カクレマショウ

やっぴBLOG

『症例A』(多島斗志之)その3

2004-11-04 | └多島斗志夫 『症例A』
この物語は、精神病院が舞台ではありますが、もう一つの物語が「首都国立博物館」を舞台として展開していきます。二つの物語は、いつまでも気を持たせることなく、意外と早めに交錯していきます。 もう一つの物語とは、ある学芸員が、かつて同じ「都博」に務めていた父親宛の古い手紙を見つけたことから、「都博」の歴史に隠された秘密を追うというものです。 「都博」が「東京国立博物館」をモデルにしていることは明らかです . . . 本文を読む

『症例A』(多島斗志之)その2

2004-11-03 | └多島斗志夫 『症例A』
精神分析について、『症例A』からもう少し引用してみたいと思います。 榊医師は、臨床心理士の広瀬由起に連れられて、彼女の「師」である精神分析医の岐戸を訪ねる。そこで榊は思いもよらない光景を目にすることになるのですが、それは置いておくとして、岐戸は、「精神分析」について、こんなことを語ります。 「患者の言葉をそのまま真に受けたりせず、深層に隠れた真実をそこから汲み取るために分析家が解釈をほどこす、 . . . 本文を読む

『症例A』(多島斗志之)その1

2004-11-02 | └多島斗志夫 『症例A』
私にとって、上野駅構内にある明正堂書店の店員による推薦本にはまずハズレがないと言えます。貫井徳郎の『慟哭』などはその典型。 先日、金沢からの帰りに久々に立ち寄ることができたので、平積みされた1冊の文庫本を迷わず買いました。多島斗志之の『症例A』という作品です。たぶん、オススメ本でなければレジまで持って行くことのないと思われる内容。なにしろ、「あらすじ」を読むと、精神病院を舞台としたいかにも重そう . . . 本文を読む