デビッド・クレイトン・トーマスが5年振りに復活した75年の作品(通算第8作)。ご存じのとおりクレイトン・トーマスは第2作から第4作目までBSTのアルバムで、バンドの看板ヴォーカリストとして圧倒的存在感を発揮したし、作曲なども担当していたから、「BSTってのはオレなんだよ」とか思い上がってしまったのかもしれない。BSTを脱退するとソロ・アーティストとして、順風満帆、大成の道を歩むのだろうとばかり思っていたら、私はほとんど聴いたことがないのだが(クラウス・オガーマンがアレンジした曲などもあるようだ)、何作か出たソロ・アルバムはどうも本体BST以上に苦戦したらしく、1975年にめでたくクレイトン・トーマスはBSTに復帰した。やっと調子を掴んできたところでバンドから追い出されたジェリー・フッシャーは悲惨だが....。
アルバムは1曲目「Ride Captain Ride」は、ジャズ・ロックでも、前作のようなソウル路線でもなく、ちょっとBSTというにはいささかレイドバックして、ちょっとアーシーなアメリカン・ロック風の音で始まるのだが、クレイトン・トーマスのヴォーカルが入ると、それだけでBSTという気がしてしまう存在感はやはり凄い。途中でフュージョン風なエレピ・ソロがさりげなく繰り出されるあたりはニヤリとさせる部分だ。2曲目の「Life」は多少前作の雰囲気を残したファンキーな作品だが、これまたクレイトン・トーマスが歌っていることでえもいわれぬ重厚感を感じさせていい。また、7曲目の「Applause」は脱退直前4作目のジェントルで知的なBSTが戻っているようなところもある。9曲目の「Got to Get You into My Life」はもちろんビートルズの作品で、この曲は奇しくもビートルズがブラス・ロックに先鞭をつけた作品として知られているが、さすがにBSTはオリジナル通りにブラスをなぞることに抵抗あったのか、いくらかひねったアレンジに仕立て上げなおしている。
という訳で、このクレイトン・トーマスの復活作、アレンジはまずまず練られているし(全盛期に匹敵するようなものではないが)、適度なポップさも悪くない。途中お遊びみたいな曲が2,3あって、これがアルバム全体の緊張感を弱めているところと、どうもコレ一曲という決定打がないのが残念だが、全体としてみればなかなかの出来である。初期の4作以降の作品としては、前作の「Mirror Image」と並んで佳作の部類だと思う。おそらくメンバーも起死回生の一発が見事不発に終わった前作から、クレイトン・トーマスを呼び戻し、今度こそ逆転サヨナラ満塁ホームランを狙ったことは想像に難くないが、残念ながらこれも不発に終わってしまった。1970年代初頭からBSTは迷走を続けたが、クレイトン・トーマスが戻った時、時代はそろそろニューロックの終わりを迎えはじめていたのだった。
アルバムは1曲目「Ride Captain Ride」は、ジャズ・ロックでも、前作のようなソウル路線でもなく、ちょっとBSTというにはいささかレイドバックして、ちょっとアーシーなアメリカン・ロック風の音で始まるのだが、クレイトン・トーマスのヴォーカルが入ると、それだけでBSTという気がしてしまう存在感はやはり凄い。途中でフュージョン風なエレピ・ソロがさりげなく繰り出されるあたりはニヤリとさせる部分だ。2曲目の「Life」は多少前作の雰囲気を残したファンキーな作品だが、これまたクレイトン・トーマスが歌っていることでえもいわれぬ重厚感を感じさせていい。また、7曲目の「Applause」は脱退直前4作目のジェントルで知的なBSTが戻っているようなところもある。9曲目の「Got to Get You into My Life」はもちろんビートルズの作品で、この曲は奇しくもビートルズがブラス・ロックに先鞭をつけた作品として知られているが、さすがにBSTはオリジナル通りにブラスをなぞることに抵抗あったのか、いくらかひねったアレンジに仕立て上げなおしている。
という訳で、このクレイトン・トーマスの復活作、アレンジはまずまず練られているし(全盛期に匹敵するようなものではないが)、適度なポップさも悪くない。途中お遊びみたいな曲が2,3あって、これがアルバム全体の緊張感を弱めているところと、どうもコレ一曲という決定打がないのが残念だが、全体としてみればなかなかの出来である。初期の4作以降の作品としては、前作の「Mirror Image」と並んで佳作の部類だと思う。おそらくメンバーも起死回生の一発が見事不発に終わった前作から、クレイトン・トーマスを呼び戻し、今度こそ逆転サヨナラ満塁ホームランを狙ったことは想像に難くないが、残念ながらこれも不発に終わってしまった。1970年代初頭からBSTは迷走を続けたが、クレイトン・トーマスが戻った時、時代はそろそろニューロックの終わりを迎えはじめていたのだった。
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