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『美味しんぼ』青森編─ディープなディープな「究極」と「至高」のメニュー

2007-11-23 | ■食べ物
『美味しんぼ』がついに単行本100巻を達成! 私は、60巻くらいから買ってなかったのですが、ちょうど100巻目が「日本全県味巡り」の青森編だというので、久しぶりに読んでみました。いつのまにか、山岡・栗田夫妻には双子の子どもができて、さらに三人目もおなかにいるらしい。取材に行くときは必ず夫婦そろって出かけるので、その間の子どもの世話は、栗田さんの父母など周りの人にずいぶん助けられているみたいデスネ…。それにしても、第1巻で初々しい新入社員だった栗田ゆう子さんも、連載開始から18年ということは、四十路にさしかかっているのですなあ。漫画上は、ほとんど外見的に変わってませんけどね。

「青森編」を書くにあたって、原作者の雁屋哲さんは、数回にわたって青森を訪れ、取材したそうです。ガイドを務めたのが、漫画にも登場するフリーライターの斎藤博之さんという方。この人の紹介する青森の食文化は、かなり奧が深い。したがって、漫画で紹介される食材や料理も通り一遍ではない。同じ県に住んでいながら初めて目にする料理がたくさんありました。こうやってメジャーになったとしても、他県から来た人にはそれらのメニューにたどり着くのはむずかしいのではと思う。それほどディープなものが多い。それは、見方を変えれば、ごく狭い範囲のある地域の人たちにとっては、昔からありふれた食べ物だということですね。それぞれ、雁屋氏が実際に取材で出会った地元の人たちが登場して調理し、作り方やいわれなどを紹介してくれます。

もちろん、ストーリーは、いつものごとく究極のメニュー対至高のメニュー。海原雄山は、「青森。青い森。なんと美しい名前ではないか。これだけ美しい名前の県は他にないだろう」と言い、山の幸、海の幸が豊かな青森県こそ、本当の「美しい国」とはどんなものかを日本人に教えてくれる県なのだ、と最高の賛辞。で、至高のメニューは、青森の美しさをテーマにした食材・料理で勝負に出る。津軽から、山ブドウの炒り煮、身欠きニシンと山菜の飯寿司、サクラシメジ、サモダシ(ナラタケ)などの様々なキノコを使った料理、そして木村秋則さんの自然農法によるリンゴ。下北からはフジツボ。南部からは、三戸のジョミ(ガマズミ)ジュース、食用菊を使った菊巻き漬け、干し大根と身欠きニシンの煮付け。締めくくりは、津軽塗りの皿に載せたデザートの薄紅(おきな屋製。紅玉リンゴのお菓子)。

対する究極のメニュー。この巻の冒頭で山岡たちが取材する五戸町の「すまし」の紹介からプレゼンが始まります。すましとは、醤油がなかった時代に、味噌からつくる調味料のこと。今でも正月の煮しめはすましで作るのだという。「醤油はきつい味だけど、すましは味が柔らかくていいの」と地元の女性が語る。すましを使った「はっと」がまず出されます。「はっと」とは、麺のことで、そばはっとと麦はっとがあります。はっとは、私も好きでした。そばと麦と言えば、「かっけ」も忘れてはならないと思うのですが、残念ながら今回はかっけの出番はありませんでした。しかし、同じく南部地方に古くから伝わる「ひっつみ」は登場します。小麦粉をこねてちぎって鍋で煮る料理。「ひっつみ」というのは、「ちぎる」という意味です。ただし、ひっつみにモズクガニの出汁を使うというのは初めて知りましたけど。「せんべい汁」も含め、南部地方の郷土料理は、ほとんど紹介されています。「かっけ」以外は…(しつこい)。

津軽地方からは、大鰐温泉の「温泉もやし」。そして下北に飛んで、タラのじゃっぱ汁。それからベゴ餅。いわば金太郎飴の餅版といったお菓子。これは本当に、見た目もきれいなのです。再び津軽に戻って、多様な漬け物。もちろん、枝豆の漬け物も。出てこないだろうと思っていた「けの汁」もやっぱり登場します。妊娠している栗田さんがらみで、妊婦にも優しい料理という触れ込みです。

南部地方は、昔から馬の飼育がさかんで、牧場がたくさんあります。一戸、二戸、三戸…八戸、九戸の「戸」とは、牧場の柵を意味しているという説もあります。そこで、五戸の馬肉料理。独特の「義経鍋」が出てきました。馬肉は、私も小さい頃から鍋でよく食べていました。ここでは、義経鍋は、馬肉のうまさを堪能できるすぐれた料理方法だと紹介されます。すましといい、義経鍋といい、「関東以西の日本人が失った感覚」が青森にはあるのだと、究極のメニュー側は主張します。

下北から紹介される「けいらん」なんかも、私も初めて見たときはびっくりしました。すまし汁の中に、卵形のあんこ入りのだんごが入っているのですから。でも、その意外な取り合わせの相性の良さに、食べてみるとすぐ気が付きます。ここでもまた、「関東以西の人間が想像できない味」と持ち上げます。大間のマグロが当然のように登場したあと、最後にデザートとして、三戸のきんか餅が紹介されて終了。

対決は、「関東以西の日本人」と青森の食文化を比較した究極のメニューに軍配が上がります。しかも、最後の最後に、海原雄山が山岡士郎にこう言うのです。「青森に日本人の大本を見出したこと 見事だ」…。ナヌー?これは、海原雄山が山岡に対して放ったほとんど初めてのホメ言葉ではないか?! それを言わせるほど、青森の食文化はすぐれていたと勝手に解釈しておきましょう。

漫画上、勝ち負けをつけることになっていますが、もちろん、「敗者」となった至高のメニューの方の料理がダメだったというわけでは決してありません。

しかし、よくもこれだけの「青森食」を取り上げてくれたものです。感謝しなくてはなりませんね。


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1 コメント

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Unknown (高速タンギング)
2023-01-25 09:33:15
はじめまして
今美味しんぼ第100巻読んでいた所です
話の途中でウコンの粉を使った料理が出てきましたが
挿し絵ではうっちん粉と書いてありました
沖縄県の方言が青森県で登場しているのは驚きました
インターネットで検索しても沖縄県の方言としか書いてないから沖縄県と青森県
どちらが先にうっちんを使ったのか気になります
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