ドイツはドルトムントが一世を風靡した標記の戦法が分からなければ、ハリルの言う「モダンサッカー」は理解できないと思う。そういうサッカー戦術に弱い人に限って、こんなことを言うのが常だと、僕は見てきた。
「サッカーも結局、個人能力!」
これは違うのである。こんな考え方では、理解できない現象が世界サッカー史には常に生まれているのだから。何よりも、高価な選手を買えない弱小チームの世界的急台頭。そこには必ず新たな戦術があると言えて、その戦法が世界サッカーの隅々までを変えてきたという歴史さえ存在するのである。
さて、ゲーゲンプレスを理解するためには、1990年前後に世界を席巻したACミランの「ゾーン・プレス」戦術を理解しなければならない。サッカー選手としてはプロ経験がないアリゴ・サッキ監督がこれを編み出して台頭した実績によってミランの監督に登り詰め、当時のチャンピオンズリーグを2連覇した戦法である。
① DFラインを上げ、FWラインとの縦間隔を詰めることによって、身方選手をあるゾーンに密集させる。これは、そのゾーンにある敵ボールを奪いやすくする目的だ。その上で、
② 敵ボール保持者に最も近い選手がその選手、ボールに突っかけて、他の身方選手はそれぞれ最も近くの敵選手がボールを受けられないように「一斉に」パス先を塞ぐ。こういうやり方で、敵ボールを奪うこと、これがこの戦術の主要目的である。ミランは、この方法を熟練して、いつでも敵ボールを奪えるようになり、ボールキープ率で敵を圧倒したチームである。
③ こうして、敵は、身方ゴールに届く前にボールを奪われるばかり。また、ボールキープ率で敵を圧倒するというのは、敵の攻撃時間が極端に短いということ。モウリーニョのようにカウンター戦術で世界有数の監督でなければ、これを破って得点とはなかなかできなくなる理屈である。
④ この戦術の弱点は、敵の抜けだし得点。身方DFラインとゴールキーパーとが、よほどオフサイドトラップを訓練していなければならないのである。アリゴサッキはこの点を徹底していた。なおこのサッキは、ブラジル大会のザック・ジャパンを、自分のに近い作戦と見て、こういう発言をしている。
「ザック作戦は、一人でも乱す人がいれば、破綻する」
さて、ゲーゲンプレスは、これに何を付け加えたか。
何よりも先ず、このボール奪取戦術を得点法に転化させた。このゾーン・プレスを高い位置に設定することによって、「敵ボールになった瞬間にこれを奪って、即得点」という得点法に。戦術発明者ユルゲン・クロップ監督はこれをこう解説している。
「攻め入られている敵がボールを奪って前掛かりになった時こそ、ゲーム中最も大きな身方の得点チャンスなのだ。その時に身方が逆に一斉に前に詰めて『ゾーン・プレス』を活用して全力で敵ボールを奪いに行く(という時間帯を作る)」
敵がボールを奪って守備態勢から攻撃態勢へと換わり、身方は多く前に詰めている時。ここでボールが奪えれば、1本のパスとか、敵ゴール前の身方数的優位を生かしたショートパスとかで、得点と。
その後の現代サッカーで「守備から攻撃への、あるいは、攻撃から守備への素速い転換」というのが死活問題になり始めたのは、以上全てを踏まえてのことである。
なお、この戦術が威力を発揮すれば、これのいろんな応用が生まれるのも理の当然。そういう世の風潮から、こんなことも起こった。従来の守備型(相手への対策型)名監督が、以前ほどにはしばらく勝てなくなったのである。レアル、チェルシー時代のモウリーニョ、ファン・ハール、カペッロ、フース・フィディング、ブレンダン・ロジャース、アンドレ・ビラスポアスなど。
「サッカーも結局、個人能力!」
これは違うのである。こんな考え方では、理解できない現象が世界サッカー史には常に生まれているのだから。何よりも、高価な選手を買えない弱小チームの世界的急台頭。そこには必ず新たな戦術があると言えて、その戦法が世界サッカーの隅々までを変えてきたという歴史さえ存在するのである。
さて、ゲーゲンプレスを理解するためには、1990年前後に世界を席巻したACミランの「ゾーン・プレス」戦術を理解しなければならない。サッカー選手としてはプロ経験がないアリゴ・サッキ監督がこれを編み出して台頭した実績によってミランの監督に登り詰め、当時のチャンピオンズリーグを2連覇した戦法である。
① DFラインを上げ、FWラインとの縦間隔を詰めることによって、身方選手をあるゾーンに密集させる。これは、そのゾーンにある敵ボールを奪いやすくする目的だ。その上で、
② 敵ボール保持者に最も近い選手がその選手、ボールに突っかけて、他の身方選手はそれぞれ最も近くの敵選手がボールを受けられないように「一斉に」パス先を塞ぐ。こういうやり方で、敵ボールを奪うこと、これがこの戦術の主要目的である。ミランは、この方法を熟練して、いつでも敵ボールを奪えるようになり、ボールキープ率で敵を圧倒したチームである。
③ こうして、敵は、身方ゴールに届く前にボールを奪われるばかり。また、ボールキープ率で敵を圧倒するというのは、敵の攻撃時間が極端に短いということ。モウリーニョのようにカウンター戦術で世界有数の監督でなければ、これを破って得点とはなかなかできなくなる理屈である。
④ この戦術の弱点は、敵の抜けだし得点。身方DFラインとゴールキーパーとが、よほどオフサイドトラップを訓練していなければならないのである。アリゴサッキはこの点を徹底していた。なおこのサッキは、ブラジル大会のザック・ジャパンを、自分のに近い作戦と見て、こういう発言をしている。
「ザック作戦は、一人でも乱す人がいれば、破綻する」
さて、ゲーゲンプレスは、これに何を付け加えたか。
何よりも先ず、このボール奪取戦術を得点法に転化させた。このゾーン・プレスを高い位置に設定することによって、「敵ボールになった瞬間にこれを奪って、即得点」という得点法に。戦術発明者ユルゲン・クロップ監督はこれをこう解説している。
「攻め入られている敵がボールを奪って前掛かりになった時こそ、ゲーム中最も大きな身方の得点チャンスなのだ。その時に身方が逆に一斉に前に詰めて『ゾーン・プレス』を活用して全力で敵ボールを奪いに行く(という時間帯を作る)」
敵がボールを奪って守備態勢から攻撃態勢へと換わり、身方は多く前に詰めている時。ここでボールが奪えれば、1本のパスとか、敵ゴール前の身方数的優位を生かしたショートパスとかで、得点と。
その後の現代サッカーで「守備から攻撃への、あるいは、攻撃から守備への素速い転換」というのが死活問題になり始めたのは、以上全てを踏まえてのことである。
なお、この戦術が威力を発揮すれば、これのいろんな応用が生まれるのも理の当然。そういう世の風潮から、こんなことも起こった。従来の守備型(相手への対策型)名監督が、以前ほどにはしばらく勝てなくなったのである。レアル、チェルシー時代のモウリーニョ、ファン・ハール、カペッロ、フース・フィディング、ブレンダン・ロジャース、アンドレ・ビラスポアスなど。