土曜日にふくらはぎを攣ってから、ちっとも痛みが取れない。足を攣っても、普通は半日も経てば痛みが引くものだが、今回は軽く肉離れでもしたんじゃないかと思う。二日経っても、ちょっと力を入れるだけで攣りそうになるし、歩いていても踏ん張るのがちょっと怖いくらいだ。
昨日は休日だったにもかかわらず、そんなことでランニングは中止した。代わりに夕方、早い時間にテオを連れ、長い散歩に出ることにした。
まだまだ日は高いものの、涼しい風が吹き気持ちがいい。真夏はアスファルトが灼けるため、テオの熱中症の心配をしなければならないが、これくらい涼しくなるともう大丈夫だろう。
ふくらはぎが痛いので、のんびり歩いて小学校跡地に差し掛かる。ここは早朝、ケンくんと一緒にボール遊びをする場所だ。午前中は年配の人たちが大挙して訪れ、熱心にグラウンドゴルフに興じているが、午後になるとひっそりとする。
お寺を過ぎると、ここで民家はなくなり、里山の中へと入って行く。
丘のてっぺんまで来ると、郡山市街が一望でき、その向こうに栃木県の那須連山を望むことができる。那須の茶臼山にはうっすらと雲がかかり、日本画のような雰囲気だ。
道端の蔓に紫色の花が咲いている。これがクズの花である。
あたり一面、野を覆っているのは迷惑な外来種のアレチウリ。一見するとクズとよく似ているが、瓜科の植物なので、キュウリの花みたいな黄色い花が咲く。
田んぼのための溜め池に、ガマの穂が繁殖している。もう少しするとソーセージみたいな実がほぐれて、白い綿毛が次々に塊で出てくる。
それにしても、空はすっかり秋空なのだ。子供の頃は、8月の終わりが1年で一番憂鬱になっていた。長かった休みが終わり、学校が始まってしまうからである。おまけに夏休みの宿題はちっともやっていないし、これからどう頑張っても、決して終わらないのはわかっているので、ただひたすら気分は沈むばかりだったのだ。
こんなに涼しいのなら、ツクツクボーシが鳴いていてもおかしくないなと思っていたら、雑木林の中から鳴き声が聞こえて来た。ツクツクボーシが鳴けば、いよいよ夏も終わってしまうのである。
里山を抜け、再び田畑や集落のある場所まで戻ってくる。この緑の景色も、秋が深まるに従って黄金色へと変化して行く。
飛行機雲が夕暮れの迫った空に一直線に伸びて行く。よくよく考えれば、あの特徴のある雲が一番人間の技術力や文明を表しているのだから、なんだか不思議な気がするのだ、などと空を見上げて思うアベさんなのであった。