孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国との関係 欧州では強化する国も アジア・アフリカではなお強固 欧米での好感度は悪化

2020-10-12 23:40:44 | 中国

(米調査機関ピュー・リサーチ・センターが、日米欧など14カ国で6〜8月に実施した中国に対する好感度に関する世論調査 青線は否定的、緑線は肯定的な者の割合)

 

【人権問題 中国批判国増加も、支持国も依然として多数】

中国のウイグル、チベット、内モンゴルにおける文化的民族浄化とも言われるような統治、香港の直接統治への動き、台湾への圧力・・・等々、その強権的な姿勢には、日本を含めた欧米諸国の価値観とのズレが見られます。

 

特に人権に関する認識には大きな差がありますが、中国と対立を強化するアメリカは、対中国けん制のカードとしても活用しているようにも。

 

****ウイグル・香港問題 国連で非難の応酬 「中国が脅しと圧力」「幸せ享受している」****

米ニューヨークの国連本部で6日に開かれた国連総会第3委員会(人権)で、ドイツのほか日米英仏など39カ国が「中国新疆ウイグル自治区の人権状況と最近の香港情勢に重大な懸念を抱いている」と非難する共同声明を発表した。

 

中国は強く反発。パキスタンなど55カ国、キューバなど45カ国がそれぞれ逆に中国を擁護する共同声明を発表し、人権問題をめぐって会合は紛糾した。

 

英国のアレン国連代理大使は記者団に、中国が「経済協力を巡る脅しも含めて非常に大きな圧力」を複数の国にかけたと明言した。

 

外交筋によると、中国はオーストリアに対し、欧米諸国などの共同声明に賛同すれば北京の大使館の移転先用地を入手させないと報復を示唆した。人権問題で結束を図る欧州の「分断を図ろうとした」(国連外交筋)。

 

しかし、オーストリアは欧米諸国などが提案した共同声明に参加し、署名した国は昨年より16カ国増えた。

 

欧州諸国は、国連で影響力を高める中国が「新疆問題やチベット問題、香港にとどまらず、内モンゴル自治区でも同化政策を進めるなど人権をめぐる国際法や規範を骨抜きにしている」(国連外交筋)との懸念を強めている。今年の声明では「懸念」の前に「重大な」を付け加え、批判のトーンを強めた。

 

一方、中国の張軍国連大使は、記者団に「英国やドイツ、米国こそ、あらゆる外交手段を使って他国に圧力を加えている。国連という場を悪用して、人権を政治問題化し、対立をあおっている」と反論。「我々は(署名国の)数の多さは競っておらず、主権と領土の保全を守ろうとしている」と述べた。

 

ドイツのホイスゲン国連大使が読み上げた欧米諸国などの声明は、中国が新疆の「再教育施設」に少数民族のウイグル族を収容し、厳重な監視下で強制労働や強制避妊手術を行っていると指摘。バチェレ人権高等弁務官ら国連関係者による視察を直ちに無制限で認めることを求めた。

 

また、中国の香港に対する統制を強化する「国家安全維持法」の施行にも懸念を示し、言論や報道、集会の自由を保障するよう求めた。

 

一方、キューバなど45カ国の共同声明は「中国は、新疆に暮らす全ての民族の人権を守る法律に従い、テロリズムや過激主義の脅威に対抗してきた」と指摘。「人々は平和で安定した環境の下、幸せな生活を享受している」などと中国を擁護した。【10月7日 毎日】

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昨年に比べて中国批判声明賛成国が増えたとのことですが、それでも数のうえでは中国支持国が上回っている状況です。

 

昨年の同じような声明採択時のニュースでも感じたのですが、中国の統治、人権侵害には問題があるという主張が当然視される日本にいると、欧米以外の多くの国が中国を支持しているという「現実」を忘れがちにもなります。

 

もちろん、そういう中国支持は、一部の根っからの欧米批判国以外については、多額のチャイナマネーをちらつかせることで買い上げた支持に過ぎない・・・といった反論もあるでしょうが。それにしても・・・といったところです。

 

【欧州 中東欧、イタリア、バチカンなど中国との関係を重視する国も】

中国支持国は、アジアのカンボジアやパキスタンなど、従前から中国が外交上の力点を置いてきたアフリカなどで顕著ですが、欧州にも広がっているようです。

 

