AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

ブレアの森の選曲テープ(またはMD)

2016年05月28日 | ♪音楽総合♪
先日暗黒バーでの「13日の金曜日」というテーマで催されたDJ大会。
店のモニターには当然のごとく、映画『13日の金曜日』の映像が延々と映し出されていた。
まぁ暗黒系のメタルを好むメタラーというのは、やっぱゾンビものやスプラッター映画を好む傾向が強いというのは感じるが、私自身実はこの手のものが苦手。
基本ビビりだが、なにもゾンビやスプラッター映画が怖くてダメというのではなく、絵面がグロくてヴィジュアル的に好きじゃないのだ。
あと、“見せすぎ”なものにあまりホラーを感じないってのがある。
日本のホラー映画でも『リング』はほんとに怖くて好きだが、『呪怨』はテレビで見てそのお化け屋敷演出に「ドリフか!」と思ったもん。
やはり、H.P.ラヴクラフトの『ダンウィッチの怪』のように、“忍び寄る見えざるものの恐怖”ってのが一番怖い。チラ見せチラ見せで焦らされるあの怖さ。

今まで見たホラー映画でその究極形ともいえるのが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』なのではないか。
今回のDJ大会で私がチョイスしたスロベニア産インダストリアル系のLaibachの「God IS God」、実は映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のサントラからのナンバーだったりする。
厳格な宗教性、そしてその冷徹なデジタルサウンドは黙示録的な雰囲気を見事に醸し出している。

Laibach - God Is God



『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(以下BWP)は、新感覚ホラームービーとして2000年頃に大ブームを巻き起こしたフェイクドキュメンタリー映画。
3人の学生がメリーランド州のブレア村の「魔女伝説」のドキュメンタリーを制作するため、その村の森に入って行ってそのまま行方不明となり、後に彼らの撮影したフィルムが発見され、そのフィルムをそのまま映画として上映するという設定の画像ブレまくりのフェイク映画である。
当時務めてた会社の映画好きの同僚とこの映画を劇場まで観に行って、鑑賞後お互い絶句状態で劇場から出てきたってゆーくらいなかなかのトラウマ映画だった。
その3年後くらいにデートした女の子はこの映画を今までで観た映画のワースト3の一本に挙げていた。
ほんでBWP大ヒットのあとから、日本の心霊スポットに潜入して行方不明になりました系のしょーもない青臭い若者向けビデオがレンタル屋の棚に蔓延りだしたっけ。
まぁこの作品も別に怖いというほどの内容ではないが、人間が徐々に極限状態に追い込まれる様がリアリルに映し出されており、なんかハッキリせぬままいや~~な残尿感を残して幕を閉じる感じが尾を引きずって後に色々な形になって頭に浮かび上がってくるという気持ち悪さがある。




ドキュメント撮影という設定なので、最後エンドクレジットで名状しがたくも気色の悪い効果音は鳴るものの、劇中歌などは一切ない。
そんな映画のサントラがあるというのは奇妙な話だが、このサントラ、実は森の入り口付近に乗り捨てられていた行方不明になったメンバーが乗ってきた車のカーステの中にあったオリジナル編集テープの中に収められていた楽曲群という設定。編集者はBWPメンバーのひとりジョシュ。なのでアルバム名は『JOSH'S BLAIR WITCH MIX』。

    


こういったお遊び心のきいた関連アイテムに、当時この映画に感銘を受けた私が思わず購入せずにいられなかったのも無理はない。
が、内容はちょっと薄味のインダストリアルな楽曲が中心で、注目に値したのは上記で紹介したLaibachとMeat Beat Manifestoくらい。
ジョシュとはあまり音楽の嗜好が合わないようである。


このサントラCDの他、BWPの大ヒットを受けてさまざまな関連書も刊行され、私も2冊ほど購入している。
興味深かったのが、『ブレア・ウィッチMANIACS』という解明本。
多くの著名人がBWPに文章を寄せており、中には水木しげる先生のご息嬢、水木花子さんの評論なども掲載されている。



中でも興味を惹いたのは、やはり日本怪奇幻想文学の権威、東雅生氏の文章。
東氏はこの映画BWPの大仕掛けのフェイク感は、アメリカの作家H.P.ラヴクラフトが自身の怪奇小説の中で考案した禁断の魔道書『ネクロノミコン』のリアルなフェイクアイテムを彷彿させると説いている。
『ネクロノミコン』に関してはラヴクラフト自身があたかも実在したかのようなもっともらしい由緒書きを遺しており、ついにはコリン・ウィルソンをも巻き込んで『魔道書ネクロノミコン』と題する一冊の奇書までが編み出されるに至ったことを紹介する一方、「魔女伝説」という中世アメリカの魔女裁判という黒歴史と密接に結びついてる欧米人特有の土着思想から、ラヴクラフトの『魔女の家の夢』を紹介している。
私自身この映画に魅力を感じたのは、この「魔女伝説」という部分に由るところが大きかったかもしれない。
禁断の地に踏みいった探索者の、そこに巣食うものどもの怒りに触れて極限状態に追い込まれてんのに、自分の身に災厄が降りかかる寸前までそれを記録にとどめておこうとする当事者の解しがたいジャーナリズム精神なんかも、ラヴクラフトの小説と相通ずるものを感じる。


あと本書でおもしろかったのが、『JOSH'S BLAIR WITCH MIX』にあやかって、“あなたが魔女の森に入るとき、持参する「ブレアの森の選曲テープ」”と題し、各著名人の選曲が紹介されている企画が大変興味深い。
ボアダムスの山塚アイ、少年ナイフの山野直子、Buffalo Daughterの山本ムーグなどのミュージシャンの他、和田ラヂヲ先生なんかもこの企画に参加している。

私も当時この企画に触発され、己が編集した『AMASHIN'S BLAIR WITCH MIX』を自作し、後にMD化もしている。
MD化したのは、MDしか再生できない車に乗っていたからだ。

テープの方は紛失してしまった。



選曲は以下の通り。昔こしらえたHPにコーナー作って掲載したもの。



これを当時BWPを一緒に観に行った同僚の家で流して聴かせたらかなりひかれた思い出がある。
今編集したら、もっと違ったセレクトになるんやろうな。
みなさんも是非(今となってはテーマが古すぎるかもしれんけど)。


今日の1曲:『Bkack Milk』/ Massive Attack
コメント
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