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中川右介/松田聖子と中森明菜

2007年12月01日 20時42分27秒 | Books
 しばらく前にレビュウした「カラヤンとフルトヴェングラー」は、戦前戦後を通じて対立する両雄としてクラシック界をを飾ったカラヤンとフルトヴェングラーの対立ぶりを、各人の行動や発言を歴史的に追いかけながら検証しつつ、その時代の様相を浮かび上がらせることに成功した好著だったが、その著者中川右介が同じ幻冬舎新書からだした第2弾がこれである。時代を象徴する2大アーティストの対立を軸に話しを進めていくのは、「カラヤンとフルトヴェングラー」と同様だが、今回の素材はなんと「カラヤンとフルトヴェングラー」から半世紀後、しかも日本が舞台となった「松田聖子と中森明菜」の物語である。中川右介といえばクラシック系のライターという印象をもっていたが、こういうジャンル横断的ところなところは、いかにも「団塊の世代」以降のライターが持つ独特の柔軟さというか節操のなさがあって楽しい(自分にもそういうところが多々あるし-笑)。

 話は松田聖子の前段階として山口百恵から始まる。松田聖子は山口百恵のアンチテーゼとしてスタートしたのだがら、どうしてもそこは触れておかなければならなかったのだろう。そして松田聖子が歌謡界において、どのように這い上がりながらなんとか成功を手にするプロセスが語られ、やがて松本隆とのコラポレーションでアイドル歌謡としてひとつの高みに達し、そのあたりから彼女の対抗馬として中森明菜が登場するといった順序で語られている。残念ながら、実体として松田聖子と中森明菜はほとんど対立していなったようなので、そのあたりの相克を期待して読むと拍子抜けするし、私は松田聖子はともかく中森明菜の音楽はほとんど聴いたことがないので、そのあたりはさらっと読み飛ばしてしまったのだが(笑)、やはりのこの本の白眉は松田聖子と松本隆のコラボレーションがいかにユニークで、ある種革命的だったことを、詩を中心に詳細に分析されているところだろう。歴史的には生乾きのテーマなので、全体としてはルポルタージュ的なところもあるが、十分におもしろい本であった。この著者の次の本が待ち遠しい。
コメント (2)
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