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ULTRAVOX / Vienna

2007年12月05日 23時14分57秒 | ROCK-POP
 ウルトラヴォックスというと好きなアルバムはなんといっても、ジョン・フォックス時代の「システム・オブ・ロマンス」だ。1970年代末期、それまでのそれまでのビートルズ~ニュー・ロックに至る従来のロックをオールド・ウェイブとして一蹴したパンクやニューウェイブ系の音楽は、確かに斬新で小気味よいものがあったけれど、あまりにもガサツで性急、刹那的なニヒリズムに辟易するものがあったのも事実だった。そこに登場したのが「システム・オブ・ロマンス」だったのだ。ジョン・フォックスのもつ格調高いロマンティシズムとテクノ&ニューウェイブ系のサウンドを一気に限界まで推し進めたような構築的な音作りなど、あまたのニュー・ウェイブ系の音楽の中では群を抜いて芸術性があったと思う。私はこのアルバムを聴いた時、すでに20歳近くなっていて、ある意味「ロックすれっからし」状態にあったため、それほどショッキングな音楽だった訳でもないが、10代半ばあたりで聴いていたら、さぞや巨大な存在感を感じであろうことは想像に難くなかった。

 だが、この「システム・オブ・ロマンス」を傑作たらしめた張本人であるボーカルのジョン・フォックスがこのアルバムのリリースした後に脱退してしまう。ほとんど解散状態となったバンドはミッジ・ユーロという後任をいれてバンドを存続させることとなり、その新生ウルトラヴォックスの第1弾となったのがこの作品という訳だ。バンドのリーダーが替わってしまったから、「システム・オブ・ロマンス」とこの「ヴィエナ」の音楽は当然異なるが、この時点では前作の音楽を継承することも当然ポリシーとしてもっていたようで、冷え冷えとしたシンセの響きやテクノ風なリズム、ヨーロッパ的なロマンティシズムなど、いささか通俗化してはいるものの、けっこう継承している。しかも、世の中分からないのは、この通俗化というのが幸いしたのだろう、この作品は前作に比べセールス的に大躍進して、ウルトラヴォックスは時にニューロマ・ブームの先駆けとして人気グループのひとつになるのだからおもしろい。

 そんな訳で、後期ウルトラヴォックスというと、この後の作品となると個人的にはちとつらいというのが正直なところだが、このアルバムに関してはなんとか楽しく聴ける。「アストラダイン」のシンセの冴えた響きと流れるような展開、聴いているとなんだかヒッチコックの英国時代(戦前)のスリラー映画をみているような気になる「パッシング・ストレンジャーズ」、「システム・オブ・ロマンス」の展開された世界のまさに通俗化といっては身も蓋もないが、その構成があまりに見事な「ミスターX~ウェスターン・プロミス~ヴィエナ」の展開などはなかなかのものだ。ちなみにウルトラヴォックスはこの後、ミッジ・ユーロを全面にだし、私があんまり好きでない「ニュー・ヨーロピアンズ」「スリープウォーク」「オール・ストゥッド・スティル」といった、売れ筋のテクノポップを邁進することになり、YMOなどにも音楽的影響を与えることになる。
コメント
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