自然光ではやや赤味を含むグレーの節糸の布の表紙。本文の紙の断面は銀が加工され光っています。
背の上下に見えている布(花布)もこだわりのストライプ。草履であれば鼻緒を固定する前坪のような。。
背の上下に見えている布(花布)もこだわりのストライプ。草履であれば鼻緒を固定する前坪のような。。
きもの研究家の森田空美さんの著書『灰色光』が届きました。
上の画像の通りとても美しい本ですが、タイトルはきものスタイルブックとしてはややショッキングです。
「色数を控えてなお華やぐ洗練の秘密は、グレイッシュな透明感と淡い光」と。
すべての色を含む灰色。
灰は全てを燃やしたあとに残り、そしてまた大地を豊かにし、色を生み出す再生の原点。
灰色をただ色名の中の一色で選んでいるのではなく透明な灰味を奥行き、深みとして捉える。
上質ならではの奥から生まれる華やぎ。本質的美しさは何かを問う。素材であり、技術であり、今という時代。
雑誌『和楽』に森田さんのスタイリングで呉服屋さんの商品をモデルさんが着用して今までに掲載されてきた中からセレクトとされたものが中心ですが、新たにご自身の着物で「きもの、私の装い」として撮り下ろされたものが後半にあります。
きものに魅せられ40年だそうです。"あとがき"にはこころに沁みる文章が綴られています。
一部抜粋させていただきます。
「私たちがきものを愛し、日常に生かしていくこと。それこそが日本の伝統文化を応援することにつながると感じます。奥深いきものの魅力を、ひとりでも多くの方にお伝えすることが、私の使命なのでしょう。」
このようなご覚悟の上での着物雑誌などメディアでの仕事であり、現代のつくり手による着物のコレクションも、そうした思いで選ばれ、取合せ、それを自らも愉しむと同時に、次世代に伝えるために日々お召になられてきたのだと納得を致しました。
私もたくさんの着物や帯、ショールなどをお召いただき応援していただきました。
心より感謝を申し上げますとともに、私自身も糸や色と向き合い現代の紬を織り続け、伝えることを使命としたいと気持ちを新たにいたしております。創ることも着ることもいのちを懸けることです。
本の印刷では実際の色より濃く上がったようですが、私の着物は写真写りが悪くて、、(~_~;)、微妙な織と色が印刷や画像では伝わりにくいのです。
今回このご本の中で森田さんがお召くださっている着物と帯の生地アップ画像も恐縮ながら併載させて頂きます。
紬織縞着物「木の葉時雨」
少しずつ残った糸を繋ぎ、ごく僅かの濃い残糸も繋いで配した規則的でもあり不規則性も覗かせるように意図した縞です。
緯糸も濃淡のある糸を混ぜながら小さな格子を織るような感じで織りました。私が太めにつむいだ絣状に染めた糸を4~5寸間隔で一越だけ斜子に織っています。上の画像で太い糸が見えてますのでわかると思います。これが微かなアクセントにもなります。
紬織吉野格子帯「錦秋の光」
秋の深い色と季節の終わりにいのち燃やす激しさも秘めて色を選びました。格子は光沢のある玉糸、地糸はマットな質感の真綿紬糸を使いました。
森田さんは、木の葉時雨にこの帯を合わせ「紅葉から落葉へと、季節の移ろいを伝えるような気持ちで着こなします」と書かれています。
ここでの小物の取合せは茶の帯揚げ、紫の帯締、ともに帯に馴染ませる感じにされています。
もう1点、添田敏子さんの型染め帯と合わせて頂いたモデルさん着用のものもベージュ系ですが色の再現泣かせの着物です。。
ベージュ地の細かなヨコ段です。柔らかで何気ない印象のものです。
隣り合う色をどれくらいの濃淡で入れると立体感や華やぎ、深みが出てくるのか、何気ない仕事のようではありますが時間を掛け糸を選びます。糸の色だけではなく番手の違うもの、紬糸も真綿系、繭から直接引き出す座繰り系などがありますので質の違うものも織り交ぜます。ヨコの段が強すぎず弱すぎず、とても難しいです。陽の光と相談しながら織り進めます。
あとがきには「真の美を求めるつくり手の、創造へのひたむきさと尊い刻(とき)の重みが、輝きとなるからでしょうか」とも綴られています。
そうあらねば、そうありたいと私も願います。
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本は限定部数で、すでに残り少ないそうですが、当ブログ、又は櫻工房FBページをご覧になったことを明記の上でしたら、この本の編集をされた田中敦子さんにメールでお申し込みいただけるとのことです。
完売しました。
森田さんは着物のスタイリング、着付けの指導もされています。
自然で美しい着姿を学べます。
お教室のオフィシャルサイトはこちらです。