この3日間昼夜? を通して猛読をした。
安部龍太郎の小説「等伯」である。
近くの先輩が声を掛けてくれ・・・あんたにぴったりの本がある。
持っていくから読んでみたら。
渡されたのが、それが題、「等伯」の上下2巻(700pの長編)
この安部龍太郎さんの著書は、以前にも「信長燃ゆ」「天下布武」
を読んでいました。
戦国物が多く、私の好きな時代にスポットを当て、好きな作家の一人。
福岡県出身でもある。
私は、絵を描くので、「等伯」の名前を聞けば・・・
あの国宝「松林屏風図」が直ぐに浮かびます。

昭和48年だったと思いますが、東京で、国立博物館で一般公開された時に
この絵を初めて見たときの感動は忘れられません。
絵を趣味に持ち、特に水墨画をと思う人にとっては一度は見たい。というもの。
その画家がテーマ? これは新しい感覚だと。
時代は、戦国、信長、秀吉の一番面白い舞台の中で、この画家が
どう生きて来たか? 小説になるのか?
いや、長谷川等伯についての詳細は頭になかったので。
ざっと、ネットで調べ、彼の歴史を検索しておいた。
第1章 京へ の書き出しに、
「雨だった。頭上にたれこめた・・・・
「上背は五尺八寸、百八十センチちかい長身なので、蓑をまとうといっそう
大きく見える。 」
これにまず、びっくりでした。
あの、繊細な絵から見て、想像できない巨漢?
(絵描きが繊細で細身という定義はありませんが)
この一行で、興味が出てきた。
最初から、ぐいぐい引っ張られる感じで・・・・
あとは久しぶりの一気読みが始まりました。 ほとんど集中しました。

いやぁ~、出てくる、出てくる。 戦国のスター?が総出演です。
もう、一気にページ捲りを続けるしかありません。
北陸が舞台の始まり、畠山家、浅井・朝倉、越後の謙信、信長
狩野派の面々・・特に「永徳」
前半は、「信長」の戦いを中心に、等伯(このころは、又四郎信春~等白~等伯へ)
の出自が展開される。
また、この本は、絵の歴史の勉強にも一役ありです。
全編にわたり、「狩野派」の凄さ、また、等伯が極めようとした「牧谿」も。
障壁画が、当時の権力者たちにとって、どういう意味を持ったか。
絵師たちの生き残りのすさまじさ・・・面白いし、興味深く勉強になりましたね。
かの、信長一世一代の「安土城」の障壁画、そして本能寺の変以後の
秀吉との確執、千利休との交わりと、その惨いまでの最後のシーン。
これはもう、画家の一代の物語を超え、戦国の舞台の総集編?
その終幕に「松林図」が燦然としてこの主題を締めくくったともいえる。
3日間、猛然と読み切った・・・・・。
人間にとって、「1枚の絵」は何か?
その絵の意味するところを読み取る「心眼」を持つまでには、その人の
人生の弛まざる努力の積み重ねがなければとも。
また著者の一言に。
「・・絵師なら多くの作品が残っているので、四百数十年の時を超えて直に
対話することができる」と。
1枚の絵が、これほどの重みをもって読者に迫ってくるのは凄いこと。
「国宝」になるほどの1枚。
等伯という、一人の人間の一生であり、「もがきの境地」から脱出した成果の
1枚なのだ。
大いに疲れた1冊であり、新鮮な味わいを感じ、絵筆をもちたいと触発された。
来年のチャレンジは「筆」だな・・・・・。