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CITY BOY / Dinner at the Ritz

2010年02月04日 23時31分17秒 | ROCK-POP
 1970年代中盤から後半にかけてブリティッシュ・ロックの世界では、そのスタイルの成熟にビートルズの伝統がプラスされて、ハードロックやプログレといった当時の流行のスタイルに色目を使いつつも、あくまでもポップ・スタイルをベースにした一癖(或いは二癖)あるバンドが沢山居た。その筆頭はやはり10ccということになるだろうが、その他にも地味ながらコックニー・レーベル、イエロー・ドッグ、セイラー、パイロット、サッド・カフェといったバンドがそれだった。広い意味で考えればロキシー・ミュージックや801、クイーン、ELO(中期以降)もその部類といえるだろう。
 このシティ・ボーイも当時活躍したそうしたバンドのひとつである。彼らは多少後発デビューということもあって、前述のブリティッシュ・ポップ・ロックの美点を全てを兼ね備え、しかもそれらの要素を満遍なく総合化したような音楽をやっていて、地味ながらブリティッシュ・ロックの爛熟期を体現化してようなバンドであった。

 本作は彼らの第2作に当たり、彼らの最高傑作といえる第3作「Young Men Gone West」や第4作「Book Early」に向けた重要なステップともいえる作品だ。シティ・ボーイの音楽は10cc風なポップで、時にボードヴィル調コーラス・ワーク、メロディアスなセンス、ハードロック的に切り立ったエッジのサウンドなどをバランス良く配置したところに特徴があったのだけれど、ややとっ散らかった感はあれ、それらの要素が全て出そろい、とにかもかくにも音楽に結実したのがこの作品という訳だ(第1作は全体に音楽が微温的なものに終始して、ここまで吹っ切れていない)。
 例えば、3曲「Narcissus」では都会的なエレピにハードロック的な重いリフが絡み、イコライジングされたボーカルでミステリアスに進みつつ、中間部ではクイーンもかくやという感じのオペラティックなコーラスを中心に展開、途中変拍子を絡めつつ、先の読めないローラー・コースター的な展開を「ポップに」やってしまっているし、「Goodbye Blue Monday」もテーマのリピートがほとんどなく、次々テーマを繰り出していく「糸の切れた凧」のような実験的なアレンジの曲をごくまっとうなポップとしてやってしまっているのが痛快だ。まさに爛熟期のブリティッシュ・ロックである。

 ちなみに本作のラストに収録された「State Secrets」は、3パートに分かれた組曲風な大作で、このバンドが10ccやクイーンはもちろん、イエスやジェントル・ジャイアントにも、なんならイーグルスにでもなれることを、さらりと披露してみせた実にハイブリッドな作品になっていて、けだしアルバム中の聴き物になっている。今や完全に忘れ去られてしまっているバンドであるが、この曲を聴くだけでもこのバンドのユニークさが分かろうというものである。私が本作を初めて聴いたのは高校二年の時だったと思うが、あれから30数年、先日ようやくCDを手に入れ、さきほど実に久しぶりに聴いた訳だけれど、このバンドの魅力がちっとも色あせていないことを再認識した次第である。
 余談だが、本作のタイトル・トラックには、ピーター・ハミルを筆頭に当時全盛期を迎えていたVDGGの面々が参加している。この一事をもってしても、このバンドの凄さが分かろうものである。

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