****クロアチア首相、ポンペオ米国務長官の前で中国の「一帯一路」称賛―米華字メディア****

米国の中国語ニュースサイトの多維新聞は4日、クロアチアのプレンコビッチ首相が同国を訪問したポンペオ米国務長官の前で中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を称賛したと報じた。

米国務省のホームページに2日付で掲載された情報を引用して伝えたもので、それによると、プレンコビッチ首相は2日、ポンペオ氏との記者会見で、「ポンペオ氏は一帯一路を『帝国を購入する』計画と見ているが、この地域への北京の投資は略奪的であることに同意するか」と問われ、「中国は国際的な行動力を行使できる組織体だ。中国は非常に賢明に、この中東欧諸国との関係、政治的対話、経済的枠組みの形式を考案した」と述べた。

そして、「クロアチアの首相としての最初の任期中に、中国の李克強(リー・カーチアン)首相と6回会談した。この形式がなかったとしたら、少なくとも25年から30年の時間を必要としただろう。このことは、中東欧で中国の関与と存在感が高まっている理由を説明している」と述べた。【10月5日 レコードチャイナ】

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ポンペオ米国務長官の欧州訪問については、クロアチアに先立って、イタリアでも対中国関係が問題になっていました。

 

8月末には中国の王毅国務委員兼外相が欧州を歴訪。イタリアのディマイオ外相は王毅氏と会談し、両国はより緊密な関係を築く必要があると述べています。これがポンペオ米国務長官を苛立たせたと思われます。

 

****米国務長官、イタリアに警告 中国との経済関係や5G技術巡り****

ポンペオ米国務長官は30日、訪問先のローマで、中国との経済関係を巡ってイタリアを警告し、中国の携帯通信技術がイタリアの国家安全保障や市民のプライバシーの脅威だと述べた。

ポンペオ長官はディマイオ外相との共同会見で、「外相と私は中国共産党がイタリアでの経済的存在感を利用して、自らの戦略目的を果たそうとしていることへの米国の懸念について長時間話し合った」と指摘。

また、イタリア政府に対し、中国共産党とつながりがあるテクノロジー企業がもたらす国家安全保障と市民のプライバシーへのリスクを慎重に検討するよう求めたという。

ディマイオ外相は、イタリアが中国の次世代通信規格「5G」技術に関する米国の懸念を認識しており、「安全保障に対処する際に全ての国が直面する責任を十分に認識している」と述べた。

一方、ローマ教皇庁(バチカン)は同日、10月1日にバチカンを訪問するポンペオ長官からフランシスコ教皇への謁見要請があったものの、拒否したと明らかにした。11月の米大統領選を控え政治利用される可能性を回避したという。【10月1日 ロイター】

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最後のバチカンに関してもポンペオ米国務長官は、司教任命権をめぐるバチカンの対中国宥和姿勢に批判的です。

 

****バチカンは中国の宗教弾圧に「真剣な」対応を、ポンペオ氏求める****

米国のマイク・ポンペオ国務長官は9日、中国の宗教弾圧の問題に「真剣に」取り組むようローマ教皇庁(バチカン)に求めた。ポンペオ氏は先週ローマを訪れたが、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇との会談は行われなかった。

 

福音派プロテスタントで中国に批判的な立場を取るポンペオ氏は、ラジオのインタビューで、ドナルド・トランプ大統領が11月の大統領選で取り込みを図りたい保守的なカトリック信者らが英雄視するヨハネ・パウロ2世に言及し、「欧州で自由を生み出し、旧ソ連を解体させ、旧ソ連に抑圧されていた人々に自由を与える重要な役割を果たした」と主張。

 

また、フランシスコ教皇を念頭に「われわれには今、同じような道徳の証人が必要だ」と述べ、「ローマ教皇は世界の善のための強力な力であり、真剣で思慮深く、教皇が固く持つ信念と一致したやり方で、このことを話してもらう必要がある」と強調した。

 

バチカンはフランシスコ教皇がポンペオ氏と会わなかったことについて、選挙期間中の国の高官と会うことは控えていると説明。また、中国と開かれた関係を築こうとするフランシスコ教皇の姿勢に対し、ポンペオ氏が公然と非難したことに驚いたとしている。

 

公式に無宗教を国是とする中国政府は、宗教信仰を厳格に管理している。だが、バチカンが中国と2018年に結んだ合意の下、フランシスコ教皇は中国側が推奨した司教を任命する権限を再び得た。

 

