多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか~と言う副題の『食糧テロリズム』(ヴァンダナ・シヴァ著,浦本昌紀監訳 竹内誠也・金井塚務訳)は衝撃的な書である。
『企業による食糧の支配と農業のグローバル化が、何百万人もの人々から生活と食糧を手に入れる権利をどのように奪いつつあるのか』という事を述べるに当たって、ヴァンダナ・シヴァはインドに焦点を絞る。
それは彼女がインド人であり、また『インドの農業が地球規模の企業から特に標的にされ』ているからだと,インドでは75%の人々が生活手段を農業から得ていて、世界の農民の実に4人に1人はインド人なのだ,それゆえ『インド農業に対するグローバル化の衝撃には地球規模の意義がある』のだと氏は言う。
森林を切り倒したり、自然林をマツやユーカリ等の単一種大面積栽培(モノカルチャー)の人工林に変えてパルプ工業の原料にしたりすることが、歳入や経済成長を生み出すと言う点はその通りであるが、しかし、この成長は森林から生物多様性と土壌や水を保持する能力とを奪い取る行為に基づいたものであり、森林に依存する人々の暮らしから、食物,飼料,燃料,繊維,医薬品,洪水や旱魃に対する安全保障の源泉を奪い取る行為に基づいている。
このパターンは林業だけでなく、農業とあらゆる食糧生産の場にも及んでいる。だが、多くの環境保護論者は、自然林を単一種大面積栽培の人工林に変えることは自然を痩せさせる行為だと言うことが理解出来ているのに、その洞察を工業化された農業についてまで推し進める人は多くない。
『工業化された農業はより多くの食糧を育て、飢えを減らすために必要だ』と言う企業神話がつくられ、殆どの環境保護論者や地域開発団体もそれを是認している。また多くの人々は、集約的,工業的な農業は資源を節約し、従って生物種を救うとも仮定している。
成長と言う幻想が、自然や貧しい人々からの収奪を隠蔽し、資源の欠乏を創り出しているにもかかわらず、それを成長と偽っているのだ,と。 続
私は食糧を燃料に換えることが第三世界の飢えをさらに増大させることになると思っています。食糧にならないものであっても、それを意図的に栽培することが、食糧を栽培すべき耕作面積を圧迫します。
新たに耕作地を開拓するために森林を焼き払うことによる二酸化炭素の排出量と吸収されなくなる量は、バイオ燃料によって軽減される量をはるかに凌ぐとも言います。
バイオ燃料の考え方は飢えを知らない社会の発想ではないでしょうか。