カクレマショウ

やっぴBLOG

『ファントム』その6

2005-06-10 | └『ファントム』
「エリックとクリスティーヌのフーガ 1881年」で『ファントム』はようやく『オペラ座の怪人』のストーリーにたどり着きます。原作を忠実に追いながらも、視点を変えて、エリックとクリスティーヌの主観がもりもり込められた描き方をしています(クリスティーヌの視点で描かれる部分は、彼女の日記という体裁を取っています)。そのため、原作よりずっと、エリックに、あるいはクリスティーヌに感情移入がしやすいのではないで . . . 本文を読む

『ファントム』その5

2005-06-09 | └『ファントム』
オペラ座とは、一般的には「オペラを上演する劇場」のことですが、固有名詞として使われる場合には、「パリのオペラ座」を指す場合が多いようです。「オペラ座の怪人」のオペラ座のように。 ただ、「パリのオペラ座」といっても、一つではないようで、1989年に完成した「新オペラ座」というのもあるようです。こちらはバスティーユにあるので、オペラ・バスティーユと呼ばれていますが、ハイテクを駆使した現代的な作りで、 . . . 本文を読む

『ファントム』その4

2005-06-08 | └『ファントム』
1856年の春、エリックはベルギーにたどり着きます。ペルシアである程度の富を手に入れたので、「人間嫌いを通していても十分暮らしていける」ようになっていた彼は、あちこちを放浪します。フランス国境にほど近い町に行くと、懐かしいフランス語が聞こえてきました。彼は、この町でしばらく暮らすことにし、ジュールという石工を雇い入れて建築家の仕事を始めます。 5年後、彼は突然、生まれ故郷のボッシュヴィルをたずね . . . 本文を読む

『ファントム』その3

2005-06-07 | └『ファントム』
今回は、上巻の最後から下巻にまたがって描かれる「ナーディル 1850-1853年」の章を取り上げます。 舞台はペルシアに飛びます。1850年、絶対的な権力を持つシャー(国王)は、警察長官ナーディルを宮廷に呼び出すと、彼にこんな命令を下しました。 「では、あれは本当なんだな? 神のように歌い、想像もできないような不思議なことをして見せる驚異の奇術師が存在するというのは。太后がさぞお喜びになられる . . . 本文を読む

『ファントム』その2

2005-06-04 | └『ファントム』
『ファントム』の目次は次のようになっています。 マドレーヌ 1831-1840年 エリック 1840-1843年 ジョヴァンニ 1844-1846年 ナーディル 1850-1853年 エリック 1856-1881年 エリックとクリスティーヌのフーガ 1881年 ラウール 1897年 節のタイトルとなっている人物が、それぞれの節の語り手、つまり「私」となるという趣向です。 前回、「マドレーヌ」 . . . 本文を読む

『ファントム』

2005-06-01 | └『ファントム』
スーザン・ケイの『ファントム』はおととい記したように、『オペラ座の怪人』の主人公エリックの生涯を描いた小説です。上下2巻の大作です。 上巻では、エリックの悲劇にいろどられた出生のシーンから始まります。1831年、フランスの片田舎ボッシュヴィルに住むマドレーヌは一人の男の子を産みます。彼の父親は、マスター・メイソンと呼ばれた将来を嘱望される建築家でしたが、落石事故にあって死んでしまいます。その時、 . . . 本文を読む