ポンペオ氏はローマ滞在中、在バチカン米大使館が主催したシンポジウムで「すべての宗教指導者が宗教弾圧に対抗する勇気を見いだす」よう呼び掛けた。 【10月10日 AFP】

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【アフリカ諸国 依然として高い中国への好感度】

一方、中国にとって金城湯池でもあるアフリカ諸国の中国支持は、アメリカや日本で強い「債務の罠」批判にもかかわらず、いまだ固いようです。

 

****アフリカにおける中国の評判は驚くほど永続的―仏メディア****

フランスの月刊誌、The Africa Report(電子版)は11日、「アフリカにおける中国の驚くほど永続的な評判」とする記事を掲載した。

中国紙・環球時報(電子版)が14日、その内容を要約して次のように伝えている。

権威ある世論調査機関のアフロバロメーターが5年前に、アフリカ大陸への中国の関与に関してアフリカの人々の意識調査を行って以来、アフリカのほとんどの国で、中国に対する肯定的な見方は、その当時の状況を維持しているかまたは上昇している。

アフロバロメーターが調査した18カ国全体で、アフリカにおける中国の経済的および政治的影響力について好意的な見方をしている人の割合は59%に上っている。これは特に現代においては尋常ではない数字だ。

この数字は、アフリカにおける中国の存在を非難する多くのアナリストがアフリカの民意を誤解していることを示している。

 

(西側の)メディアやSNS上では「債務のわな」や移民労働者、新植民地主義、偽造品などをめぐる議論が絶えないが、多くのアフリカ諸国における中国の好感度は驚くほど永続的なものであることをデータが示している。

米国政府と対中タカ派が過去10年にわたり「債務のわな」を持ち出して中国を批判してきたことの有効性について、重要な教訓がある。研究は、そうした批判が全く機能していないことを示している。

 

そうした人々は、新たな戦略を見つけなければならない。多くの人にとって課題となるのは、アフリカの人々が自国での中国の存在についてどのように感じているかを正確に理解できない可能性がある「埋め込まれた物語」に常に疑問を投げ掛けることだ。【9月15日 レコードチャイナ】

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【アジア カンボジアのフン・セン首相「他の国で中国ほど積極的に支援を申し出る国はなかった」】

アジアにおける中国支持国の代表格がカンボジアのフン・セン政権。

 

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は10月2日、衛星写真の分析に基づき、カンボジア南西部にあるリアム海軍基地で米国が建設した施設が破壊されたことが確認されたと発表。周辺の土地を中国政府とつながりのある中国企業が借り上げており、CSISは中国が軍事利用するとの疑念を強めるものだと指摘しています。

 

****中国、カンボジアの海軍基地の拡張支援****
中国がカンボジア南西部にあるリアム海軍基地の拡張を支援していることがわかった。国有エンジニアリング会社の中国冶金科工集団が同基地拡張プロジェクトに関わっており、中国による軍事利用の懸念が指摘されている。(中略)

 

カンボジア海軍の高官は日本経済新聞の取材に、中国の基地拡張プロジェクトを認めている。バン・ブンリエン海軍副司令官は小型船舶しか進めない現在の水域をより深くするための作業をしていると説明し、さらに「中国は基地内に船体修理の施設を造る工事を支援してくれている」と語った。ただ、同氏は中国軍が関与しているとの見立てを否定している。

 

中国冶金科工集団は16年、ウェブサイト上で同年6月にカンボジア国防当局と港湾拡張を進めるための協力枠組み協定を締結したとする声明を発表した。(中略)

 

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはカンボジアが中国に同基地の軍事利用を認める代わりに、中国がインフラを整備する秘密合意を結んだと報道している。CSISは「リアム海軍基地の施設は小型巡視船を収容することしかできないため、大規模な港湾開発には注意が必要だ」と指摘している。【10月6日 日経】

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フン・セン首相は、中国支援で改修工事が進むリアム海軍基地について、中国が独占的に利用することはないと反論。

 

****カンボジア海軍基地、中国専用ではない フン・セン氏****

カンボジアのリアム海軍基地で、米国の支援で建てられた施設が破壊され、中国の支援で改修工事が進められる中、フン・セン首相は7日、同基地を中国が独占的に利用することはないと述べた。

 

リアム海軍基地は、タイ湾の要地にあり、各国が領有権を激しく争う南シナ海に容易にアクセスできる。

 

