『封印作品の謎』(2004年)に次いで2年ぶりに出された第2弾です。著者の安藤健二氏は、1976年生まれのフリーライター。
一度はテレビで放映されたり、市場に出回ったりしたものの、現在、決して世に出ることのないアニメ、映画、ゲームなどがあります。つまり「封印された作品」。いったいなぜ「封印」されたのか。至極興味をそそられるテーマではあります。この本は、4つの作品をめぐる「封印」の過程を、関係者へのインタビューやインターネットを駆使した取材で明らかにしていきます。
たとえば、「オバケのQ太郎」。昭和40年代に子ども時代を過ごした人たちで、「オバQ」を知らない人はまずいないと思いますが、この作品もまた「封印作品」なのです。単行本、アニメを見ることは現在ほとんどできないと言われています。
「オバケのQ太郎」は、1964(昭和39)年に雑誌への連載が開始、翌年にはアニメがテレビ放映され(TBS系列)、爆発的なブームを巻き起こしました。1971(昭和46)年には、新シリーズも始まっています(「新・オバケのQ太郎」)。真っ白な身体に毛が3本。大きな目と大きな口。ごはんを20杯も食べちゃう。オバケなのに化けることはできなくて、特技は透明になれることと空を飛べること。オバケの国からやってきて、大原正太郎くんの家に住みついて、よっちゃん、ゴジラ、キザ夫といった友だちといろんな騒動を巻き起こしていく。
「ドラえもん」と設定がとても似ています。というより、「オバケのQ太郎」こそ、「ドラえもん」だけではなく、その後の多くのアニメの設定のルーツなのです。ところが、「ドラえもん」がいまだにアニメも放送され、根強い人気を誇っているのに対し、オバQは全く日の目を見ることができないのはあまりも対称的です。
この本では、作者である「藤子不二雄」に謎を解く鍵があるとしています。ご存知の通り、藤子不二雄というのは、藤本弘と安孫子素雄の合作ペンネーム。しかし、アマチュア時代はともかく、ほとんどの「藤子不二雄」作品は、合作ではなく、二人別々に描いていたと言われています。たとえば、「ドラえもん」、「パーマン」は藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)の作品だし、「忍者ハットリくん」、「怪物くん」、「笑ウせえるすまん」などは安孫子素雄(のちの藤子不二雄A)作品。
ところが、唯一の正真正銘の二人の合作作品があって、それが「オバケのQ太郎」なのです。さらに、この作品は、二人だけでなく、トキワ荘時代の仲間と作ったアニメ制作会社「スタジオ・ゼロ」による合作でした。だから、「オバケのQ太郎」発表当初は、「藤子不二雄とスタジオ・ゼロ」というクレジットが付されていました。藤子不二雄の二人だけでなく、石ノ森章太郎やつのだじろうなどが登場人物を分担して描いていたらしいのです。たとえば、Q太郎やドロンパは藤本、正ちゃんや小池さんは安孫子、よっちゃんは石ノ森章太郎といったふうに。ただ、「新シリーズ」では、スタジオ・ゼロの関わりはなくなったようで、そのおかげで、たとえばよっちゃんの顔は、最初のシリーズと「新」では全く違っています。最初のよっちゃんは、明らかに石ノ森章太郎タッチなのに、「新」では(藤本作品である)ドラえもんのしずかちゃんと同じなのです。ついでに言えば、ラーメンの小池さんのモデルはスタジオ・ゼロの社長、鈴木伸一だと言われています。オバQでも、小池さんの勤務先は「アニメ制作会社」となっていましたから。それにしても、小池さんのインパクトはあまりにも大きい。食事にラーメン、食後にラーメン、おやつにラーメン。Qちゃんや正ちゃんの騒動に巻き込まれ、迷惑そうな顔をしながら、それでもラーメンを食べ続ける小池さん。決して主人公ではないのに、こんなに覚えられているキャラクターって、あまり例がない。
それはともかく、「封印」です。
この本では、封印の理由として、これまで言われてきた説として6つほど挙げていますが、その中に「権利問題説」というのがあり、「藤子不二雄」と「スタジオ・ゼロ」との間の著作権問題と、「藤子不二雄」のコンビ解消後の二人の著作権問題の2つの説を紹介しています。前者はそうした事実は全くないということが明らかになりますが、問題は後者の「F」と「A」との間の関係です。「藤子不二雄」は1987(昭和62)年、コンビを解消しています。あまり見たくない事実ですが、この本に掲載されている二人の納税額の年度別一覧を見れば、何だか察しがついてしまいます。「ドラえもん」を持つ藤子・F・不二雄はやはり「強い」…。もしドラえもんがいなければ、オバQも「封印」されることはなかったのでは?と思うほどです。
「オバケのQ太郎」は、皮肉なことに、「唯一の合作」であったがゆえに「封印」されてしまったというところでしょうか。せめて、それは二人の「思い」とは裏腹な結果なんだ、と思いたいものです。
『封印作品の謎2』>>Amazon.co.jp
