全銀ネットのシステム障害 復旧は“あす午前8時半を目指す” 金融
金融機関どうしの資金のやり取りを担うシステムに不具合が発生し、10日に続いて11日も11の金融機関で振り込みが遅れるなどの影響が出ています。システムを運営する団体によりますと、処理が遅れた取り引きはこれまでに500万件を超えているということで、システムの復旧の見通しについて「あすコアタイムの午前8時半を目指します」としています。
一方、ゆうちょ銀行でもシステム障害が起きてスマートフォン上で送金などを行うアプリが利用できない状態が続いていましたが、全面的に復旧しました。
銀行のシステム障害相次ぐ なぜ?サイバー攻撃の可能性は?
システムの不具合の影響を受けているのは、
▽三菱UFJ銀行 ▽りそな銀行 ▽埼玉りそな銀行 ▽関西みらい銀行 ▽山口銀行 ▽北九州銀行 ▽三菱UFJ信託銀行 ▽日本カストディ銀行 ▽JPモルガン・チェース銀行 ▽もみじ銀行 ▽商工中金=商工組合中央金庫の11の金融機関です。
システムを運営する一般社団法人の全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」は11日夜、記者会見し、11日までに処理が遅れた取り引きの件数は、
▽影響を受けた11の金融機関から他の金融機関宛ての振り込みが255万件、
▽他の金融機関から11の金融機関への振り込みが251万件であわせて506万件にのぼるとしています。
また、振り込みを受け付けているものの決済できていない件数が11日夕方の時点で87万件にのぼっていて、今後も通常より振り込みが遅れる可能性があるとしています。
全銀ネットの辻理事長が陳謝 12日朝の復旧目指す
全銀ネットの辻松雄理事長はオンラインの会見で「昨日本日にかけて全銀ネットにおける振り込みができなかったことで多大なご迷惑をおかけしていることにおわび申し上げます」と陳謝しました。復旧に時間がかかれば給与や家賃、仕送りや月謝などの振り込みや中小企業の送金などが遅れるなど影響がさらに広がる可能性もありますが、全銀ネットは、日中に稼働するシステムに切り替わる11日午前8時半の復旧を目指すとしています。
原因は中継コンピューターの問題か サイバー攻撃は否定
今回の不具合の原因について全銀ネットは、中継コンピューターに整備されている取り引きにかかる費用をチェックする機能に問題があった可能性があるとしていて、サイバー攻撃の影響ではないとしています。
金融庁「一刻も早いシステムの復旧を」
金融庁は、システムを運営する全銀ネットと影響を受けた金融機関に対して聞き取りを行うなどして状況の確認を進めています。
その上で全銀ネットに対して一刻も早いシステムの復旧を求めるとともに、影響を受けた金融機関には、利用者に不利益が及ばないよう柔軟な対応をとるなど、顧客対応に万全を期すよう求めています。
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利用者の不利益への対応は?「二重振り込み」に注意
システムの不具合で影響を受けた利用者に対する金融機関の対応です。
三菱UFJ銀行は、システム不具合の影響で顧客が本来より多く振込手数料を支払った場合は差額を銀行が負担するとしています。
例えば、他行への振り込みができなくなったことでやむをえず別の銀行で振り込みを行ったときに、支払った手数料が三菱UFJ銀行から振り込むときにかかる手数料より高かった場合、その差額を負担する方針です。
また、システムの不具合の影響で企業が残高不足に陥り手形や小切手の決済ができなくなった場合でも不渡りとはしないということです。
りそな銀行も顧客が本来より多くの振込手数料を支払った場合、銀行側で負担するとしています。
各銀行は、取り引きの決済に時間がかかる中、同じ口座に2度送金する「二重振り込み」が発生しないよう利用者に注意を呼びかけています。
児童手当の振り込みに遅れ 問い合わせ相次ぐ
一部の自治体では、児童手当の振り込みが遅れる影響も出ています。
愛知県豊橋市では、10日が児童手当の振り込み予定日でしたが、支給対象者およそ2万5000人のうち1万8000人ほどで振り込みに遅れが出ているということです。豊橋市によりますと金融機関側で順次、送金処理が進められているということで、13日ごろにかけて指定の口座に入金される見通しだということです。
また一宮市では、10日に市内およそ2万5000世帯を対象に、7月から10月の4か月分の児童手当が振り込まれる予定でしたが、「全銀ネット」のシステムの不具合により一部の家庭に対して児童手当の振り込みができず、銀行側からは11日午前7時の時点でも一部の振り込みが完了していないという報告を受けたということです。
