AMASHINと戦慄

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2013年05月15日 | まったり邦楽
Coccoの2010年作の7thアルバム『エメラルド』をいまさらながら購入。

前作のあまりの駄作ぶりに失望して(その前の『ザンサイアン』もなんかイマイチ)、それ以来Coccoにはほとんど興味を示せなくなってて、『エメラルド』がリリースされた当時も、本人描くジャケから漂う露骨な沖縄臭になんかイヤなもの感じてスルーしてしまった。
もともと沖縄出身だからっつって、三線の音色や島唄歌唱など、あざとい常套手段をいたずらにぶっこんでくるアーティストが好かんくて、Coccoはそういうのとは無縁の存在としてリスペクトしていたもんだから、先行の“ニライカナイ”や、ウチナーグチ全開の“絹ずれ”を聴いて、琉球民族原理主義的なイヤ~なものを感じて、もう知らんプイって感じだった。
おまけに、本作は音楽理論トーシローのCocco本人の全面セルフプロデュースっていうんだから、期待しろという方がムリってもんだ。

Cocco / ニライカナイ 【VIDEO CLIP SHORT】


で、どんなもんかと、軽く試し聴き気分で本作に臨んだわけでありますが・・・・・・・

沖縄の方を向いてCoccoに手をついて謝りたい気持ちです。
ゴメンソーレ?ほんと、彼女をナメてました。

ひとことでいうと、ウチナーグチ×オルタナティヴ時折ヒップホップ?
アコースティックで始まる「いきなりタイトルが人の苗字なのかよ!」とつっこみたくなる冒頭の“三村エレジー”からして、Coccoのやけに生々しく響く妖艶な歌い方に、なにかしら一種異様な魔力を感じた。これは、ひょっとしたら凄い作品なのではないかと。

本作は、かつてのCoccoの相棒、根岸孝旨氏がけっこうレコーディングに携わっているからなのか、割と活動中止前に近い感触があり、全体的には『ザンサイアン』のようなバラエティに富んだ作りとなっている。
シングル曲“ニライカナイ”も改めて聴くと、うん、これは琉球國祭り節が加味された“あなたへの月”だ。
やはり根岸氏がベースを弾いている楽曲はグルーヴ感が半端なく、根岸×Cocco共作の躍動感あふれる“Stardust”では、ベースが凄まじいまでのウナリをあげている。
そして、今回はやけに打ち込みのバックサウンドが目立つなと思ったら、RYUKYUDISKOという沖縄出身のクラブ・テクノユニットが数曲関与している。
エレポップなセンス爆発の“のばら”の中間でぶっ込まれる、Coccoがマイク・ミューア、えーとわかりやすく例えると、スキャットマン・ジョンばりに早口でまくしたてる「いろは歌」には度肝抜かれた。これをカラオケで歌える人っているのかなぁ?

で、本作のハイライトといえば、やはり“十三夜”になるのではないか。出だしこそいきなり黒人ラッパーがライムでもまくしたてるのかという雰囲気だが、Coccoのあの恨み節が再び戻ってきた渾身の1曲に仕上がっている。
とにかく雨乞いのような歌詞が強烈である。ラストの「てぃーち たーち みーち・・・・」の囁きなんて、“カウントダウン”の再来かと思た。彼女はやはりいまだに煩悶を抱え、何かと闘っているのだ。
Coccoの吐き出すウチナーグチは、まるで呪詛のような始原的な神秘性を内包しており、ヘタなブラックメタルバンドのサビの呪文なんかより凄味があって(なんせこっちはホンモノだからな)、言霊となってズシリと脳内に響いてくる。彼女はやはりユタの素養を持っているのかもしれない。
一方、ストリングスをフンダンに取り入れた“カラハーイ”では、沖縄の大地を包み込むような、Coccoのなんともしなやかで伸びやかなウチナーグチ節が爽快でたまらない。
う~ん、Coccoの凄まじいまでの琉球魂を確かに感じた。感じてしまった。

あと、小島麻由美の御株を奪いかねないメランコリックなワルツナンバー“Light Up”、エーデルワイス風のマーチソング“クロッカス”、おそらくライブ中の野放しタイムの時にバンドで作ったのであろうモンゴル800風の“あたらしいうた”など、いずれも秀逸曲で、音楽家Coccoとしての振り幅の広さと技倆を十二分に見せつけられた感じだ。
そして、彼女の詩的センスの相も変わらぬ秀逸さ。文学的であり、芸術的であり、民間伝承的であり、それでいてあまりにも洗練されている。
ピュアで感受性が強いからこそ愛憎もつれあう、生々しく痛烈かつ美しすぎる表現力。言葉遊びも利いていて実に巧みである。

いや~こんな傑作を自分で作ってしまうとは・・・・・・
Coccoにかなうシンガーソングライターって、もう日本にはいねぇんじゃねぇかと。



今日の1曲:『十三夜』/ Cocco

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