AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

6667:時間旅行

2024年06月02日 | ノンジャンル

 全く異なった二つの世界を同時に手に入れるということは、とても贅沢なことのように思える。

 それぞれの世界が、独自の魅力に輝き、どちらか一方のみを選択できないという状況は、マニア冥利に尽きるのかもしれない。

 今日、ハンコックさんのリスニングルームで二つのスピーカーが奏でる二つの世界を味わいながら、そんなことを思っていた。

 二つの世界の一つは、最近ハンコックさんが入手されたJBL C36 Viscountが奏でる世界である。JBL C36 Viscountは1952年に発売された。

 1960年代の後半ごろまで製造されていたようで、時代に応じて使用されるユニットも組みわせも変わっていったようである。

 ハンコックさんが入手されたものは、D130Aと175DLHの組合せであったが、ネットワークを補修する必要があるため、現在はその少し前にユニットのみを入手されていたD130に換装して、フルレンジスピーカーとして使われている。

  JBL C36 Viscountを駆動するパワーアンプはFirst WattのF6である。プリアンプはMark LevinsonのML1。このシステムでまずはデジタルソースを聴いた。

 ハンコックさんはデジタルに関しては、現在CDプレーヤは使わずに、SDカードプレーヤーを使用されている。手持ちのCDをパソコンでリッピングしてSDカードにデーターを移す。SDカード1枚でCDが20枚程度入るようである。とてもコンパクトなSDカードプレーヤーからデジタル信号を取り出して、それをOさんが製作されたDAコンバーターに送り込むという構成である。

 JBL C36 Viscountから放たれた音はとても爽やかなものであった。帯域は決して欲張っていない。音の解像度や空間表現という点においても現代型のスピーカーとは異なる世界であるが、独時の心地よさがある。

 腕組みして目を閉じて聴くのではなく、ソファに足を組んでゆったりと座り、コーヒーを飲みながら、あるいはビールを片手に聴くと、ほんとに心地よく聴ける・・・そういった良い意味で肩に力の入っていない音の質感である。

 ソースをアナログに変えても、その質感は共通している。味わいはより深くなるが、穏やかに音楽に浸れる。けして微細な音を耳で拾おうとするような変な頑張りはする気になれない雰囲気は、きっとこのスピーカーが製造された1950年代のアメリカの一般家庭のリビングルームの雰囲気そのもののような気がした。

 OFF会の後半は、ハンコックさんが長年使われていきたWison Audio Watt3/Puppy2の世界である。

 JBL C36 Viscountは部屋の後方隅に片づけられ、パワーアンプはFirst WattからSPECTRALに切り替わった。従前のハンコックさんのリスニングルームの景色に戻った。

 そして、こちらはアナログから聴かせてもらった。テナーサックス奏者JR Monteroseの代表作である「The Message」からハンコックさんが選曲された1曲がこの部屋に流れ出した時、「世界は変わった・・・」と強く感じられた。

 広々としたサウンドステージが広がり、独時の快感を誘った。

 「全然違いますね・・・」という一言が漏れ出た。そしてこちらの世界はやはりこちらの世界で、独自の魅力に溢れた世界であった。

 それはソースがデジタルに変わっても同じで、 Watt3/Puppy2は広々とした世界をリスニングルーム一杯に放ってくれる。

 「これはこれで完成された世界がありますね・・・」

 二つの全く異なった世界を、その時の気分に応じて行ったり来たりできるのは、とても贅沢なことである。ハンコックさんは「時間旅行」の手段を、期せずして手に入れたのかもしれない。

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