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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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呉楚楚、潘越雲、李麗芬/3人展

2007年12月11日 23時45分30秒 | 台湾のあれこれ
 今回の訪台で購入してきたものの1枚。今では台湾のメジャー・レーベルとなった滾石唱片の第1作であり、おそらく潘越雲のデビュー作となる作品の復刻ということになるらしい。潘越雲が滾石に残した作品は、最近リマスターされ順次復刻されているようだけれど、この作品は潘越雲の単独作品ではないので、ひょっとするとそれとは別の流れで復刻されたのかはよくわからない。ともあれ、この作品では、呉楚楚、潘越雲、そして李麗芬という3人のシンガーがそれぞれ曲を歌い分けている。これが当時潘越雲が所属していたレギュラー・グループだったか、それとも一種のコンピレーションだったのかはよくわからないが、ジャケ写真を見るとステージで3人揃っているところなどもあり、多分後者だったのだろう(それにしてはジャケにグループ名が一切ないのはちと不思議だが)。

 収録された音楽は、まるで時代の彼方から聴こえてるような牧歌的でアコスティックなフォーク・ミュージックである。クレジットでは81年とあるが、日本なら71年といっても通用しそうな私小説的、四畳半的なムードが濃厚で、聴いていてなにやら既視感を誘うような音楽になっている。前述のとおりリード・ヴォーカルは曲毎に呉楚楚、潘越雲、そして李麗芬が歌い分けているが、潘越雲以外は当然のことながら初めて聴く人である。男性シンガーの呉楚楚はちょっと甲高く細身のあるヴォーカルが独特のひなびた風情を感じさせ、李麗芬は澄んだ伸びやかな声質が印象的という具合に、両者の歌はそれなりに個性も趣もあるのだが、やはり潘越雲の歌と比べてしまうといささか弱い。その後の彼女を知っているからかもしれないが、彼女のヴォーカルが登場するだけで、既にこの時代から独特の存在感と風格があたりに漂いはじめてしまうからさすがだ。

 サウンドはほぼアコスティック・フォークをベースにしているものの、うっすらドラムやベースも入るし、ストリングスやフルートなどが絡む曲もあるが、このスカスカな感じはやはり70年代フォークとしかいいようがない。その後、台湾ポップスの王道路線となるメロディックなAOR風なところは、この時点では全くない。潘越雲が名作「情字這條路」を発表するのは88年だから、この作品はそれからたかだか7年前の作品でしかないのだが、ぱっと聴くとまる20年くらいの距離を感じさせる。ひょっとすると80年代の台湾ポップスというのは、むしろここで聴けるようなフォーク風な作品が主流で、そこに「情字這條路」みたいな作品が出てきたから斬新だったということなのかもしれないが。
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