黄昏どきを愉しむ

傘寿を過ぎた田舎爺さん 「脳」の体操に挑戦中!
まだまだ若くありたいと「老い」を楽しんでま~す

ゴッホは、ほんとうにピストル自殺をしたのか? NO.16

2021-07-14 | 日記
 サラが指定してきたカフェには待ち合わせの時間より早めに到着した
のだが、すでにサラは、ランチタイムで賑わう中、ぽつんとひとりで
待っていた。
                        
 
「こんにちは サラ。 お元気ですか」

       挨拶を済ませ、お互いにコーヒを注文。
                                       

サラは、突然口調を変えて~
「リボルバーを預けて、ひと月近く経ったわ。 
 いつ連絡くれるのかと、 ずっと待っていたんだけど…
 あれっきり、連絡ないのでどうしちゃったのかと心配になって、
 それで呼び出したのよ」

「調査の結果、もう全部片付いたのかしら?」

冴は「ほぼ終了しました」

「すぐ教えてくれればいいのに。
 一体いくらで落札されそうなの?
 あれがオークションに登場すれば、大きな話題になるでしょう。
 あなたたちにとってもビッグ・チャンスじゃないの。

  そのために私、思い切ってあれを、ゴッホとゴーギャン
 両方の専門家だというあなたの所へ持ち込んだんだから」

 さらに、サラは 美術館に確かなものだと保証してもらったのだ、
 愛好家ならかなりの金額で落札するはずだ…等々 
 
     売り込みにめいた言葉を並べ立てたが~

 冴が、いっこうに応じないので、そのうちに黙り込んでしまった。
 サラの顔 眉間のしわに苛立ちがくっきりと表れている。

冴は覚悟を決めて、言った。
 「残念ですが、サラ。
   あのリボルバーにはなんの価値もありません。
   よって、オークションに出品することはできません」

サラが息をのむのがわかった。 
 
 「‥‥どういうこと?」
 「だって、あれは、正真正銘の、ゴッホを撃ち抜いた銃なのよ。
  ゴッホ美術館で出品されたのが、本物だという動かぬ証拠
  じゃないの」 

    
  
    
 
「ええ、その通りです。」サラが切り返した。
「あなたが持ち込んだあのリボルバーが、展覧会に出品されたリボルバーと
 『同一のもの』だったらね」
           
冴は続けて言った。
        

「私は、ゴッホ美術館の展覧会のキュレーターのアデルホイダ・エイケン
 に会って、リボルバーの画像を見せたら、
『これは違う』と

 展覧会に出品されたリボルバーとは別のものだと、
         そうはっきり言われました。」

サラはそのままぴくりとも動かなくなった。


 冴は、昨日、国立図書館で調べてる最中に、
サラからのメッセージ 「話せませんか、ふたりきりで」
その瞬間、悟ったのだ。

サラに直接会わない限り、この謎は永遠に解けないだろう。

あのリボルバーは、ほんとうのところ、いったいなんなのか?
あれこそがゴッホを撃ち抜いた狂気なのか?
ゴッホが自分で引き金を引いたのか?  とすれば、
もとはゴーギャンが所有していたという話と
どうつながって来るのか?
そもそも、
ゴーギャンがあれを所有していたという確証がどこにあるのか?

冴が、サラと会ったのは一度だけ。
彼女がリボルバーを持ち込んだとき限りだ。

あのときも、いままでも、サラの口からは一言も「ゴーギャン」の名前
は出てこなかった。

 あれを「ゴーギャンのリボルバー」と言ったのは、
リアム・ペータースである。

以前のペータースの話で、
サラは、オークションで得た金はそっくり
そのままインスティチュート・ファン・ゴッホに寄付するつもりなのだから
と。  ・・・・なぜ?

ゴッホの熱狂的な信望者としてなのか。
ゴッホの為に人生をかけたペータースに共感したからなのか~。

    サラ・ジラール。 あなたはいったい、何者なの? 

 冴は、ごく静かに語りかけた。

「あのリボルバーは、ゴーギャンのリボルバー・・・なのですか?

サラの肩先が、ピクリと動いた。
何か言おうとして~なかなか言葉が出てこないようだ。

冴は、そして言葉を続けた。
「この前、私たち、「あなたのリボルバー」が、
別物だと判明したので
‥‥何か手がかりがあるかもしれないと思って、ラヴー亭へ行き、

       

リアム・ペータースにお会いし、いろいろと聞かされた話
私の知識と照合しました。

つじつまがあっているか、矛盾はないか、史実から逸脱していないか。
・・・・そして、すぐに分かりました

矛盾だらけで、完全に史実から逸脱している。
出来の悪いミステリーそのもの。
信じられるわけがありません。

さらに挑発的な言葉を吐いた。

うちの社長が、うまいミステリー話に乗せられて~
自分の推理をね、やっとのことでたどり着いた結論があるんですけどね。
これが、また、とんでもないオチで‥‥」

「なんだって言うの」 
     とうとう、サラが口を開いた。

一拍置いて、冴が答えた。
 「ファン・ゴッホは殺された。 -------ゴーギャンに」

サラを怒らしてもいい。そんな馬鹿な推理をする会社に
私の大切なものを任せるわけにはいかないわ。
そう、言ってほしかった。

   「‥‥‥その通りよ」

どれくらい時間が経ったのだろう、
黙りこくったままサラが、ゆっくりと唇を動かした

「いま‥‥なんて?」 冴は無意識に問い返した。

「なんて、言ったんですか?」

サラは、聖書の一節を読み上げるかのようにな声で告げた。

      「ファン・ゴッホは殺されたのよ。 

  ゴーギャンに。 ‥‥そのリボルバーに撃ち抜かれて」
            


サラは続けた。
私の母は、ゴーギャンの孫娘だったの。 

つまり、ゴーギャンは私の曽祖父。 
あのリボルバーはゴーギャンから私の曽祖母に托されたものよ

そして、曾祖母から祖母に、
    祖母から母に、
    そして私に伝わったもの
    史実を覆すような『秘密』とともに」

冴は、サラの鳶色の瞳を~息もつかずみつめていた

サラが話し始めた

たったひとりだけにしか話してはならないと、
ゴーギャンの孫である『X』が‥‥サラの母が娘に語った「秘密」は、
こうして冴のもとで封印を解かれるのだった。


 さぁ、いよいよ (史実に反する創作話)


はじまり、はじまり。                                   

             次回は 「サラの追想」

  (まだまだ 長くこの物語は続いていきます。飽きずにお付き合い お願いします。)
      
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続 黄昏どきを愉しむ

 傘寿を超すと「人生の壁」を超えた。  でも、脳も体もまだいけそう~  もう少し、世間の仲間から抜け出すのを待とう。  指先の運動と、脳の体操のために「ブログ」が友となってエネルギの補給としたい。