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一級建築士事務所 サトウ工務店

自然素材を使い省エネと快適性をデザインする 新潟の家

構面のつながりと、スジカイの座屈

2016年12月08日 | 栄町の住宅
栄町の住宅です。

瑕疵担保責任保険と、地域型住宅グリーン化事業のグループ内による構造躯体の検査です。
2機関によるダブルチェックです



瑕疵担保責任保険の検査は、提出図面と照し合せて間違えがないかチェック。
しかし、図面で表現していない部分や、そもそもその設計自体に対しての疑義はナシ

あやし~ベタ基礎などが、未だにスル~されているのもこのため

対して、弊社が加入している地域型住宅グリーン化事業のグループの事務局はM's構造設計さん。
つまり、こっちの検査は構造設計そのものにより深い所までのチェックが入ります

一つ例としては
非常に重要だが、図面には一般的に表記されない「小屋部分」の鉛直構面。

1階の構造図には、「1階の耐力壁」(鉛直構面)
2階の構造図には、「2階の耐力壁」(鉛直構面)と「2階床構面」(水平構面)
小屋の構造図には、「火打ちなど屋根構面」(水平構面)
※小屋の鉛直構面に関する記載はないことがほとんど。

これら全ての「面」が連続して初めて構造として成り立つのですが
実際には、現場ではこの「面」がつながっていないケースが結構多いとの事。

この現場では、


2階にスジカイがあり、その上段のX印には合板で耐力壁ができています
(スジカイでも可ですが、実際には金物が対応できないケースが多いです)
これは、2階床構面と屋根構面をちゃんと耐力壁(鉛直構面)でつながっています。合格

しかし多いのは、耐力壁上段のX印の部分には何もなく、開口になっているケースだそうです。
スキップフロアによる床の段差や、1.2階の間くずれプランで構造が成り立たないのも
この構面の力の流れを意識したプランニングができていないからです。

木造では、鉛直の柱と水平の梁などの「軸」さえあれば、一応カタチにはなります。
しかし、耐震性を持たせるには、「面」(スジカイも含む)で構成しなくてはなりません。

床面、壁面、屋根面、といった面どうしが、シッカリと力を伝えられるように
プランニングすれば、必然的に耐震性能は高くなります。

たびたび言いますが、弊社では耐震等級はMAXの「3」が標準です。
(ここは思いっきり自慢


また、基本的なスジカイについても

一般的に良く使われている「2倍スジカイ」、これは許容応力度計算では、引張り側で1.5倍、圧縮側で2.5倍、平均で2倍の計算です。
つまり、片スジカイが1ヶ所だけだと、引張り方向では1.5倍の耐力しかないのです。
片スジカイの場合は、同数の逆方向の片スジカイがないと、2倍の計算にならないのです。
(これも意外と知られていない)

さらに、熊本地震でも多くの被害がありましたが、このスジカイの破断。
この原因は座屈。スジカイに圧縮力が働いた時に、力が横へ逃げ、ポキッと横折れする現象です。

非常に危険な壊れ方です。
スジカイの長さが長いほど、この座屈は起こりやすくなります。

許容応力度計算を行ううえで教科書となる「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年版)」
いわゆる「グレー本」にも



サラッと書いてありますが、シングル(片スジカイ)の場合、横折れしないように間柱などにもシッカリ止めましょう。という意味。

では、ダブル(たすきスジカイ)の場合は? 確かに間柱はかわいそうなくらい細くなっています。
でも、その場合の記載はなくとも意味合いさえわかれば対処できます。
スジカイ同士をシッカリ緊結すれば良いのです。 こんな感じ↓



こんな事も瑕疵担保責任保険の検査ではスル~。
せめてアドバイスくらい・・・と、思いますが、必要最低限以上の話はありません。

ちょっと専門的な話になったけど、ブログ更新を楽しみにしている構造マニアの施主様はニヤリとしてくれるかな


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許容応力度計算、金物の選定

2016年11月16日 | 栄町の住宅

栄町の住宅です。

基礎工事が完了。コンクリート強度27N/mm2、スランプ15cmで打設、密実な基礎が完成しました



耐震等級は3 壁の耐力が強い分 引抜き力も大きく、ホールダウン用のアンカーが若干多め。

許容応力度計算により、柱一本一本にかかる引抜き力が算出されていますので、
その応力に耐えられる太さ、位置、本数でアンカーボルトが配列されています。

そして土台敷き。



今回もタツミのテックワン工法

土台と柱が緊結されるホゾパイプ金物も、計算された引抜き力に耐えられる様に、
その箇所によって様々なサイズが使い分けされています。

阪神・淡路大震災の時は木造住宅の倒壊原因の70%以上が[柱のホゾ抜け]でしたので
ココ(柱脚)の金物は重要です
いくら壁を強くしても、柱が抜けたら倒壊してしまいます