一宮市の子育て支援課には「通帳の記帳をしたが手当が入っていない」といった問い合わせの電話がこれまでに300件以上あったということで、古田好英課長は「児童手当は貴重な生活の財源になっているのでなんとか早く振り込みたい。システムの回復を願っている」と話していました。
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《各銀行 業務への影響を詳しく》
三菱UFJ銀行 ATM・ネットで振り込み可能も遅延の可能性
三菱UFJ銀行は全銀ネットのシステム不具合の影響で他行宛ての振り込みについて、11日正午までにいったん受け付けを止めていましたが、11日夕方から12日朝にかけてはATMやインターネットでの振り込みが可能だとしています。
三菱UFJ銀行では、振り込み指定日が11日付けで受け付けされた場合、振り込み先にお金が届くのは11日の夜間になる見込みだとしていましたが、システムの不具合が続いているため、一部ではさらに遅れる可能性があるとしています。
りそなグループ 他行宛ての振り込み受付も遅延の可能性
りそなグループのりそな銀行と埼玉りそな銀行、それに関西みらい銀行は、11日、他行宛ての振り込みは受け付けているものの、全銀ネットのシステム不具合の影響を受け、振り込み先に届くのが12日以降に遅れる可能性もあるとしています。
関西みらい銀行 他行への振り込み 入金は12日以降の可能性
大阪に本店がある「関西みらい銀行」では、ATM=現金自動預け払い機や窓口などでの他行への振り込みについては、11日午前11時以降に手続きを行った場合、実際に入金されるのは12日以降になるとしています。
午前11時までに手続きが完了した振り込みについては、11日中に入金できるよう作業を進めているということです。また、11日に受け付けた他行からの振り込みについても、実際に入金されるのは12日以降になる可能性があるとしています。
関西みらい銀行は、取り引きを急ぐ場合、影響を受けていないほかの銀行からの振り込みなどを検討するよう呼びかけています。
広島 もみじ銀行 振り込み復旧の見通しがたたず影響続く
広島市に本店があるもみじ銀行では、別の手段で振り込みができるように対応しています。
もみじ銀行によりますと、店舗のほか、ATM=現金自動預払機やインターネットでの他行宛ての振り込みの受け付けは午前11時半まででいったん停止し、この時間までに受け付けた振り込みは11日夕方以降に入金するとしています。
その後、午後3時半からATMやインターネットでの振り込みの受け付けを再開するとしていますが、入金は12日以降になる可能性があるということです。11日受け付けた他行からの振り込みは11日夕方以降の入金になる見込みだとしています。
一方、10日に受け付けた振り込みについては、他行からの振り込みは入金済みで、他行宛ての振り込みはきょうの入金になるとしています。もみじ銀行は「ご不便とご迷惑をおかけしおわびします」としています。
山口銀行 11日午後3時半まで他行への振り込み受付を停止
山口フィナンシャルグループによりますと、傘下に置く
▽下関市に本店がある山口銀行と
▽広島市に本店があるもみじ銀行、それに
▽北九州市に本店がある北九州銀行の3行では窓口やすべてのATM、それにインターネットバンキングで午前11時半までバックアップシステムなどを使って他行への振り込みに対応したということです。
ただ、午前中に振り込まれた現金の処理を行うため、午前11時半から午後3時半までは他行への振り込みの受け付けを停止するということです。
山口フィナンシャルグループは、「影響が長引き、ご不便、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。引き続き速やかな復旧に努めています」としています。
北九州銀行 他行への振り込み 入金時間は未定
北九州市に本店がある北九州銀行でもすぐに振り込みの取り引きができない状況が続いていて、小倉北区の本店では入り口に貼り紙をしたうえで担当者が対応にあたっています。
北九州銀行では、ほかの銀行への振り込みは、11日午前11時半までは受け付けを行ったものの、入金できる時間は未定だとしています。
北九州銀行は「復旧のめどは現時点では不明で、復旧でき次第、改めてお知らせしたい」とコメントしています。
商工中金 11日も他行宛て振り込み停止を発表
政府系金融機関として中小企業向けの融資などを手がける「商工中金」は、全銀ネットのシステム不具合の影響で10日午後から他行宛ての振り込みについて全国の店舗の窓口やATM=現金自動預払機、それにインターネットなどによる取り引きを停止していましたが、11日もこれらの取り引きを引き続き停止すると発表しました。
ゆうちょ銀行 一時スマホ決済などのアプリ利用できず
