AMASHINと戦慄

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ナナナ

2020年02月09日 | しねしねシネマ
岩井俊二監督最新作『ラストレター』を鑑賞。


封切前に、たまたまCMで流れたこの曲に、「誰これ?」ってなったのがキッカケ。



ググると、もうすぐ公開される岩井俊二監督の最新作の主題歌だとか。
しかも楽曲を手掛けたのが小林武史氏ときた。

またしてもリリイ・シュシュの仕掛け人コンビにひっかけられた塩梅である。
しかもリリイ・シュシュとは異なり、今作にはこの主題歌を歌っている森七菜なる新人タレント?が役者として出ているというので、興味をそそられずにはいられなかった。
 
いつもならちょっと電車賃かけないと観れない岩井監督映画だが、今回のは近所の田舎のイオンのシネコンでもやっていたのは珍しい。


松たか子、広瀬すず、 福山雅治、神木隆之介、豊川悦司、中山美穂と、錚々たる面子が揃っていて、なかなか金がかかってそうだが、その割にはそれほど話題にはなっていなかったような。
私自身、この手の役者が出ているような邦画にはあまり縁がないのだが、岩井作品、良さ気な主題歌というだけで観る動機としては十分だった(単純やなぁ)。


『リリイ・シュシュのすべて』の主人公(というか監督が撮りたかったもの)は“音楽”、『リップヴァンウィンクルの花嫁』の主人公は“Coccoそのもの”、というのが個人的な解釈であるが、今回『ラストレター』の主人公はというと、岩井監督の生まれ故郷であるという“宮城”であったかと。


まずは、宮城県の清涼感あふれる大自然がスクリーン一面に広がる壮大で美しい映像が観る者を引き込む。
そして場面は一般家庭のよくある葬儀風景という、まずは主要人物の血縁関係者に不幸があったという設定から物語が始まる。
広瀬すずが出演してる映像作品を観るのは今回が初めてだったと思うが、ティーンエイジの喪服である制服姿がものすごくハマっていていい塩梅。

とまぁ出だしは上々で、けっこう期待がもてた。


ただ、そっからの物語の設定、展開がビックリするほどデタラメ感甚だしくてイライラした。
まぁ岩井作品って、イライラするシーンてのは付きものみたいなもんなんだけど、今回のはヒドかった。

冒頭のは誰の葬儀だったかというと、広瀬すず演じる鮎美の母、遠野美咲だったわけだが、その美咲の妹(つまり鮎美の叔母)が松たか子演じる裕理。
この死んだ美咲は娘の鮎美に瓜二つという設定で、遺影に写ってる写真も広瀬すずにほんのり化粧した姿。
ただ、この遺影の写真は若い時のもので、最近の写真は全然残ってないという設定。



で、その美咲の高校時代の同窓会に妹の裕美が出席することになって、姉の訃報を伝えに行くという理由だったんだが(そんなもん出欠のハガキか電話で言えよ)、会場につくやいなや、姉の同級生たちに姉と見間違われ、取り囲まれて「久しぶりぃぃ~~」なんて囃されて(どうやら学年のアイドル的存在だったらしい)、引っ込みがきかなくなって、そのまま美咲として振る舞うという。

ええっ!!??どう見ても、松たか子と広瀬すずの顔を見間違わへんやろ!!
もうこの設定が謎過ぎて意味がわからず、ちょっと物語についていくのが困難になった。

そしてこの同窓会で、福山演じるイケメン小説家が現る。
乙坂鏡史郎という人物で、名前もなんかイケメン。
彼は高校時代に美咲と恋仲にあった人物で、どうやら彼も裕美のことを姉の美咲と勘違いして話しかけてくる。

ちなみに、回想シーンで高校時代の裕美を演じるのが、森七菜。
この時点で広瀬すずと全然似ていない。


で、森七菜が30年後に松たか子になって、広瀬すずと見間違われる。


もう混乱するしかないやろ!!

後に裕美が「姉の振りをしてました」と打ち明けた時に、イケメン作家が「最初から気付いていたよ」って告げたときは、「そらそやろ!!」と大声でつっこみそうになるのをなんとか心の内に押しとどめた。

つかほかに妹役いただろ。例えば広瀬アリスとか。
まぁ姉と妹が逆になってしまって、それはそれでまたややこしいか・・・・


『式日』のお返しとばかりに出演しはったんやろうけど、庵野監督の要素もあんま必要とは感じなかった。
上(トップ写真)の垂れ幕の一枠に加える程の演技もしてなかったし、それほど重要キャラというワケでもなかった。
裕美の旦那役で出演してはって(しかも職業売れっ子イラストレーター?)、妻とイケメン作家とのSNSのやり取りを発見してちょっとした修羅場があるのだが、そこはドロドロとした展開には発展せずコミカルに描かれてて、基本ほのぼのとした家庭風景が映し出されてるのであるが、そこがまた庵野氏の当たり障りのない演技も手伝って観ててイライラした。

そこからなんやかんやあって、ややこしい手紙のやりとりが始まるって展開なんだが、ここはなんか退屈だった。


高校時代の美咲と裕美と鏡史郎との三角関係の感じから、本作はわりと『花とアリス』に似た感覚の作品であったかと。
青春時代の淡い恋の記憶とほんのりとした切なさ、そしてなんとなくいい話的な。

確かに、監督の宮城へのノスタルジックな思い入れの強さもヒシヒシと伝わってくるし、やっぱそういう風景を使って場面を切り取るのが非常にうまい。
そのロケーションの良さもあってか、ここぞという場面でキッチリ泣かされるんだが、広瀬すずの反則的なかわいらしさに、この泣かんとしゃーないやんみたいなありふれた物語設定は、岩井作品としてはフェアじゃないなと思った。

エンドロールで流れる主題歌マジックもさして効果なく、その辺のシネコンでやってる時点で気付くべきだったが、私のあまり好きじゃない方の岩井監督らしい薄味の作品だった。
そん中でも、豊川悦司の毒マムシ的なやさぐれ男の役とセリフは強烈だったし、みぽりんのサバサバした下町の水商売女役もこの映画にはいいスパイスだった。

まぁ人件費はめちゃめちゃかかってそうだが、この内容なら宮城復興キャンペーンのボランティア作品として500円くらいでやってほしかったかと。



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