リタイヤして趣味の「油絵」を思い切り描こう・・・
なんて思っていたのですが
これがなかなかスタートできず・・・
ある時、隣の市で、高齢者向けの大学が開講されており、その中の
科目に「園芸」「絵画」が見つかりました。
田舎生活を始めたばかり、家も小さいながら建て、引き継いだ庭も
広く、これから手を入れようと思ってた矢先です。
いいきっかけだと、まずは「園芸」の勉強を2年間。
さらに、「水墨画」を選択し2年間。
気分にもゆとりが出たので、筆をとる時間も出てきました。
もともと親父が若い頃、日本画家を目指していたので、絵に対する
血は流れていた?
姉も、南画を習って自分の部屋に春夏秋冬、
季節感のある軸を飾っている。
まぁそんな家系なので生活の中に「絵」に常に囲まれ、
親しんでおります。
やはり「日本画」は、心の癒しには欠かせない・・・
じっと眺めているだけで~。
語り掛けてくれる・・・そんな名画に触れることは
ゆとりにもつながります。
今日はその日本画を鑑賞します。
上京すると、「山種」「根津」「静嘉堂文庫」「五島」「出光」「国立博物館」
「国立近代美術館」等
これぞ! の企画展があれば欠かさず
足を伸ばすことも多い。
山種美術館の顔である「速水御舟」
彼の生誕125年記念と銘打った企画。
そのコレクションの全貌が鑑賞できる・・・これは絶対見逃せない。
山種美術館の創設者は御舟の芸術に心から愛し、その作品を蒐集し、
自宅の床の間にかけて楽しんだという・・・
そんな思いから、彼は 旧安宅産業コレクションの御舟作品105点の
一括購入を決断、現在国内外最大の御舟作品を有している。
JR恵比寿駅で降り・・・
小雨交じりの中、緩い勾配の坂道を10分程度歩き
道路沿いなんですが~しっとりと佇んでいる瀟洒な美術館です。
一番乗り? いえいえ、既に数人方の姿も~雨の土曜日なのに。
このチラシの絵
御舟の最高傑作といわれる「炎舞」
もうひとつ「名樹散椿」
ともに重要文化財の作品が、そして御舟作品全点120点が
見られる・・・10年ぶりなのだ。
リスト NO.1 ~NO.120
この時季の上京で本当にラッキーでした。
作品は「絹本・彩色」「墨画」「墨画淡彩」「紙・鉛筆・淡彩」
「コンテ」など 特に「素描」「写生」の数は多く、同じ題材に
対して、これでもかと徹底的に 写生を繰り返す~
古典的な日本美術の技法や表現を土台に西洋的な写実を
融合させた。
彼は、渡欧することで日本画の長所、画材や和紙、墨の特色を
より生かす絵も描き続けた。
◆ 鏑木 (大正2年) 19歳の作品
えっ、19歳でこんな見事な絵を。
◆山科秋
◆桃花
◆春昼
◆供身像
埴輪でしょうね・・・
◆翠苔緑芝
ということで・・・全体の屏風絵をパチリと
さらに 紫陽花の花びらの筆使い、 果物の枇杷の葉・・・
とことん集中して観察し、表現しているのが分かります。
ほら、この兎の表情・・・ 絵の中で 「くつろいでいる・・・」
細かい描写、よ~く、絵を 見ていないと気が付かないよ。
さぁ、この1枚の登場です。
◆炎舞 (重要文化財)
御舟31歳の時の作品
同年の夏、軽井沢の洋館を借りて家族で滞在している間、
毎晩のように焚き火をしては集まる蛾に見入り、
写生していたという。
のちに、この絵を描こうと思ったきっかけは? と問われ
「別に理由はなく、ただ見ただけです。炎を描いてみたいと
思ったひとつの習作のようなものです」と。御舟は語っている。
炎の写生は残されていないが、緻密な蛾の写生は
多く残されている。
一方、炎には、伝統的な仏画や絵巻物に描かれる不動明王の
火炎光背のような様式が。
とにかく、傍に近づいて眺めていても、その凄さが分かります。
炎の上で、蛾が舞う・・・(実際は無理でしょうが)
抽象的な美に昇華され、 見るものを惹きつける・・・
特に、背景の闇の色、印象的です。
御舟自身
「もう一度描けと言われて、二度とは出せない色」
と語ってる。
この作品の1年後
◆昆虫二題のうち「粧蛾舞戯」を。
「蛾」 好きなのかなぁ~普通は、「蝶」の方が、いろいろだね。
◆ 「春地温」
◆紅梅・白梅
◆百舌巣
こういう優しい絵を見ていると、日本画って いいなぁ~
・・・思いません?
渡欧中 イタリアのフィレンツェで・・・写生を
◆フィレンツェ アルノの河岸の家並
洒落た すてきな1枚です
インクで描き 淡彩仕上げ・・・軽いタッチの妙
◆塔のある風景(写生)
いいですね~ きっと明るく賑やかな街
塔から鐘の音まで流れてくるような ♪♪♪ ・・・
◆オリンピアス神殿遺址
何かこの絵見ていると・・・平山郁夫さん、思いだすよね。
「線」の動きの素晴らしさ~
そして もう1枚の 銘品
◆名樹散椿(重要文化財)

屏風で

平面で
椿の部分 左手手前下の 花を拡大して
椿の部分 右手 幹から枝へ その中の椿
これはもう 「琳派」の美 装飾的な色彩と構成・・・
金地でしょ、これは、説明によると、「金箔」ではなくて、金の砂子を
竹の筒に入れて何度も撒いてはすりつぶすといういう作業を
繰り返した「撒きつぶし」という技法によるもの。
一般的な箔の約10倍もの金箔が必要なんだって・・
この絵の 「椿」にもエピソードが
実は、京都・地蔵院にあった樹齢約400年、5色の八重散椿は、
加藤清正が朝鮮から持ち帰り、秀吉に献じたものとされる
古木なんです。
あの太閤秀吉が 愛でたという誉れ高い名樹
最後に、写生の中でも 一際、展示数の多かった「牡丹」17点も。
これは、展示会場でしか。
これは 逸品です。
◆ 牡丹花(墨牡丹) 紙本・墨画彩色
いいなぁ~ 墨の濃淡 何度見ても飽きない・・・
如何でしたか、「日本画」の美しさ・・・
日頃のストレスも、梅雨の鬱陶しさも・・・
気分すっきりになったのでは?
1枚の絵に出会う・・・絵は、よく分からないと言いますが・・・
分かろうとしなくてもいいんです!
じっと、眺めていると「絵」の方から、あなたに声がかかってきまよ。
感動も、感激も・・・心の中にあるもの。
それを 引き出してくれるのが 「1枚の絵」なんです。
ちょっと説教じみて すいません。
齢を重ねると、ついつい愚痴ってしまいます。
こんな絵を 最後に。
◆ 日蓮上人像(模写)
彼の教えは、「来世を考えるのではなく、「今」を生きることの大切さ」
を説いた・・・
私、喜寿を過ぎ、思いっきり「今」を生きる大切さを感じています。
さぁ、この美術館めぐりも 明日のNO.9
「東京国立近代美術館」 所蔵作品展 MOMATコレクション
で終わり。