ゆうちょ銀行は、10日朝、インターネットやスマートフォンのサービスでシステム障害が発生し、
▽インターネットバンキングの「ゆうちょダイレクト」と、
▽スマートフォン決済の「ゆうちょPay」は、その後、復旧したものの、
▽スマートフォン上で残高確認や送金を行う「ゆうちょ通帳アプリ」は11日になっても利用できない状態が続いていました。
会社によりますと、復旧作業を進めた結果、11日午後6時ごろにはこのアプリのサービスの不具合も解消し、全面的に復旧したということです。
ゆうちょ銀行は、今回の障害は社内のシステムで発生したものであり、全銀ネット=全国銀行資金決済ネットワークが運営するシステムの不具合とは関連はないとしています。そのうえで、このアプリのサービスの不具合は、サーバーの不調が原因とみて調査を進めているということです。
会社は、復旧するまでの間に窓口やATMを通じて送金した利用者については、申し出に応じて手数料にあたる料金の差額を返金する対応を行うことにしています。
2023年10月11日 19時53分 金融
金融機関どうしの資金のやり取りを担う全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」のシステムで10日朝、不具合が発生し、11の銀行で他行への振り込みなどが停止されるなど全国的に影響が広がりました。さらに、ゆうちょ銀行でも10日の朝にシステム障害が発生し、スマートフォン上で送金などを行うアプリが一時、利用できなくなりました。
銀行のシステム障害が相次いだのはなぜなのか。
関連はあるのか。
サイバー攻撃による可能性は? これまでの取材で明らかになったことを詳しくお伝えします。
目次
Q:サイバー攻撃の可能性は? Q:「全銀ネット」どんなシステム? 目次を開く 【随時更新】全銀ネットのシステム障害 復旧の見通し立たず
Q:サイバー攻撃の可能性は? 松野官房長官は午後の記者会見で「金融庁への報告によれば、今回の障害の原因はサイバー攻撃の可能性は低く、『全銀システム』と金融機関をつなぐシステムを先週末に更改したことに伴い生じた不具合と考えられる」と述べました。 また、全銀ネットもサイバー攻撃の影響ではないとしています。
Q:「全銀ネット」どんなシステム? 全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」は、全国銀行協会の関連組織で、金融機関どうしの資金取り引きをオンライン処理する「全銀システム」=全国銀行データ通信システムを運営しています。 この「全銀システム」は全国1100以上の金融機関をネットワークで結ぶ基幹システムで、1日平均およそ770万件、金額にして13兆円あまりの取引データを処理しているということです。 システムは平日の午前8時半から午後3時半までの入金に対応した「コアタイムシステム」と、平日の夜間と土日や祝日に対応する「モアタイムシステム」の2つのシステムで構成され、取引データが金融機関の間でやりとりされる振り込みなどのデータを集中的に処理し、ほぼリアルタイムで受取人の口座に資金が入金される「迅速性」が最大の特徴だとうたっています。
Q:システム障害発生 その時に何が? システムを運営する全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」によりますと、今回の不具合は「全銀システム」と各金融機関をつなぐ中継コンピューターの部分で発生したということです。 全銀ネットは、9日までの連休中に新しい中継コンピューターに更新し、14の金融機関と接続する作業を行っていたということで、10日の朝、夜間に稼働するシステムから日中向けのシステムに切り替えたところ、午前8時半ごろ障害が発生したことがわかったということです。 10日から復旧作業を続けていますが、11日朝までにシステムの正常化の見通しが立たたなかったため、全銀ネットは他行宛ての振り込みができなくなっている11の金融機関について、代替手段での対応を続けています。金融機関が取り引きデータをファイルで全銀システムに直接持ち込んだり、送ったりして処理する方法で、通常の取り引きより時間がかかるとしています。 今回の不具合の原因について全銀ネットは、中継コンピューターに整備されている取り引きにかかる費用をチェックする機能に問題があった可能性があるとしています。 ただ、この機能についてはシステムを利用する金融機関の参加も得ながら稼働に向けたテストを行ったということで、全銀ネットは、なぜ今回の不具合の復旧に時間がかかっているのか要因分析を行うとしています。 システムは1973年に稼働を始めましたが金融機関の顧客の取り引きに影響を及ぼす形で不具合が発生したのはこの50年間で初めてだとしています。 Q:ゆうちょ銀行のシステム障害との関係は?
