先回の続き・・・
「耐震等級を上げるためには、吹抜けやスキップフロア、大きな窓などが設けられなくなるし、1階は壁だらけになって開放的にできない。」
いいえ
吹抜けやスキップフロア、大きな窓などがあっても耐震性能はちゃんと確保できます。
「できない」と言うのは、元々その間取りが構造を考慮して作られたプランではないからなのです。
建築物は人命を守るために、まず「構造」ありきで設計する必要があります。
構造をよく理解した建築士(全ての建築士と言えない所が悲しいですが)がプランを考えれば、無理なく高い耐震性を確保できます。
例えば、この花園南の住宅は長期優良住宅ですので耐震等級は2(基準法の1.25倍の強度)のクリアで良いのですが、
構造的にとてもバランスが良い間取りなので、単純に耐力面材を留める釘のピッチをコントロールするだけで、耐震等級が2→3(基準法の1.5倍の強度)まで高められています。
開放感を損なわないまま 費用負担もほとんど増えずに より安全な住まいにグレードアップされているのです。
耐震等級1で十分。と考える建築士も珍しくはありません。「建築基準法をキチンとクリアしているから」と。それも分からなくもありません。
実際には基準法さえクリアしていない(そもそも構造計算されていない)建物が建築されています。
このたびの熊本の地震でも、一部の比較的新しい住宅が倒壊している様です。
その建築基準法というのも あくまで「最低限の基準」なのです。
もしも、豪華な床材や高級家具にかける予算があるのなら、その前にまず躯体にシッカリと予算をかける事をおすすめします。(先ほどの例の様に、実際にはそんなに費用はかからないはずですが)
耐震等級1(建築基準法)は、
ザックリというと・・・ 震度6強程度までは倒壊しない(しかし損傷はする)程度の強さを想定しています。
すると・・・ この「震度6強程度まで」レベルでは心配だけど その1.25倍強い等級2なら安心かな でも、1.5倍の等級3はちょっと過剰だな、そこまでは・・・
という意見も出てきます。
でも、でもですよ! 実は・・・
構造計算では、新築時の建築物に、一回の地震が襲った場合。しか考慮して計算していないんです。
築年数が経過していたり、今回の熊本の様にたくさんの地震が繰り返し襲うケースは考慮されていないのです
この場合、ある程度耐震性が高いとされた建物に、大きな被害が出ても何ら不思議ではないのです。
ですから、とにかく耐震性能は可能な範囲でできるだけ強くしておく必要があるんです。
もちろん、コストや快適性、エコなど、考慮する事はたくさんありますので、バランスも大切ですが・・・
残念ながら
大きな地震があるたびにたくさんの方が亡くなっているのです。
建築基準法第一条「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」どころか、
私達が作った建築物が凶器になってしまっているのです。
建築士は人命をキチンと守れる建築物を設計する責務がある事を、ここでもう一度肝に銘じなくてななりません。
想定外の自然災害だったから仕方がない? いいえ 想定外な事は普通に起こります。
リスクを少しでも減らすために、後で後悔しないために、耐震性能をできる限り高めた住まいを提案していきたいと思います。
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