戦争とは人が無差別に殺し合い、人が尋常でない死に方をするもの。
そういうことを伝えるには映像の力を借りるしかないと思い、世界史の授業では、戦争を描いたドキュメンタリーや映画の映像を時間の許す限り教材として使っていました。しかし、そういう意味では、「硫黄島からの手紙」は、戦場の悲惨さとかむごさを伝える反戦映画というよりはむしろ、戦争の持つもの悲しさやはかなさを伝えてくれる映画だと思います。
クリ . . . 本文を読む
タイトルの「ミュンヘン」とは、ミュンヘン五輪を表しています。1972年9月5日、オリンピックの真っ最中に、選手村でイスラエル選手11人が「黒い9月」を名乗るパレスチナ・ゲリラに襲われ、全員が殺されるという前代未聞の事件が起こりました。
スティーブン・スピルバーグ監督は、この「黒い9月事件」をフラッシュバックで追いつつ、この事件に対するイスラエルの報復作戦を描いていきます。イスラエルは、諜報機関モ . . . 本文を読む
ストーリーは、硫黄島の壮絶な攻防戦と、例の写真に写っていた3人の帰国後の姿がオーバーラップして進んでいきます。
負傷を負いながらも帰国した3人(ジョン・"ドク"・ブラッドリー、レイニー・ギャグノン、アイラ・ヘイズ)を待っていたのは、「英雄」としての熱狂的な歓迎でした。"Iwojima"の勝利は、あの写真が大々的にマスコミに取り上げられたことも手伝って、熱い愛国心を呼び起こしました。一方で、国は、 . . . 本文を読む
クリント・イーストウッド監督による「硫黄島」2部作の第1作目です。太平洋戦争の最大激戦地の一つ、硫黄島の戦いを、日米両国側の視点から描き分けるという、なかなか興味深い試みです。
硫黄島。改めて地図で探してみると、東京から約1000kmのところに位置しています。東京から船で25時間半かかる小笠原諸島・父島からさらに200kmほど南下したところにあります。面積22平方キロ。かつては住民もいたのですが . . . 本文を読む
ロシア・レンフィルムの巨匠アレクセイ・ソクーロフが天皇・ヒロヒトを描く。天皇を演じるのはイッセー尾形。それだけの情報を携え、興味津々で大阪・十三の繁華街のビルにある「第七藝術劇場」という映画館まで足を運びました。
終戦も近いある日。天皇の朝食のシーンから映画は始まります。皇居にしてはやけに薄暗く、狭い部屋。ここは地下壕なんだなということがしだいにわかってきます。侍従長(佐野史郎)が両開きのドアを . . . 本文を読む
オリバー・ストーン。「プラトーン」(1986年) 、「7月4日に生まれて」(1989年)、「天と地」(1993年)の“ベトナム戦争3部作”、「JFK」 (1991年)といった反骨精神あふれる映画を生み出してきた監督です。
で、そのオリバー・ストーンが今回は“9.11テロ”を描くというので、公開を心待ちにしていました。“ベトナム戦争3部作”が、いずれも戦争終結から十何年もたってからようやく描くこと . . . 本文を読む
ちょうど社会人になりたての頃に、「ワープロ」が社会に登場してきました。その中に「文豪」という名の機種がありました。そのキャラクターとして使われていたのがシェークスピアだったと思います。文豪といえばやっぱりシェークスピアなのか…とふと考えたことがありました。
その"文豪"シェークスピアの代表作の一つ『ヴェニスの商人』を映画化した作品です。
「人肉裁判」─と、ここだけスプラッター映画みたいな言われ . . . 本文を読む
唐突に画面が暗転して映画が終わります。
茫然としてエンドクレジットを追っていると、キャストの何人かに"as himself"という文字が読み取れました。あ、「本人」が演じていたんだ…と気づく。
「この作品は、普通の人々が何のマニュアルもなしに極限状態に立ち向かえるかを描いているのです」
やはり「本人役」で出演している連邦航空局(FAA)のベン・スライニーの言葉です。パンフレットによれば、出演 . . . 本文を読む
映画が終わってエンドロールが始まったとたん、隣にいたカップルの女性、「半分くらい寝てたー。わけわかんなかった」と言っていました。さらに、連れの男性に「どんな映画だった?」と聞いてました…。
たぶん、原作を読んでいなければわかんない人は本当に「わけわかんない」のかもしれません。ほぼ原作に忠実な映画ですが、原作があまりにも様々な歴史上の断片を拾い集めながらストーリーが展開するので、それを2時間半の映 . . . 本文を読む
ちまたではあまり評判がよろしくないようですが、「ブラザーズ・グリム」。でも私は十分に楽しめました。
テリー・ギリアム流のブラック・ユーモアがそこここに散りばめられていて、「くすっ」と笑えるシーンがいくつもありました。それだけで十分です。
予想通り、この映画は「グリム兄弟」を登場人物に借りてきたファンタジーでしたが、しかし、ナポレオンの支配下にあった「ドイツ」(厳密に言えば「ドイツ」という国はま . . . 本文を読む
今週までの上映ということで、昨日シネマディクトで見てきました。2週間しか上映してないのに、既にパンフレットは売り切れてました。この映画、それなりにヒットしてるらしいのですが、どうしてなんだろう? いや、いい映画じゃなかったからという意味ではなく、どちらかというと地味でドキュメンタリータッチ、しかも2時間半以上の長い映画なのに、という意味です。
たぶん、「ヒトラー」だからなのでしょう。「こわいもの . . . 本文を読む
ドイツでは大ヒットした映画だそうです。ヴォルフガング・ベッカー監督。主演はダニエル・ブリュール。ほとんど知らないスタッフとキャスト。おかげで何の先入観もなく見られました。
舞台は旧東ドイツ。というより東ベルリン。物語の中心にいるのは、アレックスとアリアネの姉弟。父親は西ドイツに亡命してしまい、二人は残された母クリスティアーネと暮らしています。アレックス少年の憧れは、ジクムント・イェーン中佐。彼は . . . 本文を読む
トロイ戦争のクライマックスは、なんといっても「トロイの木馬」です。
アキレウスの死後、ギリシア軍の実質的な指導者は“知将”オデュッセウスでした(映画では、アキレウスの死は「トロイの木馬」作戦のあと、という設定になっています)。オデュッセウスは「ユリシーズ」とも呼ばれますが、イタケという小さな島の王です。トロイ戦争では、たとえばアガメムノンとアキレウスの対立の際に二人の間を取り持つなど、何かあると . . . 本文を読む
アキレウスの名は、「アキレス腱」で知られていますが、不死身とさえ言われた勇猛果敢な彼の唯一の弱点は「アキレス腱」でした。そのわけを阿刀田高はこんなふうに説明しています(ギリシア神話を知っていますか』(新潮文庫)『>>amazon.co.jpより)。
「彼が生まれたとき母親は、息子が終生不死であるようにと願って、冥府の河で産湯を使わせた。この河に身を浸せば不死の肉体を得られると信じられていたからで . . . 本文を読む
ヘレネは、スパルタの先王テュンダレオスと妃レダの子ということになっていますが、実は、ゼウスが白鳥に変身してレダに生ませた子なのです。つまりヘレネもまた神の子。文字通り神々しいまでの美しさに求婚する男は多かった。父テュンダレオスは、ヘレネ自身に婿を選ばせることにしますが、たとえ誰が選ばれても他の者は文句を言わないこと、そしてもし選ばれた者がその権利を侵されるようなことがあれば、一致協力して彼を助ける . . . 本文を読む