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Chicago VI

2007年10月27日 21時51分58秒 | ROCK-POP
 1972年というのはロック史上ではひとつの転機になった年だと思う。60年代後半のニュー・ロック的がより洗練され、ひとつのスタイルとしてほぼ確立した年だと思うからだ。シカゴにこれをあてはめると、72年に発表された「V」がそれに該当する作品ということになるが、前回も書いたとおり「V」はむしろそれまでの初期のシカゴ的な色彩を色濃く残していて、その後のソフトな路線の曲は「Saturday In The Park」くらいだったところからして、かの作品はやはり初期のシカゴをもっとも洗練された形でコンパクトにまとめた作品という気がする。一方、その次の年、つまり73年発表の「VI」はどうだろか。結論からいえば、この作品こそ本当にその後のAOR路線に舵をきった作品といえる。ここでのシカゴは、かつての攻撃的ともいえるダイナミックさや実験的なインスト指向のようなものは全く影を潜め、ほぼ全編に渡って、穏やかな起伏とメロディアスなセンス、そしてポップなコーラスを全面に出した音楽になっているのだ。

 それは1曲目の「お気に召すまま」によく現れている。従来なら当然アルバムのラストに配置されそうなアコピに導かれた甘いバラード系の作品なのだが、こういう曲を頭に持ってくるあたりシカゴの変化を感じさせずにはおかないし、4曲目「ジェニー」のちょっとレイドバックしたようなポップさ、6曲目「誰かが僕を」のジェントルなたたずまいなども、このアルバムのそうした面をよく表していると思う。「ダイアローグ」風なヴォーカルの掛け合いをフィーチャーした5曲目の「輝ける未来」、ついでに9曲目「自由への扉」などもシカゴらしさと同時ファンキーさ妙にポップだったりするし、7曲目「ハリウッド」のまさにAOR風な味がある。一方、それまでのイキのいいシカゴっぽい曲はほとんど見あたらず、数曲あるブルージーな曲などはどちらかといえばノスタルジックな雰囲気すら漂っているほどなのだ。つまり、前作までのひたすら前を向いて疾走してきたバンドがここで立ち止まって、ふと自分の音楽をあれこれ考え始めたといったところなのだろう。話を戻すと、1973年という年はロック全体がそういう時だったのである。

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