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ブラッド・スウェット&ティアーズ3

2009年10月02日 20時50分30秒 | ROCK-POP
 BS&Tの最高傑作といえば、その全活動歴を通じ、第2作「血と涙と汗」というのが衆目の一致するところだろう。第1作と同様、序曲と終曲を額縁に廃したトータル・アルバム的な構成、ジャズを中心に様々な音楽要素を取り込みつつも、実験や前衛ではなく、もはやAOR的といいたいような完成度でもって音楽を仕上げているところ(秀逸なアレンジというべきか)、「スピニング・ホイール」や「ユーヴ・メイド・ミー・ソー・ヴェリー・ハッピー」といった大ヒットナンバーを擁している点、デビッド・クレイトン・トーマスという類い希なロック・ボーカリストが生き生きと躍動して、ロック的なダイナミズムが横溢している点などなど、確かにアルバムは歴史的なロック・ヴィンテージ・アルバムとして非常に良質なアルバムだと思う。

 じゃぁ、BS&Tは「血と涙と汗」しかないのか。他のアルバムは全て大したことのない作品なのかといえば、そうでもないと思う。確かにここでしばらく取り上げてきたジェリー・フィッシャーをフィーチャーしたアルバム群は大傑作というほどのものではないと思うが、少なくとも第4作目まではどれも傑作たり得る作品だ。ことに「血と涙と汗」の余勢をかりて制作された本作は、前作にかなり肉薄する仕上がりだと思う。前述のとおりBS&Tは前作でバンド自体はほぼ完璧に完成され尽くしており、このアルバムでは取り入れる音楽の幅を更に拡張し、ダイナミックな振幅をより強調した方向で制作された思われる。つまり全体としては前作に比べ、より多彩でスケールの大きな作品に仕上がっているのだ。

 アルバムは、冒頭に収録されたゴスペル風な「ハイ・デ・ホー」、中世的な「ザ・バトル」「4万人の頭目」、シンガー・ソング・ライター風な「ファイアー・アンド・レイン」、「悲しきスージー」、「ヒー・イズ・ア・ランナー」といった一見BS&Tらしからぬ曲も味わい深いが(これらの楽曲は結果的に次作への伏線となる、今の視点で聴くとこちらの楽曲群の方がむしろ良かったりする)、ロックとジャズの狹をダイナミックに行き交う「マック・イヴィル」、「マック・イヴィビル変奏曲」のメドレーは前作以上にBS&Tらしさを感じさせるし、「サムシン・カミン・オン」は、前作の「微笑みの研究」でみせたジャズとロックのハイブリッド感覚をさらに拡張したような仕上がりで、途中フリー・ジャズ的なインプロを経て、オルガン・ソロからテーマに収束していくプロセスは筆舌に尽くしがたいスリリングさがある。まさに秀逸という他はない。

 ついでに書けば、「悪魔によせる交響楽/悪魔を憐れむ歌」は、このアルバムの本当の目玉かもしれない。元はストーンズの有名曲だが、初期のプロコやバルトークを思わせるバーバリックなダイナミズムにラテン・ジャズ的な要素を苦もなく合体させ、全体を異様なスケール感で仕立てた異色作だ。この曲に盛り込まれた音楽的な情報量の豊富さ、アレンジの見事さは尋常ではなく(英国のバンドであればこれだけの素材があれば20分はかけて演奏することだろう)、このバンドの音楽的な懐の広さを見せつけた曲といえる。

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