おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

山のごはん

2024-06-18 10:11:51 | 日記
 ネットでカヌーイスト野田さんの本を購入した時に、一緒にイラストレーターの沢野ひとしさんの「山のごはん」も注文しておいた。沢野さんの本は一度も読んだことがなかったが、飄々としたイラストは見たことがあったし、何より本のタイトルに興味をそそられた。「山のごはん」である。山小屋で食べた思い出なのか、それともキャンプで食べた思い出なのか、ハイキングでの食事なのか、いろいろと想像が広がるのだ。

 で、野田さんの本を読み終わったので、早速沢野さんの本を読んでいる。本の裏表紙に書いてある宣伝文句には「山行記で描かれるさりげない食事の風景は読者の食欲を刺激し、山に誘う。草木の香り、風の肌触り、美しい山容、親しい仲間との会話・・・取りまくすべてが特別な調味料となり、山で食べるものは格別な味がする」とある。これだけで、なんだか幸福感が伝染してくるのだ。

 本文中、こんな文章があり立ち止まった。「ここしばらくすっかり山から遠ざかっていた。誰でもそうだと思うのだが、山から急速に遠ざかる時期があるものだ。若い頃に熱に浮かされたごとく山に通った分、会社勤めや結婚生活が始まると、糸の切れた凧のごとくプッツリと山から離れてしまう人が多い。私にしても同じであった。(中略)それでも何かの拍子に、夏の入道雲や列車から降りるヘルメットを背にしたクライマーを見ると、山への思いで心が揺れ動くのであった」

 僕の山登りの期間は10年にも満たない。以前飼っていた黒犬のトトの散歩が次第に長く遠くに出かけるようになり、最後は山のてっぺんまで歩くようになったのがきっかけだ。それからは毎週のようにどこかの山へ出かけては、一日中歩き回っていた。九州のめぼしい山を登ったので、旅行のついでに北海道の羊蹄山、青森の岩木山、山形の月山なども登った。

 福島では一番近い安達太良山には10回は通っているし、磐梯山も3回ほど登った。が、トトが高齢になり、山歩きが大変になった頃、ツキノワグマと鉢合わせしてからは、パッタリと本格的に山へは行かなくなった。1年ほどでトトが死に、保護センターから今飼っているテオを引き取ると、山歩きどころか人と一緒に行動するのも嫌がるような臆病な犬だったから、とても山どころではなくなったのである。

 その後、子猫のアンを山から拾って帰ってからは、2匹を置いて長時間家を留守にするのが難しくなり、山登りどころか旅行も諦めている。タミちゃんはひとりで行ってきたらと言うが、やはりとてもそんな気分にはなれない。動物を飼うというのは、覚悟のいることだと最初からわかっていることなのだから。

 そんなことなので、「それでも何かの拍子に、夏の入道雲や列車から降りるヘルメットを背にしたクライマーを見ると、山への思いで心が揺れ動くのであった」という沢野さんの気持ちはよくわかるのである。そんな時沢野さんは、「そんな日は本屋に飛びこみ、本棚から山岳書を手にとり、登攀記録を読みふけった」という。

 山の魅力を少しでも知ることになれば、山登りの記録を読むだけでも、結構心満たされるのである。ただし同時にモゾモゾとお尻の下の虫が疼き始めるのだが。

コメント
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