フン・セン氏は、首都プノンペン近郊にある中国人所有のテーマパークの開園式に出席。「他の国々も寄港や給油、カンボジアとの(合同)軍事演習実施の許可を求めることができる」と述べた。(後略)【10月8日 AFP】

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フン・セン首相は更に、カンボジアは中国の「衛星国」ではないとも強調しつつ、「他の国で中国ほど積極的に支援を申し出る国はなかった」とも。

 

****「中国の衛星国」批判、首相が反論****

カンボジアのフン・セン首相は7日、カンボジアは中国の「衛星国」ではないと強調した。中国からインフラ整備などの分野で多くの支援を受けていることについては、同国が最も積極的な支援の姿勢を表明した結果と説明している。クメール・タイムズ(電子版)などが8日に伝えた。

 

フン・セン首相は、「中国による融資でカンボジアでは道路の建設などが順調に進んでいる。日本や韓国の支援で建設された道路や橋もあるが、中国の援助はさらに大きい。他の国で中国ほど積極的に支援を申し出る国はなかった」と指摘。

 

中国からの多大な援助を一方的に取り上げて、「カンボジアを中国の衛星国」と見なす見解は妥当ではないと不快感を示した。(後略)【10月9日 NNA ASIA】

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アジアで、もうひとつの中国と関係が深い国がパキスタン。

そのパキスタンで、中国発の短編動画投稿アプリ、TikTok(ティックトック)の使用が禁止されましたが、これは欧米におけるように、情報が中国に流れる云々の視点ではなく、その内容が「低俗」だとするパキスタンの宗教的価値観によるものです。

 

【欧米では新型コロナ対応の影響で中国への感情悪化 中国メディア「西洋のエリートたちが気に食わないならそれで結構」】

上記のような中国に好意的な国々の動向の一方で、最近、欧米各国や日本の中国に対する国民感情は悪化しているという調査結果が。

 

****中国の好感度、軒並み悪化 日米欧など14カ国で****

米調査機関ピュー・リサーチ・センターは10日までに、日米欧など14カ国で6〜8月に実施した世論調査で、中国に好意を持っていないと答えた人が70%を超え、大半の国で好感度が大幅に下がったと発表した。

 

新型コロナウイルス対応への不満が影響。習近平国家主席に対する評価も軒並み悪化した。

 

オーストラリア、英国、ドイツ、オランダ、スウェーデン、米国、韓国、スペイン、カナダでは、中国への否定的な回答が10年以上前に調査を始めて以降、最も多かったという。

 

コロナ感染拡大を巡る海外の批判を強硬な態度で受け付けない外交姿勢がイメージ悪化につながった可能性がある。【10月10日 共同】

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新型コロナについて言えば、確かに中国の情報隠蔽という問題は初期段階でありましたが、各国における感染拡大はそれぞれの国の国内対応や国民意識の問題が大きく、中国のせいにするのは責任転嫁のようにもおもいますけどね。

 

中国メディアは、こうした欧米の反応に切れています。

 

****中国への否定的な見方が増加、「中国が何か間違ったことをしたのか」と中国紙編集長****

2020年10月8日、米華字メディア・多維新聞は、日本や欧米諸国で中国に対するネガティブな評価が急速に高まっていることに対する、中国紙編集長の意見を報じた。

(中略)中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進(フー・シージン)編集長が微博上で「これは米国政府が極端なやり方によって世界を分断、分裂させた結果だ。中国は何か間違ったことをしたのか、戦争を仕掛けたり他国の内政に干渉したりしたとでもいうのか。そんなことはしていない。われわれは誠実に、そして努力して自らを発展させ続け、世界との友好を進めてきた。それにもかかわらず、西側の政治、世論のエリートたちは中国を攻撃し、西側市民の中国に対する認識を毒化させていったのだ」と論じたことを伝えている。

また、米国が新型コロナウイルスの世界的な流行に対し中国が責任を負うべきだとの態度を示し、新疆ウイグル自治区や香港の問題で中国がさまざまなレッテルを張られ、中国による有効な方法を用いての解決が妨げられていることについて胡氏が「西洋のエリートたちが気に食わないならそれで結構。われわれは自らのやり方で生活する権利を完全に持っている。中国国民の幸福が、この国の最高目標なのだ」との考えを示したと紹介した。【10月8日 レコードチャイナ】

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まあ、こうした自己を顧みることのない尊大な大国主義が欧米で嫌われていることでしょう。

 

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