おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

なぜ使えないのか

2024-06-24 11:56:18 | 日記
 若い頃、アルバイト情報で使用説明書のライターを募集というので面接に行ったことがある。説明を聞くと、英語の説明書を日本語に翻訳するという。じゃあ僕には無理だなと思ったが、中学生程度の英語ですよなんて言われる。こちとら中学校程度の英語だって怪しんだぞ。

 面接の後、軽い筆記テストをやると言われ、出された問題がフローチャートを書くというものだった。コンピュータのプログラムを書くのには必須なフローチャート図も、わからない人間にはまるっきりお手上げだ。どうやらバイトで書く使用説明書は、コンピュータに関するものだということがわかっただけで、その後採用通知は来なかった。

 どうしてこういうことを思い出したかというと、先日近所の人と話をしていて、スマホの機能が多すぎて使えないという話題になった。「もっと機能を絞って年寄りに使えるようにはならないのか」と言う。「そんなの簡単ですよ。昔あったワープロだって、あれはパソコンの文章を書く機能に特化した製品ですからね」。

 ただ、そんな製品が世に出にくいのは、利益率が低いからである。例えば自動車を見ても、僕が欲しいのは最低限度の装備のついた車だ。衝突回避機能やら車線はみだし防止機能なんてのは、つけたい人がオプションでつければいい。その分車体価格を安くして欲しいが、メーカーは儲けが少ないのでとにかく高機能を謳いたがるのである。

 世界的にスマホが普及している。モンゴルの大平原だってアラスカの僻地だって、みんなスマホを持っている。スマホが使えないなんて言わない。なぜなら、広大な国暮らす人にとって、買った後に説明を受けなければ使えない物なんて、不便極まりないからだ。日本だったらスマホがうまく使えないからと、ショップに聞きに行くが、自家用飛行機で買い物に行くアラスカで、そんなことを毎回やってられない。だから、メーカーはいかに誰でも簡単に使えるかに注力する。それが売れるか売れないかの生命線なのだから。

 アルバイトで使用説明書のライターの面接に僕は出かけたが、アメリカでは、マニュアルには使える用語や使用できる単語の数も制限されているから、専門のマニュアルライターがいて、高額の報酬を受け取っている。売り上げに直結するから当然だ。それに引き換え日本では、製品を開発するとほとんどの場合技術者が開発の延長線上で書くことが多い。そのため専門用語のオンパレードとなり、消費者がわからなくても、「そんな基本的なことも知らないのか」という態度だ。

 年寄りにはスマホが難しいだとか、デジタルについて行けないとか、ITだとかAIだとかがわからないという話を聞くが、そもそもITの活用で一番メリットがあると言われていたのが、僻地に住む人、出歩くのが困難な老人だと言われていたのである。
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