一度はテレビで放映されたり、市場に出回ったりしたものの、現在、決して世に出ることのないアニメ、映画、ゲームなどがあります。つまり「封印された作品」。いったいなぜ「封印」されたのか。至極興味をそそられるテーマではあります。この本は、4つの作品をめぐる「封印」の過程を、関係者へのインタビューやインターネットを駆使した取材で明らかにしていきます。
たとえば、「オバケのQ太郎」。昭和40年代に子ども時代を過ごした人たちで、「オバQ」を知らない人はまずいないと思いますが、この作品もまた「封印作品」なのです。単行本、アニメを見ることは現在ほとんどできないと言われています。
「オバケのQ太郎」は、1964(昭和39)年に雑誌への連載が開始、翌年にはアニメがテレビ放映され(TBS系列)、爆発的なブームを巻き起こしました。1971(昭和46)年には、新シリーズも始まっています(「新・オバケのQ太郎」)。真っ白な身体に毛が3本。大きな目と大きな口。ごはんを20杯も食べちゃう。オバケなのに化けることはできなくて、特技は透明になれることと空を飛べること。オバケの国からやってきて、大原正太郎くんの家に住みついて、よっちゃん、ゴジラ、キザ夫といった友だちといろんな騒動を巻き起こしていく。
「ドラえもん」と設定がとても似ています。というより、「オバケのQ太郎」こそ、「ドラえもん」だけではなく、その後の多くのアニメの設定のルーツなのです。ところが、「ドラえもん」がいまだにアニメも放送され、根強い人気を誇っているのに対し、オバQは全く日の目を見ることができないのはあまりも対称的です。
この本では、作者である「藤子不二雄」に謎を解く鍵があるとしています。ご存知の通り、藤子不二雄というのは、藤本弘と安孫子素雄の合作ペンネーム。しかし、アマチュア時代はともかく、ほとんどの「藤子不二雄」作品は、合作ではなく、二人別々に描いていたと言われています。たとえば、「ドラえもん」、「パーマン」は藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)の作品だし、「忍者ハットリくん」、「怪物くん」、「笑ウせえるすまん」などは安孫子素雄(のちの藤子不二雄A)作品。
ところが、唯一の正真正銘の二人の合作作品があって、それが「オバケのQ太郎」なのです。さらに、この作品は、二人だけでなく、トキワ荘時代の仲間と作ったアニメ制作会社「スタジオ・ゼロ」による合作でした。だから、「オバケのQ太郎」発表当初は、「藤子不二雄とスタジオ・ゼロ」というクレジットが付されていました。藤子不二雄の二人だけでなく、石ノ森章太郎やつのだじろうなどが登場人物を分担して描いていたらしいのです。たとえば、Q太郎やドロンパは藤本、正ちゃんや小池さんは安孫子、よっちゃんは石ノ森章太郎といったふうに。ただ、「新シリーズ」では、スタジオ・ゼロの関わりはなくなったようで、そのおかげで、たとえばよっちゃんの顔は、最初のシリーズと「新」では全く違っています。最初のよっちゃんは、明らかに石ノ森章太郎タッチなのに、「新」では(藤本作品である)ドラえもんのしずかちゃんと同じなのです。ついでに言えば、ラーメンの小池さんのモデルはスタジオ・ゼロの社長、鈴木伸一だと言われています。オバQでも、小池さんの勤務先は「アニメ制作会社」となっていましたから。それにしても、小池さんのインパクトはあまりにも大きい。食事にラーメン、食後にラーメン、おやつにラーメン。Qちゃんや正ちゃんの騒動に巻き込まれ、迷惑そうな顔をしながら、それでもラーメンを食べ続ける小池さん。決して主人公ではないのに、こんなに覚えられているキャラクターって、あまり例がない。
それはともかく、「封印」です。
この本では、封印の理由として、これまで言われてきた説として6つほど挙げていますが、その中に「権利問題説」というのがあり、「藤子不二雄」と「スタジオ・ゼロ」との間の著作権問題と、「藤子不二雄」のコンビ解消後の二人の著作権問題の2つの説を紹介しています。前者はそうした事実は全くないということが明らかになりますが、問題は後者の「F」と「A」との間の関係です。「藤子不二雄」は1987(昭和62)年、コンビを解消しています。あまり見たくない事実ですが、この本に掲載されている二人の納税額の年度別一覧を見れば、何だか察しがついてしまいます。「ドラえもん」を持つ藤子・F・不二雄はやはり「強い」…。もしドラえもんがいなければ、オバQも「封印」されることはなかったのでは?と思うほどです。
「オバケのQ太郎」は、皮肉なことに、「唯一の合作」であったがゆえに「封印」されてしまったというところでしょうか。せめて、それは二人の「思い」とは裏腹な結果なんだ、と思いたいものです。
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「封印」作品があるのですね。
リアルタイムに「少年サンデー」を毎週たのしみに見てました。
Q太郎が食べてばっかりなのを珍しくも気にして体重計に乗ると〇㎏・・・❔
浮いていたのでした。
ところで、「オバケのQ太郎」は毛が三本ですが、「毳」をどう読む でしょうか