「確かに、何だか見通しが良くなったような気がする・・・」
グレン・グールドがその死の前年に録音したバッハのゴールドベルク変奏曲を聴きながら、そう思った。
「アリア」から始まり、第5変奏曲まで聴いて、一旦曲は停止された。
「では、無い状態で同じ曲を聴いてみましょう・・・」と、グールドさんは、CDプレーヤーの電源ケーブルに設置されていた『CNS-7000SZ』を取り外した。
そして、聴いた。
「確かに違いますね・・・ケーブルスタビライザーがあった方が空間はすっきりとして、より広がったような感じがします・・・クラシックを聴く方には良いと思いました。」
「私もあった方が好きなんですね・・・聴くジャンルや音の好みによっては、無い方が良いという方もいるかと思いますが・・・」
そうグールドさんは話された。
さらにCDが1枚、NAGARA CDCに新たにセットされた。そして、『CNS-7000SZ』は、再度CDプレーヤーの電源ケーブルに装着された。
CDは、バーバラ・ボニーのソプラノによるシュトラウスの歌曲が収録されたものであった。
右脳では天国の空気を思わせるようなバーバラ・ボニーのソプラノに耳を傾けながら、左脳では「これは他のケーブルに使うとどうなるのであろう・・・電源ケーブル以外にも使えそうだし・・・興味深いものだ・・・」と思っていた。
3曲の歌曲を聴き終えた時、グールドさんに、「声の余韻やピアノの残響音がよりくっきりと聴こえますね・・・これは、他のケーブルに使ってみても、良さそうですね・・・?」と話しかけた。
「いろいろ試してみたのですが、今のところ電源ケーブルが一番印象が良かったです。プリアンプやパワーアンプの電源ケーブルにも試して同様の効果があったのですが、個人的にはCDプレーヤーの電源ケーブルが一番効く感じでした・・・」
「そうですか・・・価格は決して安いものではないですが、効果は確かにありそうですね・・・でも、それに気を良くして全ての電源ケーブルに使いたくなると、出費がちょっと大変ですね・・・」
「そうなんですよ・・・できればプリアンプとパワーアンプの電源ケーブルにも使いたいと思っているのですが、今のところ思いとどまっています・・・」
その後シベリウスのヴァオリン協奏曲や、マーラーの交響曲第5番などを編成の大きなものも聴かせていただいた。
やはり空間表現力が上がっていると感じられた。
「これ、1個欲しいな・・・我が家でも試してみたい・・・」帰る頃には、私も感染していた。