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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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許茹芸(ヴァレン・スー) /我愛夜

2007年12月19日 22時51分15秒 | 台湾のあれこれ
 こちらは確か中国本土で出た蘇慧倫のベスト盤を購入した時に注文したもので、2004年の作品となる(中国盤)。私は彼女のアルバムというと1999年の「眞愛無敵」しか聴いていないが、あのアルバムが正統派の台湾バラード的音楽でもって全編を染め抜いた作品だったとすると、5年後に出したこのアルバムは-特に前半は-かなり毛色が違ったけっこうモダンな音楽になっている。ちょっと前に「眞愛無敵」をレビュウした時に、「現在も人気シンガーとして活躍中の彼女は、今いったいどんな音楽をやっているのだろうか」と書いたけれど、案の定、2000年前後の台湾ニュー・ウェイブ以降、彼女もけっこうアップ・トゥ・デートな方向で変わっていた訳だ。

 とはいっても、許茹芸は他のみんなのように流行りのギター・ロック系の音をとりいれた音楽をやっている訳ではなく、どちらかというアンビエント・テクノ風というか、エレクトリック・ミュージック的なアレンジを採用しているのがユニークだ。そのあたりは1曲目のタイトル・トラックで明らかだけれど、アンビエント風でちょいとアブストラクトなシーケンス・パターンを配し、リズムは当然打ち込み系、ただし、全体の雰囲気は妙にトロピカルでサロン風な上品さがある上にチャイナっぽい旋律が見え隠れするという、非常にユニークな仕上がりとなっているのだ。許茹芸のヴォーカルはちょいとこまっしゃくれた舌足らずなところが、妙にファンタジックな個性を感じさせると思うのだが、おそらくそのキャラクターを考え抜いた上のアレンジなのだろう。まさに彼女のぴったりのサウンドとなっている、非常にチャーミングだ。2,3,7,10曲目あたりもそういった方向でのアレンジになっている。

 一方、従来のバラード路線としては4曲目の「只说给你听」9曲目「信号」あたりが典型的な王道路線でちょっとほっとする。また、5曲目「众里寻他」はちょっとシャンソン風にアンニュイな表情をみせるメランコリックな旋律が印象的だ(日本人が好みそうな陰影ある旋律でもある)。8曲目の「遇见另外一个人」はアコギをバックに歌った既視感を誘うようなバラードでこれもなかなかの出来である。アルバム・ラストのデュエット曲はさしずめ先のモダン・サウンドと台湾王道路線のドッキングで、フォークロア風な雰囲気、ハウス風なチャカポコリズム、チャイナ風な旋律、アンビエントっぽい浮遊感、大仰なオーケストラといった要素が入り乱れる作品だが、それが不思議と奇妙な調和を見せ、最後に相応しいドラマチックな作品になっているのもおもしろい。
コメント
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