引き上げられたツボの中のタコはしばらくすると自分でツボの中から出てくるが、タコツボを海に返す場合はすぐに引き出さないと作業が滞るのでタコが自分で出てくるのを待ってはいられない。
ロープを自動巻き上げ機で巻き上げると次々とツボが上がってくる。この間,船はニュートラルの状態でこの自動巻き取り機に引っ張られながら前進している。1本のロープには800コのツボが取り付けられており、それが2本入っているのだそうだ。
ツボの間隔は約10m,次のツボが来るまでの時間は約20秒。その間に引き上げたツボの中のタコをすばやく追い出してツボを海に返さなければならない。ツボの中のタコを無理やり引き出そうとするとタコは吸盤でツボの内側にピタッと貼りついてしまい、一旦そうなったら大のおとなでも剥がせるものではないらしい。モタモタしているとツボが船の上にたまってしまい、ロープが絡んだりして船が進めなくなってしまう等のトラブルの元になる。
そこで予めママレモンの容器に塩水を入れたものを用意しておき、ツボの中のタコにピュッとかける。そうするとタコは目を保護するために慌てて出てくるのだそうだ。
こうして巻き上げ機のスピードに合わせて次々とツボを引き上げ、タコを取り出してはツボを海に返す作業が延々と続くのだが、最盛期には7割以上のツボにタコが入っていることがあり、そうなると息つく暇もない作業の連続となる。
そんな甲板上をタコが這いまわって溢れ返る沸きかえった様は一体どのようなものであろうかと、想像すると心が躍る。
9月8日(月)
午前7時。ここは平郡島東港から南西に40分余り走った沖合い。今日はタコツボ漁の最終日。
次々と巻き上げられるタコツボ。KOJIさんがタコツボを引き上げてTAKAHAUさんに手渡し、TAKAHARUさんが中のタコひきだしながらツボを船の片側にキチンと並べて行く。
2人の呼吸がぴったりあって淀みなく作業が進み、片方には引き上げられたツボが山をなし、片方にはロープがうず高くたまって行く。
かねてからタコツボ漁の実際を見て写真を撮らせて欲しいとお願いしていたところ、8日に最後のツボを回収する作業をするので一緒に行きませんかと言うお誘いを頂き、滞在を1日延ばして同行することになった。
タコツボ漁の漁期はまだ終わっていないが、すでに最盛期を過ぎ上がってくるタコもまばらで、あれほど大漁に沸いた頃に比べると今昔の感があるが、最後なので少しでも入っていればよしとしなければならないのかもしれない・・。
それでも少しでも沢山入っていて欲しいと思うのが本音だが、やはり上がってくるのは十数個に1杯程度で、漁期の終わりを思い知らされさびしさを禁じえない。
2人の胸中にはどんな思いがよぎっているのであろうか・・。