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随筆紹介 「自 信」    文科系

2017年12月26日 11時47分43秒 | 文芸作品
  随筆 「自 信」  S・Yさんの作品です


 いつだったか雑誌で読んだのだが、世界的にみて日本人は自分に自信がないそうだ。
 欧米や韓国などの自己満足度は80パーセント以上あるのに対し、日本人は45パーセントぐらいだとか。私もコンプレックスが強く、どうしたら自信を持てるのだろうかと、若いときからの悩みの種だった。
 だからだろうか、人の意見に左右されやすく、自己主張がへただ。自分の人生なのに他人の顔色みて周りに合わせて生きるなんて、ほんとに自分を生きているのだろうか。いまだにそう思うときがある。

 しかし、夫は違う。なにかにつけて迷いがない。どこからその自信はきているのだろう? どうして白黒はっきり断定がつけられるのか。いつも不思議だった。
 結婚した当初は(再婚だったので)上手くいかないことが多く、身内や世間からの厳しい目や声が私は怖くてしかたがなかった。加えて夫には蓄えというものがなかった。小さな子どもたち3人を育てていかなければならない。もし病気や怪我をしたら? 教育費は? 家と車のローンの支払いは? 怖い姑の対処法は? 不安材料いっぱいであった。
 「もしも……」「……だったら」なんて、考えたってしかたがない。そうなったらなったでその時に考えればいい、というのが夫の持論であった。「そうなった時では遅いのよ。なんともならなかったらどうするの?」常に私と対立した。
 性分だからしかたがないのだろうが、どうも私は物事を悪いほうに考えてしまう傾向がある。結果、取り越し苦労をしてストレスを抱え込む。夫は逆で、良いほうに考える性質らしく、「大丈夫だ」「たいしたことない」が口癖だ。

 でも、それに私はずいぶんと救われた。子育てや近所付き合い、親戚付き合いに思い悩んだとき、夫の能天気な「大丈夫だ。なんとかなる」で楽になった。病気がちで落ち込んでいても、「大丈夫だ。たいしたことない」その言葉で緊張が解けたりしたものだ。
 最近知ったのだが自分に対しての評価が低い、つまり自信がない人は、いざという時に行動できなくなってしまうらしい。胸に手を当てるまでもなく、思い当たることは多い。 
 なにか行動を起こすとき私は立ち止まってしまう。石橋を叩いて渡らなかったりするぐらいだから。夫と一緒になる前、躊躇して結婚を決断できずにいる私に「いくら考えても結婚はしてみんことにはわからん。えいっ! と飛び込むしかないな。たぶん大丈夫だ」そう言われて私は飛んだ。私にとっては一世一代の賭けだった。
 
 だが今にして思うと、夫の自信はなんら根拠のない自信だった。要は物事をあまり深く考えるタイプの人ではないのだ。人の目も気にしない。でも、それが私には良かったのかもしれない。彼にしても、幼い子どもたちを私に託すのだから多少の不安もあったろうに。
 子どもたちは餌付けが成功したのか私に懐いた。夫婦喧嘩になって家出をしたときも、みな私について来た。あれから30余年、未だに子どもたちは全面的に私の味方だ。上手く彼らに利用されている気もするのだが、まあそれなりに私の自信に繋がっているのかも。
コメント (2)
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