月のペナン州下院選挙区補欠選挙に出馬して勝利。政権奪取へ向けての攻勢を強めます。
与党議員を切り崩して野党に寝返らせさせ、野党が過半数の議員から支持を得たことを明らかにして、アブドラ首相に首相の座を明け渡たすように迫りました。
しかし、結局この与党切り崩し策は、アブドラ首相の「ナジブ氏への禅譲」などもあって、うまくいかなかったようです。

そんなこんなで混乱が続いていたマレーシア政局ですが、マハティール元首相や党内若手議員の批判、野党・人民正義党のアンワル元副首相の攻勢によって、アブドラ首相はナジブ副首相に党の総裁を禅譲することを余儀なくされ、これによって、来月にはナジブ首相が誕生することになります。

****マレーシア与党 新総裁選出 ナジブ政権、来月発足*****
ナジブ氏は、父親の死去を受け、1976年に政界入りした。マハティール元首相の薫陶を受け、早くから将来の総裁候補として注目されていた。ただ、近年は金権政治や女性問題をめぐるスキャンダルが取りざたされていた。こうしたこともあり、ナジブ氏は党大会が開幕した24日の演説で、不正が多いとされる党内選挙の見直しに取り組む考えを示していた。

一方、将来の党指導者の“登竜門”とされる青年局長には、アブドラ現首相の義理の息子のカイリ氏(33)が、マハティール前首相の3男ムクリズ氏(44)らを破って当選した。ただ、事前の調査では、ムクリズ氏に対する支持が最も多く、カイリ氏は3番手だった。このため、カイリ氏の逆転当選に対し、ムクリズ氏の支持者を中心に「買収工作が行われた」などとの批判があがっており、早くもナジブ氏は、金権腐敗問題での対応を迫られる格好となった。

さらに、マハティール元首相が今回の結果を受けて、UMNO批判を強めることは確実だ。マハティール氏は2003年にアブドラ氏に首相の座を禅譲。昨年3月の選挙でUMNOを中心とする与党連合が大敗して以降、アブドラ政権批判を強め党籍も離脱した。今回、アブドラ氏が退陣するため大会に出席するとされていたが、結局、出席を取りやめた。
ナジブ氏についてもマハティール氏は、最近のロイター通信のインタビューで「私がアブドラ(首相)に、ナジブを副首相にするよう頼んだ。大いに期待していたが、彼は期待に応えることはなかった」などと述べ、批判していた。
来月7日には、下院の補欠選挙が2カ所で行われる予定で、ナジブ新体制は発足早々、国民の審判を仰ぐことになる。【3月27日 産経】
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【ブミプトラ政策】
マレー系・中国系・インド系の住民が共存する多民族国家マレーシアにあっては、民族間のバランスを維持しながら、経済的に劣った地位にある多数派マレー系住民を資本・雇用(例えば銀行融資、入学試験、就職など)で優遇することで、その地位を穏やかに引き上げていこうとする“ブミプトラ政策”がとられています。

このマレー系優遇策には当然ながら、中国系、インド系住民の反発もあります。
(中国系・インド系のなかにはマレー系に協力することで既得権益を守っていこうする階層もあって、必ずしも一様ではありませんが。)
また、ブミプトラ政策の結果、マレー系住民にも経済的に成功した層がうまれており、“マレー人は華人・インド人より劣っているので、保護が必要だ”とするブミプトラ政策、統制的な経済政策、強権的な社会体制に対する不満が大きくなっています。

更に、ブミプトラ政策の根幹といえる新経済政策(NEP)においては、マレー系優遇の反面として、外国資本の活動に様々な制約が課されていますが、これが金融危機のなかで外国資本のマレーシアからの引き揚げに繋がったと考えられています。
今回首相就任が確実となったナジブ副首相兼財務相は昨年10月末、新経済政策(NEP)を見直す考えを表明。
その第1弾として11月、株式公開の際のマレー系住民への30%の株式割り当て義務の緩和を発表しています。【08年11月18日 産経】

これに対し、マハティール前首相は見直しは時期尚早と反対しています。
ブミプトラ政策の生みの親であるマハティール前首相は、昨年の選挙前、「ブミプトラ政策を変更する時期にきている。ただし、急激な停止は成果を失うことになる。」と発言しています。

マレーシアの政局自体はともかく、“ブミプトラ政策”の今後、ひいては多民族国家マレーシアの今後には関心がもたれます。

(追記)
アップした直後に新しいニュースが入っていました。

****マハティール前首相、マレーシア与党復党へ…党大会で表明****
マレーシアのアブドラ首相との対立から昨年、与党連合の中核政党・統一マレー国民組織(UMNO)を離党したマハティール前首相は28日、復党の意向を表明した。
アブドラ氏が同日まで開かれた党大会で党総裁を正式に退任し、近く首相も辞任するのを受けた動きとみられる。
同国のニュースサイトなどによると、党大会最終日のこの日、マハティール氏は予告なしに大会会場に現れ、「条件が整えれば党に戻る」と述べた。マハティール氏は、自ら後継指名したアブドラ首相が昨年3月の総選挙で同党が敗北した後も党総裁職に固執したことを批判、同年5月に離党していた。【3月28日 読売】
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