ゆうちょ銀行は、10日朝、インターネットやスマートフォンのサービスでシステム障害が発生し、
▽インターネットバンキングの「ゆうちょダイレクト」と、
▽スマートフォン決済の「ゆうちょPay」は、その後、復旧したものの、
▽スマートフォン上で残高確認や送金を行う「ゆうちょ通帳アプリ」は11日になっても利用できない状態が続いていました。 会社によりますと、復旧作業を進めた結果、11日午後6時ごろにはこのアプリのサービスの不具合も解消し、全面的に復旧したということです。 ゆうちょ銀行は、今回の障害は社内のシステムで発生したものであり、全銀ネット=全国銀行資金決済ネットワークが運営するシステムの不具合とは関連はないとしています。そのうえで、このアプリのサービスの不具合は、サーバーの不調が原因とみて調査を進めているということです。 あわせて読みたい
金融機関どうしの資金のやり取りを担う全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」のシステムに不具合が発生し、10日朝から11の金融機関で他行宛ての振り込みができない事態となりました。復旧の見通しは立っておらず、現時点で140万件の振り込みに影響が出ているということですが、11日の取り引きについては、別の手段で対応して振り込みができるようにするとしています。 全国銀行協会によりますと、10日午前8時半ごろ、一般社団法人の全銀ネット=「全国銀行資金決済ネットワーク」が運営する通称・全銀システムに不具合が発生しているのが確認されました。 この影響で
▽三菱UFJ銀行 ▽りそな銀行 ▽埼玉りそな銀行 ▽関西みらい銀行 ▽山口銀行 ▽北九州銀行 ▽三菱UFJ信託銀行 ▽日本カストディ銀行 ▽JPモルガン・チェース銀行 ▽もみじ銀行 ▽商工組合中央金庫 の11の金融機関で他行宛ての振り込みができなくなりました。 全銀ネットによりますと、システムの復旧の見通しは立っておらず、現時点で140万件の振り込みに影響が出ているということで、このうち100万件についてはすでに別の手段で処理を行い、残りの40万件については引き続き対応を進めるとしています。
11日の取り引きについてはシステムが復旧しない場合でも別の手段で対応し、振り込みができるようにするとしています。 全銀ネットによりますと、9日までの連休中に新しい中継コンピューターに更新する作業を行っていたということで、現在、詳しい原因を調べています。 全銀ネットは「多大なるご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とコメントしています。全銀システムとは 全銀システムは全国の金融機関をネットワークで結ぶ基幹システムで、1973年に稼働を始めてから、日本の金融取引の基盤として重要な役割を果たしてきました。 金融機関の顧客の取り引きに影響を及ぼす形で不具合が発生したのは、50年間で初めてだということです。銀行を訪れた人は 名古屋市中区にある「三菱UFJ銀行 名古屋営業部」の入り口には、システム障害のため、他行宛ての振り込みができなくなっていることを知らせる紙が貼られていました。 訪れた会社員の50代の男性は「取引相手に支払いができず、迷惑をかけてしまうし、自分にも入ってこないので不便ですが、こうなった以上は仕方ないと思います」と話していました。また、70代の女性は「びっくりしました。振り込もうとしたら、『他銀行だから振り込むことができません』と言われました。早く終わらせたいのでとても困ります」と話していました。