これら金物の選定はプレカット会社であるタツミさんではなく
構造計算を行った弊社が全て指示をします。

一般的に接合部の金物はプレカット屋さん任せになっている様ですが、
プレカット屋さんが自ら許容応力度計算を行う事は、まずありませんので
単に標準的な仕様の金物を選択しているに過ぎません

それでも、それをチェックするのが建築士の役目なのですが
そもそも計算していないのでチェックのしようがない。といったのが実状か・・・

弊社では、自社で許容応力度計算による構造計算を行っておりますので
プラン検討と同時に構造計算も行っております。機能と構造の両立です
しかも、耐震等級3のクリアを標準としています。(自慢です

新潟だと少なくとも積雪1m以上で計算しなくてはならない地域ばかりなので
実際には、積雪がない状態だと相当に強い建物になります。(地震力は建物重量に比例しますので)

かといって[3]以上の等級はないので、やっぱり[3]なんですけど
[3の上]と言っても悪くはないんじゃないかな(勝手に) 

明日から建て方作業。
構造マニアの施主様は、仕事をお休みまでして楽しみにしているとの事
私の代わりに監督していてもらう事にしよう 




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これが事実。でも一般の方はそうは思っていない

2016年11月09日 | 栄町の住宅

新しい物件が着工しています。
[栄町の住宅]です。

すでに基礎コンクリートの打設まで進んでいます。



こちらの施主様は、なかなかの構造マニア
ノンプロですが新築するにあたり独学で知識を高めた方。
そこらへんの建築士さんよりは、はるかに深く構造を理解しておられます。

当初はお会いするたびに質問攻めにも合っていました
しかも、相当に奥の深い質問です。

でも、それが私には意外と心地よかったりもして
一般の方にはなかなか(全く?)通じない「弊社はここまで構造にこだわっています」的な話ができますし
自分でも色々と再確認ができて、とてもためになります。

最近は質問も減って少しさびしくもありますが・・・

構造は奥が深いです。たとえ一級建築士でも知らない事がたくさんです。
そもそも、構造計算までできる建築士がほんの一握りしかいないという事実。
(でも一般の方はそうは思っていない

構造は、一般の方にはなおさら理解するには難しい分野です。
基礎工事1つを見てもとってみても、コンクリート強度から配筋等々話せばきりがない。

例えば、基礎のコンクリート強度を21N/mm2で構造計算した場合、
品質のばらつきを考慮して3N/mm2を割り増し
さらに気温が低い時期には強度が出るまで時間がかかるので、温度補正を3~6N/mm2足して・・・ 
つまりこの時期なら、少なくても27~30N/mm2以上で打設する事になる計算に。

でも、そもそも元となるコンクリート強度をいくつで構造計算したかのか?
木造2階建て程度の規模の基礎のほとんどが、その構造計算をしていないという事実。
(でも一般の方はそうは思っていない

基礎形状や配筋がどんなに怪し~い基礎でも図面がそうなっていれば、現場検査は合格。という事実。
(でも一般の方はそうは思っていない

その図面が間違っているか? それをチェックする仕組みがないという事実。
(でも一般の方はそうは思っていない

※ただし
長期優良住宅の認定など評価機関のチェックを受ける場合は、図面や構造計算のチェックがあります。
(重箱の隅までいやなほどつつかれますね
でも、長期優良住宅【相当】は、このチェックはされていないという事です。要注意

そもそも、
一番大切な構造がほぼ決まってしまう間取り。
その間取りを建築士の資格のない人が考えていることが普通になっている。という事実。
(でも一般の方はそうは思っていない

などなど、業界の常識は一般の方の常識とは大きく異なります。
昨今の様々な建設業界関係のニュースが、スキャンダル的に取上げられるのは
この常識の差異が、よりニュースを大きなものにしているのかもしれませんね。




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