年金受給者の日々へ 悪戦苦闘の記録から

自分のXデーに向かってまっすぐに走る日々
   年金受給前の悪戦苦闘の日々より

希望寮にて

2010-10-29 21:17:30 | Weblog
 「ここ出て何の仕事をしたいんや、○○さんは収監される前はサラ金屋さんにおったんやな、ほんなら金の回収は上手いんやろな・・・私が言ってるんは、つまりあんたは、お客さんとの交渉はできるっちゅうことやろ、行き過ぎてやり過ぎて、まぁ法に触れることがあったら、ここにまた入らんなあかんのやけど・・・ええか、ほんまに今後何の仕事をして生活の糧を得るつもりなんか、まぁそれを聞きたい・・・」「あんたは中学高校とスポーツをやってたみたいやけど、何しとったん、エッ、サッカー選手やったんか、ポジションは・・・フォワードか、点取り屋やったんか」・・・そのようなやり取りを数人としながら就職の話をしている。私のところには前もって希望する仕事や保有する免許資格、就職希望地などを書いた書類がある。それにそって準備をし面接をしている。「就職するには、ハローワークを利用する方法や、縁故で就職する方法、また雑誌を見て応募する方法などがある、それぞれ良い点と悪い点がありますが、その中で今日は、ハローワークを利用して就職する方法の話をします・・・まずは求人票の見方から・・・」このような調子で数人相手に仮釈放前の人たちと就職の話をしている。
 「あんたは幼稚園に行ったんか、それから小学校へ上がり中学校へ、そして高校へ行ったんやな、そのようにしてあんたは確実に今まで肉体的に精神的に成長してきた・・・しかし、36歳のあんたが、これから死ぬまでどんなに成長して行くつもりや・・・もう学校はないよ、叱ってくれる先生やコーチはおらへんで・・・、私は、だからこれからあんたが成長していくとすれば、仕事を通してしか成長を自分で確認できへんやろ、と考えております。辛いことや辞めたい時やいじめられたり泣きたい時がたくさんあるやろと思うよ…そこで、どれだけ我慢して仕事をやり通せるか・・自分が自分に叱りつけて、自分が自分を誉めてやって・・・自分が成長できるかどうかの別れ際やろね、もう二度と会うことはないやろけど、まぁ健康に注意をして頑張ってください。」
                
 こちらの刑務所の中では、服役者が仮釈放される前の10日間くらい、畳のある集会所のような別棟の寮に移される。そこで彼らは、少し自由な時間を与えられている。明日からの一般社会生活に向けてのアップ時間である。その寮で月2回ほど受刑者が適当な人数になると、私はそこに行って就労のための話を1時間ほどしている。彼らはあと数日もすれば保護観察を受けながら満期日を外の社会で待つことになる。そのためには生活基盤となりえる仕事に就かねばならない。今日お会いした人の帰住先は全国に散らばっている。そのうちの一人が、玄関先まで見送りに来て、靴を履いている私の背中に、希望が湧きました・・・と言葉を投げかけてくれた。
 今、南の海上から台風が北上している。長波の風が吹いている。